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第五十五話  エルハムと信者

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 アルマ公国の公女だったエルハムは南方に位置するバジール王国のアルモエズ王の十八番目の妃となって、モラヴィア侯国をバジールの植民地とするべく秘密裏に働くことになったのだ。


 妖艶なエルハムには彼女の信者と言っても過言ではない貴族たちが何人も居る。その多くの貴族たちが麻薬の中毒症状を起こしているような状態だった為、何かを頼めば何でも言うことを聞いてくれるような状態だったのだ。


 宰相ウラジミール・シュバンクマイエルを討ち倒すために領地から兵士を動かしていた男が、密かに王都に戻って来た際にエルハムに向かって言い出したのだ。


「エルハム様が望む通り、ドラホスラフ殿下の婚約者であるカロリーネ・エンゲルベルトとダーナ・シュバンクマイエルの身柄を拘束いたしました」


「まあ!まあ!まあ!」


 エルハムは孔雀の羽で作られた扇子を広げながら嬉しそうに笑い出す。


「侯都から消えたと思ったけれど、あの小娘、何処に居たのかしら?」

「シュバンクマイエルが治める領地のすぐ近くにある避暑地に隠れ住んでいたようです」

「良く捕まえられたわね?」

「それは以前から見張りをつけておりましたから」


 エルハムは自分を破滅に追いやったクラルヴァイン人が大嫌いだった。特にドラホスラフ王子の婚約者であるカロリーネ・エンゲルベルトは、カサンドラの右腕とも言われる令嬢でもあり、学園に留学している時から殺したいと思うほど目障りな女だった。


「それで、何故ダーナ嬢と一緒に居たのかしら?」

「宰相は謀反を企みましたが、それに呼応する形でドラホスラフ王子が北部を纏めて挙兵をしたという情報もあるので、殿下の幼馴染でもあるダーナ嬢がカロリーネ嬢の面倒をみることになったのではないかと推察致します」


「それで?その二人は何処にいるの?」

「それは・・」


 男は上目使いとなって言い出した。

「ご褒美がなくては言えません」

 男は荒い息を吐き出し、欲望の眼差しで美しいエルハムを見上げる。

「ですから・・エルハム様、どうか私にお慈悲を・・お慈悲を・・」

「そう、貴方にはご褒美をまだ渡していなかったわよね」

 オピの実の麻薬成分を溶かした水をエルハムは口に含むと、口移しで飲み込ませながら笑みを浮かべる。


 イヤルハヴォ商会のアクラムが言う通り、火龍砲の売買契約をするためにクラルヴァインの王太子夫妻がモラヴィア侯国へ入国をしていたらしい。侯王の姉であるカテリーナ・バーロヴァの邸宅に滞在していたようなのだが、その後、王太子夫妻はバーロヴァ邸から移動。


 隣国クラルヴァインとしては、内戦に突入するモラヴィアに対して静観をするつもりはないらしく、王太子夫妻は未だに本国へ帰国はしていないらしい。何処に移動したのかエルハムは自分の信者を使って探し回らせて居たのだが、運よくカロリーネとダーナを見つけることが出来たのだ。


 南大陸の人間たちはモラヴィアを植民地にするために多くの貴族を麻薬漬けとしてきたのだが、最近、このオピの麻薬の流通が停止しているような状態なのだ。南大陸から海路を利用して運ばれてくるはずのオピが到着しないことと重なって、モラヴィア侯国内に貯蔵していた倉庫の一部が火をつけられて燃やされてしまったのだ。


「あああ!!これだ!!あああ!神はここに居た!」

 恍惚となった男は涎を垂らしながら興奮しているが、品薄のオピを今ここで大量に投じるわけにはいかない。


「もっと欲しいでしょう?ねえ?もっと欲しいでしょう?」

「ええ!欲しい!もっと欲しい!もっと欲しいんだ!」


 エルハムは再度、口移しで麻薬入りの水を飲み込ませると、男の耳元に囁いた。


「だったら早く私を案内しなさい!宰相の娘はアクラムに渡すつもりだけれど、捕まえたカロリーネを裸にひき剥いて、男たちの慰み者としてから遺体を切り裂いてやるの!それにカロリーネを使えば、あの小生意気な王太子妃も誘き出すことが出来るでしょう!そうして、二人の遺体を柱に吊るして行進の先頭に掲げてやるの!」


 エルハムは高笑いをしながら男の腹を蹴り飛ばして尻餅をつかせる。そうして、男の胸ぐら掴んで引き寄せながら舌なめずりをして言い出した。


「お前にも、殿下の恋人と隣国の王太子妃の味見をさせてあげる。色々な男に味見をさせてやったら、あいつはどんな顔をするんだろう?」


 アルマ公国の公女だったエルハムを不幸のどん底に叩き落としたのは間違いなくアルノルト王子だ。クールに装いながら彼は心の底から妃となったカサンドラを愛している。その愛する女が大勢の男に蹂躙された事実を知れば、一体どんな表情を浮かべることになるだろうか?


 本来ならハーレムの大きな権力を持った妃として皆から大事にされるはずだったエルハムが、汚泥を啜り、数多の男たちに体を開かなければならなくなったのは、アルノルト王子がエルハムを選ばなかったからだ。


アルノルト王子によって港湾都市を落とされ、驚き慌てた兄たちが王子を怒らせた元凶となるエルハムを生贄としてバジール王国に差し出した。そのバジール王国で地獄を味わったエルハムは継承者争いに終止符を打つために、モラヴィアへと出向くことになったのだが・・


「アハッハハハハ!やはり私は神に愛された女なのよ!私の思い通りにならないことなんてないのよ!」

「ああ!エルハム様!もっと!もっと!」


 恍惚となった男をグリグリと踏みつけたエルハムは、即座に頭を切り替えると、転がる男をそのまま放置して移動をするための準備を始めた。アルノルト王子を相手にするのなら、早く動けば早く動くほど良いということをエルハムは熟知していたからだ。

 



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6/10(月)にコミカライズ『悪役令嬢はやる気がない』が発売!

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悪役令嬢は王太子妃になってもやる気がないも宣伝の意味も兼ねてスタートします!"
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