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第三十話  カロリーネは羨ましい

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「カロリーネ、無事に務め上げましたね」


 パーティーが無事に終わった後、感極まった様子で母に抱きしめられたカロリーネは、ホッと大きなため息を吐き出したのだった。


 今回、ドレスの作成に掛かり切りとなっていたカロリーネは、麻薬を利用する貴族の洗い出しについては、両親に任せ切っているような状態となっていた。カサンドラに提出した報告書を作成したのは両親であるし、産婆が行った悪行についても、コンスタンツェに任せきりにしていたのだ。


 しっかり者のカロリーネは、学生時代、カサンドラの側近として先回りするように動いていたのだが、今回のパーティーでの断罪については誰かが作り上げた作戦にただただ乗っかるような状態となってしまったのだ。


「お母様、ですが私は、皆様の作り上げたものに従って動いただけですわ」

「それでも貴女は頑張ったわ。本来であれば私が最初からパーティーに参加するべきでしたのに、殿下への忠誠を誓うために、貴女とは別に動く形となりましたから」


 本来であれば、貴族派筆頭であるエンゲルベルト侯爵家の代表として、カロリーネの母が出るべき場でもあったのだ。これが普通に行われるパーティーであれば、カロリーネも母と共に出席する形を選んだのだろうけれど、そうは出来なかった理由がある。


 今日のパーティーはアルノルト王子が言う通り、王家に忠誠を誓うことになるのかどうかを問う試金石として利用されたものだった。社交は妻が担うものという強い価値観の中で、二人の貴婦人に付き従おうと考える妻と、殿下の性格を考えれば今回のパーティーは欠席するべきだと主張する娘。二人の意見に頭を悩ませる父親は多かったことだろう。


 自分の欲と金しか考えない貴族ほどカサンドラ排除に躍起となっているため、自滅の道を自ら進むことになったのだ。逆に、頭の回る貴族であれば、妻と娘、双方の意見を取り入れて、どちらに転んでも最低限の傷で収まるようにと考えた。


 一番傷が浅く済んだのが、パーティーの参加を見合わせた中立派の貴族たちということになるのだろうが、派閥を越える形で、まだまだ断罪は続くことになるだろう。


「お母様・・私・・」

 現在、カロリーネは隣国モラヴィアの第三王子であるドラホスラフとの婚約を続けているのだが、第二王子が急死したことにより、この婚約が暗礁に乗り上げているのは間違いない。


 第二王子が亡くなった今の状況では、他国の侯爵令嬢などではなく、第二王子の婚約者だったマグダレーナをドラホスラフの婚約者にした方が良いという話が出ているのだが・・

「私・・羨ましくなってしまいましたの・・」

 寂しそうに訴える娘をサロンのソファへと導いた母は、カロリーネの手を包み込むように握りしめながら、彼女の言葉の続きを待ったのだった。


「コンスタンツェ様に対してアマリア夫人が襲い掛かろうとした時に、颯爽とセレドニオ様が助けに入って、倒された夫人を侯爵が押さえつけていたのです。その後も、お互いがお互いを思い合っているようで、本当に羨ましく感じましたの」


 人の良さそうな顔で今まで生家である侯爵家を支え続けていたアマリア夫人の差配によって、コンスタンツェの母は死ぬことになったのだ。そのことを知った侯爵の苦しみは大きく、コンスタンツェも心に大きな傷を作ることになったのだ。そんな傷ついた親子を守るように支えたのがセレドニオであり、その姿を遠巻きにして眺めながら、カロリーネはつくづく羨ましくなったのだ。


 そうして後ろを振り返れば、身重のカサンドラに寄り添うようにしてアルノルト王子が立っている。普段は穏やかで、王子様らしい王子様のアルノルトだが、ことカサンドラが関わると豹変したように凶暴になるのだ。今回だって、万が一にもカサンドラに暴力が振るわれる形となれば、何が起こるか分からない。そんな恐ろしさが王子にはあるのをカロリーネは知っている。


 幼い時から仲良くしているカサンドラとコンスタンツェだったけれど、二人が選んだ男性は、何があっても守ってくれる強さのようなものを感じさせる人だった。


 翻って考えてみるに、自分が選んだドラホスラフ王子とはどういった男性になるのだろうか?隣国の王子で、背が高くて、前髪が長くって、顔の造形もまともに見ることが出来ない三番目の王子だけに、令嬢たちからは人気がなかった王子様。それくらいの王子様だったら自分には丁度良い、そんな感覚で選んだ人だったけれど、第二王子が急死して以降、彼の立場はガラリと変わることになったのだ。


 王太子の補佐につく人、王位継承権二位の地位に就く男。学園時代には、いつでも隣に立っていてくれたドラホスラフも、今は隣国の王宮の中で、多くの人間に傅かれながら生活をしていることだろう。


 今、カロリーネに何かが起こったとしても、彼が助けに来てくれることはない。国が違うから、立場が違うから、そういうことだけでなく、心の距離までもが遠く離れてしまっているのだから。




カドコミ・コンプティーク様にて『悪役令嬢はやる気がない』(高岸かも先生 漫画)で掲載!ネットで検索していただければ!無料で読めます!こちらも読んで頂ければ幸いです!

明日も2話更新します!よろしくお願いします!


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作中に出てくる鳳陽ってどんな国?皇帝ってどんな人?など興味がございましたら、ご購入頂ければ幸いです!!よろしくお願いお願い致しますm(_ _)m
悪役令嬢は王太子妃になってもやる気がないも宣伝の意味も兼ねてスタートします!"
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