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第七十八話  迎えに来るのは誰だ

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 アダムのようなオルシャンスカ伯爵の寄子となる貴族たちも苦境に立たされているということだろう。アダムのようにせめて家族だけでも命乞いが出来ればと考えている者もいれば、金をせしめて国外へ逃げ出そうと考える者も居るようで、誘拐犯たちはカロリーネやダーナに対して親切に接し続けていた。


 アダムの指示によって三度ほど場所の移動をしたものの、追跡者は誘拐犯たちを見つけられないまま時間だけが過ぎていくようだった。


 家族の安全を望むにしても、お金を望むにしても、ドラホスラフが侯王として確かな地位に就いた後の方が交渉をしやすいだろうと考えているらしく、三つ目に移動した猟師小屋には金持ちの平民が着るようなワンピースドレスが取り揃えられていた。


「誘拐犯たちが交渉まで時間が掛かると考えていたとしても・・ここまで誰も追って来ないなんて・・私たち・・もしかして存在を忘れられているのじゃないかしら?」

 不安になったカロリーネがそう呟くと、

「まさか!未来の王妃様を誰も忘れはしませんわよ!」

 と、ダーナは強張った笑顔を浮かべながら言い出した。


「アダムさんが言うには、遂にドラホスラフ殿下が宮殿に入り、侯都を制圧したというじゃないですか?王権を移譲するのに手間暇がかかるでしょうし、それが終わったら救出されるという運びなのでは?」


 ドラホスラフ王子が新しい侯王となれば、逆賊となった宰相を討ち果たそうとしていたオルシャンスカ伯爵が逆賊扱いとなるのは間違いない。逆賊として伯爵が捕えられれば一族郎党皆殺しとなることもあるわけで、その皆殺しの中には伯爵の寄子である貴族も含まれる。


「私たちは無事だろうから後回しにされているってこともありえますわね」

 なにしろ快適とは言えないまでも、かなり気を遣って世話をされている。命に別状がないなら、そのままにしていても問題ないと判断されているのかもしれない。


 ダーナはごくりと生唾を呑み込んだ。なにしろカロリーネの中で、ドラホスラフ殿下は最低野郎扱いとなっている。なんならすぐさま縁を切って、芸術の都ポアティエに逃げ出したいとさえ考えているのだ。


「後回しなんてそんなことありません!きっと今頃、殿下はカロリーネ様を救出するために動き出しています!」

「ドラホスラフ様はそんなことしないわよ」

 カロリーネははっきりと断言して、頭に包帯を巻いたダーナの方をチラリと見ると、

「ですけどね、きっと、ペトローニオ様は!愛するダーナ様を助けるために!獅子奮迅の働きをしながらやって来ると思いますわ!」

 確信を持った様子で言い出した。


「お姉様・・いやいや、ペトローニオ様がダーナ様に夢中だというのは火を見るよりも明らかですし、おね・・いやいや、ペトローニオ様は無敵の将軍様ですもの!敵をバッタバッタやっつけながらやって来ると思います!」


「カロリーネ様、わざわざ私を気遣って名前呼びなどせずとも、いつもと同じように彼の方をお姉様呼びしても大丈夫ですわよ?」

 頑張ってペトルを名前呼びしようとしているカロリーネに対して、ダーナはため息まじりに言い出した。


「あの方、お姉様みたいなお喋りで、私に手ずからお料理を食べさせようとするお節介の塊のような人ですもの。今まで通り呼びやすい呼び方で構わないですし、私とあの方は何の関係もありませんもの」


 またまた!そんなことを言って〜!という眼差しを向けられながら、ダーナはもう一度、ため息を吐き出した。


「どちらかというと私は、ドラホスラフ殿下が一番に駆けつけると思います」

「まさか!」


「そのまさかが実現すると思います。なにしろ殿下は粘着気質の我が道を突っ走る男ですから、自分の父親であっても邪魔だと判断すればバッサリと殺して、カロリーネ様救出のために飛び出してくると思います」

「そんなことあるわけないじゃないですか!」


 ダーナの言葉を全く信じていない様子でカロリーネはコロコロと笑い出した。

「誰が一番にここにやって来るかと本気で考えるのなら、私はアルノルト殿下だと思うのですけどね?」

「え?何故?」


「我が国の王太子は王子様然としていつでもニコニコされているのですが、切れると周りが見えなくなる傾向にあるのです。誘拐という言葉を最初に聞けば、カサンドラ様が誘拐されたものと判断し、即断即決で動き出すでしょう。それに距離的に一番近くにいるのが王太子様ですから、私は一番に到着するのはアルノルト殿下だと思います」


「ですが、一番距離が近いと言っても殿下はシュバンクマイエル側に布陣をしているではありませんか?ここまで来るのに敵陣を突っ切るしかないので、現実的な話ではないように思えるのですが?」


「いいえ、あの殿下ならやって来ますよ」


 カロリーネは確信を持って断言をしたのだが、実際にアルノルト王子は『誘拐』の言葉を聞いて自分の妻子が誘拐されたものと勘違いをした。そのため、虎の子の火龍砲を集めて一斉射撃で血道をあけると、すぐさま騎兵隊を突っ込ませる形でオルシャンスカ軍を踏み潰しながら走り出していた。


「私は絶対にドラホスラフ殿下だと思います!すでに殿下は宮殿を飛び出して馬を走らせていると思います!」

「そこはペトルお姉様じゃないの?」

「いえ、私は絶対にドラホスラフ殿下が一番に到着すると思います!」


 ある程度の日にちが経過すると何処かしらに余裕が出て来るもので、誰が助けに来るかということで二人の話は盛り上がることになった。すると、その日の夕暮れ時に無数の馬がこちらの方へと駆けて来るような物音が響き渡り、その後には魂切るような叫び声が轟いた。


 誘拐犯となるアダムに良くしてもらった関係で、誘拐犯たちに同情的になっていたカロリーネとダーナはどうやったら彼らの命乞いが出来るものかと、手を握り合いながら考え込んでいたのだが・・


『あああ〜!居た!居た!当初の予定通りの場所に居ないもんだから探し回ったぜーっ!』

『エルハム様の命令だ!』

『これから女たちを慰み者にするぞ!』


 扉を壊すような勢いで開けた男たちはなだれ込むように部屋の中へと入って来たのだが、浅黒い肌の男たちは明らかに南大陸から来た人間で・・

「ダーナ様!私たちどちらも予想が当たりませんでしたわね!」

 カロリーネはダーナの手を握りながらそう言って後退りをした。


本日2話更新、明日も更新していきます!さてさてこれからどうなるのか?最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

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