表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/131

第八十八話  ハイデマリーは怒られる

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ハイデマリーはドラホスラフに怒られた。

 クラルヴァイン王国から国外追放されることになったハイデマリーの家族は、第三王子であるドラホスラフの庇護下に入り、王子の婚約者であるカロリーネの身の安全を確保するために結構な金額を貰うことになったのだ。


 ハイデマリーの家族がカロリーネの身の安全を守るのは、それだけのお金を貰っているのだから当たり前のことなのだ。


南大陸の人間で編成された部隊が想像以上に早く到着してしまったものだから、彼らを撹乱させるためにその場を動くことが出来なかった。そうして動けない間に、カロリーネを追いかけた数人の騎兵がカロリーネに銃口を向けたのだという。


 敵の撹乱は放棄して、すぐにハイデマリーが追いかけなかったこちらの落ち度と言えるだろう。


「王子様、申し訳ありません!まさかあんなに早く敵が到着するとは思わず、応戦するのに精一杯で、カロリーネ様を追いかけている余裕がなかったのです!」

「ハイデマリー、なんでカロリーネが一番に呼ぶ名前がお前なのだ!」

「はい?」


 目の前に立つドラホスラフ殿下は滅茶苦茶怒っていた。


「なんでハイデマリーなんだ!なんでなんだ!助けを求めて叫ぶのなら!まずは私の名前を呼ぶべきだろう!」


 確かにカロリーネはハイデマリーの名前を呼んでいた。猟師小屋の中で襲われそうになった時もハイデマリーの名前を呼んでいたし、馬で逃げている最中もハイデマリーの名前を呼んでいたらしい。


「日頃の行い的な?」

 目の前の王子から暗黒の怒気が噴出して来た為、

「というか・・やっぱり私がヒロインだからでしょうか?」

 と、すかさず鳳陽ジョークをかますことにした。


「ほら!私って子爵家の庶子で、成人間近となってから引き取られた上に、王立学園に編入するほど頭の良さを持った可愛い女の子じゃないですか!」

 ドラホスラフ王子の目の周りが黒々と染まり、暗黒のオーラが溢れ出したのを確認した従兄のイーライが、

「鳳陽ジョーク!イッツア鳳陽ジョーク!」

 と、慌てながら言い出した。


 するとハイデマリーの後ろで話を聞いていたハイデマリーの母アロナが言い出した。


「だけど、ハイデマリーを一番に呼ぶのは仕方がないことですよ!信頼感が違うんですから!それに下町の方では、殿下の結婚相手はマグダレーナ様か、それともダーナ様かと大騒ぎだったんですからね?殿下ったら自分の都合が良い時にだけ現れて、なーんにも言わないじゃないですか?そんなもんだからカロリーネ様は殿下のことを『ヤリモク』で付きまとうクズ男だと思い込んでいるんです」


 アロナが爆弾発言をかました後に、

「だってドラホスラフ殿下は私と『ヤルのが目的』で付き合っているのでしょう?」

 後ろから現れたカロリーネが凍りつくような笑みを浮かべながらそう言い出した。


「いや!あのね、殿下は猪突猛進の男だから!『ヤルのが目的』の交際とかしないんじゃないかな〜と、おじさんなんかは思うけどなあ!」


 ハイデマリーの叔父であるギルアドが慌ててフォローをすると、

「確かにそうだ!ヤルのが目的などと言ったら他にも女が居るような話になるではないか!俺は!俺は!カロリーネに対してしかタタナイのだから!他の女なんか居るわけがない!」

 と、ドラホスラフ王子が宣言した。王子が自分のことを俺と言い出す時には大概、大慌てになっている場合が多い。そうして大慌てをした男というのはいらんことばかり言ってしまう習性があるのだ。


 バシンッ バシンッ


 いらぬ発言で頬を二度、カロリーネに叩かれて嬉しそうにする王子は真性の変態なのだろう。


 兎にも角にも、カロリーネを無事に王子に引き渡すことが出来たのだ。大金を貰った分だけの仕事はこなしただろう。

「それじゃあ、私たちは家に帰ろうか?」

 ハイデマリーは家に帰ってお湯に浸かりたかった。頑張って湯を沸かさなければならないけれど、お湯に浸かって体を洗いたい。


 ハイデマリーがそう言って家族の方を振り返ると、そんなハイデマリーの肩を片手で掴んだ王子が言い出した。

「どうせ侯都に戻るのなら、途中で寄ってもらいたい場所がある」

「何かを届けるんですか?」

「そうだ、今すぐ書簡を届けて欲しい」

 そんなもの、他の誰かに頼めば良いだろうと考えたハイデマリーが口をへの字に曲げると、

「なにしろお前はヒロイン様なんだろう?」

 と、鳳陽ジョークを引き合いに出したドラホスラフはにこりと笑って言い出した。


「ヒロインにはヒロインの役割というものがあるだろう?であるのなら、早く向かった方が良いだろう」

「はあ?意味わかんないんだけど?」


自分の境遇が鳳陽小説に良く出てくるヒロインの境遇と良く似ていると考えたハイデマリーは、自分こそがヒロインであると勘違いした黒歴史がある。この黒歴史を自分の心の中でだけでも塗り替えるために『鳳陽ジョーク』に昇華させたというのに、ここに来て、あえてヒロイン呼びをされるとイライラが天元突破しそうになる。


「寄ってもらいたい場所には男主人公であるアルノルト殿下もいるだろう。丁度、夕食の時間だから、殿下は何か美味しいものを作っているのではないだろうか?」

「行きまーす!ヒロイン・ハイデマリー!ドラホスラフ殿下のお使いに行きまーす!」

「学園時代の悪役令嬢様にもよろしく伝えてくれ」

「カサンドラ様にですね!了解です!」


 子爵家の庶子であるハイデマリーがヒロインなら、王子の婚約者だったカサンドラは悪役令嬢ということになる。元同級生であるハイデマリーはカサンドラとの謁見はほぼほぼフリーパス状態になっているので、恐らく急ぎで渡したい書簡なのだろう。



 三連休となりました!本日19時にもう一話更新しますが、明日も二話更新にして、月曜日でこのお話も終わりとなります!!9月になっても暑い日が続いてうんざりするのですが、連休中の気分転換となれば嬉しいです!!最後までお付き合い頂ければ幸いです!!もし宜しければ

☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

6/10(月)にコミカライズ『悪役令嬢はやる気がない』が発売!

書き落とし短編〈鳳陽編〉も入っています!

作中に出てくる鳳陽ってどんな国?皇帝ってどんな人?など興味がございましたら、ご購入頂ければ幸いです!!よろしくお願いお願い致しますm(_ _)m
悪役令嬢は王太子妃になってもやる気がないも宣伝の意味も兼ねてスタートします!"
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