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第二十六話  宰相の娘ダーナ ①

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 神経質そうな顔立ちをした細身の中年男がモラヴィア侯国の宰相ウラジミール・シュバンクマイエルとなるのだが、棒のような体で一般的な男性よりも頭二つ分は背が高いので、非常に目立つ男である。


 ウラジミールには二人の息子と娘が一人おり、その一人娘は最近、体調を崩しがちな父を慮って王宮まで手伝いに来ているのだが・・

「あ〜ら!どこのワイン樽が歩いているのかと思ったら、ダーナ様ではございませんか!」

 宰相の娘ダーナが振り返ると、五人の取り巻き令嬢を引き連れたマグダレーナ・オルシャンスカ嬢がダーナを嘲笑うようにして立っていた。


 モラヴィアの第三王子が留学から帰国後、パヴェル第二王子が亡くなった。不幸な落馬事故ということになってはいるが、その死因は不明な点が非常に多い。現在も調査が続けられているものの、うやむやになりそうな雰囲気が辺りを漂い始めている。そんな頃合いに、第三王子の婚約者を変更した方が良いのではないかという話が議題に上がるようになったのだ。


 影が薄い三番目の王子であるのなら、クラルヴァイン王国の侯爵令嬢が婚約者でも問題がなかったのだが、亡くなったパヴェル王子の代わりに第一王子を王族として支えていくというのなら、隣国の侯爵令嬢では力不足にも程がある。


 第二王子の婚約者だったマグダレーナ・オルシャンスカと、第三王子の幼馴染でもある宰相の娘ダーナが候補として名が上がることとなったのだが、新聞などでは第三王子の婚約者はマグダレーナこそ相応しいと囃し立てている。しかし、貴族全体から見れば、第三王子の婚約者については意見が二分されているような状況なのだ。


 マグダレーナは春に咲くマーシュマリーゴールドの花のように鮮やかな髪色と孔雀石のような瞳が特徴的な、春の可憐な花の姿を思い浮かべるような容姿の令嬢なのだが、ダーナは藁色の髪に茶色と緑色を混ぜたようなヘーゼルの瞳を持つ令嬢で、さくらんぼのような唇の下にある小さな顎は二重顎。とにもかくにもふとましいという表現がそのままずばり、的を得ているような令嬢なのだ。


「まあ〜!マグダレーナ様ではございませんか!」

 ダーナは笑うと目が線のようになるのだが、とにかく憎めないと言われるその笑顔を福々とした顔に浮かべると、

「ドラホスラフ殿下が海賊退治に行かれたとお聞きしていたので、マグダレーナ様も船に乗って海賊の根城に向かったものと思っておりましたわ〜」

 と、はしゃいだように言い出した。


「何の特色もないオルシャンスカ伯爵家の令嬢が第二王子であるパヴェル様の婚約者に決まったのは、妾腹の王子に相応しい、権力を持たない令嬢だからだと言われていましたけれど、最近、オルシャンスカ伯爵家は大儲け、その儲けたお金で派閥を大きくしていらっしゃるでしょう?」


 ダーナはふくよかな顔に、ふてぶてしいまでの笑顔を浮かべて言い出した。


「なんで大儲けをしているかは存じませんけど、麻薬を南大陸から持ち込んでいるのが海賊の役割というものなのでしょう?海賊の根城を叩かれたら困るとお焦りになって、慌てて船に飛び乗っている頃だと思っていたのですけど、怠惰なマグダレーナ様がそこまで積極的に動かれるわけもございませんでしたわよね!」


 そう言ってオホホホホッとダーナが笑うと、取り巻きの一人が、

「訳が分からないことを言っているんじゃないわよ!このデブ女!」

 と、言い出した。


 百年ほど前から男は男らしい服装、女は女らしい服装を着ることが当たり前となり、女性らしさとは腰の細さと胸の膨らみ、ヒップラインの豊かさだとされている。


 マグダレーナが引き連れた令嬢たちも一様に折れるのではないかと思うほど腰を引き絞り、胸とヒップが下品にならない程度に大きく見えるよう工夫されたデイドレスを身に纏う。


