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第四話  他人事ではない

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「社交を牽引・・」

 それってどういうこと?と、コンスタンツェの頭の中身が宇宙を彷徨っている頃、カサンドラはにこりと笑って一通の手紙をカロリーナの前に差し出した。


「ハイデマリーさんにうちの暗部が接触したら、手紙を託されることになったのよ」


 学園のヒロイン(と、本人は思い込んでいた)ピンクブロンドの髪を持つハイデマリー嬢は、カサンドラの暗殺阻止に協力しているものの、アルマ公国のエルマ公女に協力したという罪で国外追放処分となり、現在、家族と共に隣国モラヴィア侯国に住まいを移しているのだった。


 平民となったハイデマリーはモラヴィアの侯都リトミシュルでお針子として働いているのだが、

「貴族相手に仕事をするオートクチュールで働いているだけあって、色々と噂を聞きつけるみたいなのだけれど、何でも亡くなったパヴェル殿下の婚約者だったマグダレーナ嬢が、留学から帰って来たドラホスラフ様との距離を縮めているそうよ?」

 今後の小説の参考にしてくれたなら、といった理由で様々な噂話を網羅した手紙を開きながら、カサンドラは言い出した。


「王家に匹敵するとも言われるほどの財力を持つオルシャンスカ家のご令嬢は、自分の結婚相手は絶対に王子様だと豪語しているみたいなの。モラヴィアの王太子となるブジェチスラフ殿下はすでに結婚をしているから、未婚の王子となるとドラホスラフ殿下しかいないでしょう?」


 カロリーナの形の良い眉がぴくりと動く。

「クラルヴァイン王国では落ち目となる侯爵家の娘、そんな娘よりも自分が花嫁となった方がドラホスラフ様もきっとお喜びになるでしょうと豪語しているみたいなの」


 カロリーナの形の良い眉がヒクヒクと痙攣するように動き出す。


「実際に、モラヴィア侯国では他国の花嫁を招き入れるよりも、国内貴族の令嬢を花嫁にした方が良いだろうという声が大きくなっているみたい」


 カサンドラの朱色に塗られた唇が弧を描く。


「人が良いだけで頼りない性格の王太子を支えていたのがお亡くなりになったパヴェル殿下だったのだけれど、本当に落馬だなんて・・信じられないわ。そんな葬儀もまだ終えたばかりの状態だというのにオルシャンスカ家の当主は、どうしても婚約者を失った娘とドラホスラフ様を結婚させたいみたい。そうしたら、頼りない王太子であるブジェチスラフ様を排除して、ドラホスラフ様を国王に仕立て上げる。そうしたら苦も無くオルシャンスカ家が王国を牛耳ることが出来るようになるでしょう?」


 カロリーナはマグダレーナ・オルシャンスカが、ドラホスラフ王子との結婚を望んでいるという話は聞いていた。だけど、

『自分が結婚するのはカロリーナ以外にはいない!』

 と記されたドラホスラフからの手紙を胸に抱きしめて、絶対に大丈夫だと思い込もうとしていた。


「カサンドラ様、私にそんなことを言われても・・」

 聡明なカロリーナは、どれだけ思い合っていたとしても、この結婚は無理じゃないかと思い始めているところだったのだ。


 第三王子であれば何の問題もなかったというのに、第二王子が亡くなった今の状況では、隣国の侯爵令嬢でしかないカロリーナは明かに力不足だった。


「だったら・・どうすれば良いのですか?」


 本当は半分以上諦めていた。カサンドラに言われるまでもなく、恐らくドラホスラフの妃としてマグダレーナ嬢が選ばれることになるだろう。何しろオルシャンスカ家は王家に匹敵するほどの財力の持ち主なのだ。


 頬を滑り落ちる涙をカロリーナが指先で拭っていると、ハンカチを差し出したカサンドラが胸を張って言い出した。


「カロリーナ様、貴女様は私をなんだと思っているのですか?」

「えーっと・・」


 カロリーナにとっての親友と答えるべきだろうか。王太子妃相手に不遜が過ぎるかもしれないけれど、カサンドラは幼い時から共に過ごした、かけがえの無い友達だと言えるだろう。


「私はね、悪役王太子妃ですのよ」

「はい?」

「悪役はね、頭がクルクルと良く回るものですの」


 カサンドラは自分の頭を指先でつつきながら言い出した。


「絶対にカロリーナ様とドラホスラフ様が結婚できるように致しましょう。その為にはカロリーナ様にも協力を頂かないといけないのですが、協力してくれますわよね?」


「わ・・私も!カロリーナ様がドラホスラフ様と結婚出来るのなら!なんでも致しますわ!」

 さっきまで頭の中が宇宙を彷徨っていたコンスタンツェも、あっという間に現実に戻ってくると、ぎゅっとカロリーネとカサンドラの手を握りながら言い出した。


「私たち、三人揃えば不可能な事って無いと思いますの!」

「私もそう思いますわ!」

「そうですわね!」


 三人はニコニコ笑って手を繋ぎ合うと、コンスタンツェとカロリーナは改めて、カサンドラの美しい顔を見つめた。


「「それで、私たちは何をすれば宜しいのでしょうか?」」

「それは・・・」


 カサンドラはコロコロと笑いながら、

「社交に決まっているじゃな〜い!お二人には社交を牽引するリーダーになって貰いますわよ〜!」

 と、二人に宣言すると、横に揃えられた山のような書類の中の一部を、二人の前へ渡すようにお付きの侍女に命令したのだった。



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作中に出てくる鳳陽ってどんな国?皇帝ってどんな人?など興味がございましたら、ご購入頂ければ幸いです!!よろしくお願いお願い致しますm(_ _)m
悪役令嬢は王太子妃になってもやる気がないも宣伝の意味も兼ねてスタートします!"
― 新着の感想 ―
「社交に決まっているじゃな〜い!」 ですよね~、と思ったのは私だけではないはず笑笑
[良い点] 前作から楽しく読ませていただいています。 自分が楽する為に能力のあるものをこき使おうと画策するなんて本物の悪役なのでは…!? 続き楽しみにしています
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