 ダーナは上質の生地を使用した、コルセットを使用していなくても貴族令嬢らしく上品に見えるドレスを身に纏っている。ただ、とにかく太っているのでデブ女と言われるのは仕方がないことかもしれない。


「デブね」

 ダーナはウフフと笑うと、

「麻薬中毒になってまで痩せたくないもの、麻薬を使って痩せるくらいだったら太っていたほうが私は良いの」

扇を広げて口元を隠しながら言い出した。


「これを食べれば気分が良くなるから、これを食べればあっという間に痩せるから。確かに気分がよくなるでしょうし、何も食べなくてもお腹が空かなくなるでしょう。だけど薬物は一度始めたらやめられないでしょうし、お肌があっという間にくすんでいくことになるから嫌いなのよ」


「「「私たちは麻薬なんてやっていないわよ!」」」

「まあ!まさかの無自覚!」

 ダーナはオホホホッと笑いながら言い出した。

「不眠、過眠など、眠るときに支障はありませんか?何かのことでとても不安に思っていたり、焦燥感でどうにかなりそうになってはいませんか?手足の痙攣や、幻聴、幻覚などの症状が出たら末期ですから、王宮に来るのはもうやめた方が良いでしょう。不祥事を起こせば一族郎党を巻き込むこととなりますからね」


「バカじゃない?」

「変なことを言っていないでよ!」

「私が麻薬中毒なわけないでしょう!」

「いいえ、あなた方は中毒患者ですわよ。足抜けするなら早くしないと、生涯結婚も出来ずに廃人まっしぐらですわよ?」


 オホホホホホッと笑ったダーナは太っているし、ふてぶてしいし、誰もが好ましく思うような笑顔を浮かべる女だが、顔色が悪い痩せた女を見ると、

「まあ!中毒患者さん?お可哀想に!」

 と、決めつけて発言をする危ない女だった。


 ダーナは立て板に水を流すが如くペラペラと喋り続けるため、真っ赤な顔をとなったマグダレーナはなかなか否定する言葉が発せない。


取り巻きたちは果敢にも不服の声をあげているのだが、全く意に介さないダーナが、憐れみを含んだ眼差しを向けてくるため、

「私たちは麻薬なんてやっておりませんわ!勝手なことを言わないで!」

 マグダレーナは官吏がこちらの方へ向かってくることに気が付いた為、あえて憐れを誘うようにして悲痛な声をあげる。


「それに!我が家が麻薬で儲けたなどと侮辱をするにも程がありますわ!そのような悪事を働く家を王家が認めるわけがないではありませんか!」

「今の王家、本当にポンコツだから仕方なくない?」

 両手を広げて肩をすくめて言い出したダーナは、誰もが憎めないと言い出す朗らかにも見える笑みを浮かべながら、

「麻薬ビジネスを無視って法律を無視するようなものなのに、見たくないものは見えないことにしちゃっているのよね」

 と、言い出したため、

「不敬ですわよ!不敬!」

 思わずマグダレーナは大声を上げたのだった。



またまたやってしまいました〜!24話25話 カロリーネ・カテリーナ、名前が似過ぎているが故に間違えているところ多数!!早くこのターンが終わって欲しい!!誤字脱字報告ありがとうございます!!m(_ _)m


6/10(月)カドコミ様よりコミカライズ『悪役令嬢はやる気がない』が発売されます!!書き下ろし小説(鳳陽編)も入っておりますので、ご興味ある方はお手に取って頂けたら幸いです!!鳳陽ってどんな国?なんてことが分かる作品となっております!よろしくお願いします!!

宣伝の意味も含めて『モラヴィア侯国編」の連載を開始いております!最後までお付き合い頂ければ嬉しいです!

モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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6/10(月)にコミカライズ『悪役令嬢はやる気がない』が発売!

書き落とし短編〈鳳陽編〉も入っています!

作中に出てくる鳳陽ってどんな国?皇帝ってどんな人?など興味がございましたら、ご購入頂ければ幸いです!!よろしくお願いお願い致しますm(_ _)m
悪役令嬢は王太子妃になってもやる気がないも宣伝の意味も兼ねてスタートします!"
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