えっ………?あなた、は…………
今回でミミックスライムちゃんの登場です!
ーふむふむ。
ほーほー…………へぇ…………
「…………。」
ぺらっ…
うーん………ためになるなぁ………?
なるほどー。
「…………。」
ぺらっ……
………むふん。
ぱたん。
〈【貴族礼法Lv.1】を習得しました。〉
あ、スキルが生えた。
でもまぁ、古本屋で買った物だし、恐らく情報が古いだろうから実践には使えなさそーだけどね、これ。
ラグが『この先Aランク以上になったら貴族と関わる事もあるかもしれないから読んでおくべき』と言っていたマナーブック。
暇な時に読み進めていたのを読み終わったらスキルが生えてきた訳だけど、練習する場がないからスキルレベル上げは難しそう………
まぁ、コレも機会があれば追々こなしていこう…………
えっと、カーテシー?はこうだったっけ?
〈【貴族令嬢Lv0】を習得しました。〉
ふぇっ!?なんで!?
あ、もしかしてわたしの本来の職が聖女だった事に関係ある…?
そういえば、原作の“わたし”って所作が綺麗だった、って設定があった気もするし。
うーん…まぁ、いいや〜……令嬢スキルはあって困るものじゃないしね〜
さて、次の本は………と、アイテムボックスから別の本を出しかけていたわたしは、何かが近付いて来る気配に気付いてゆっくりと振り返った………
そこには…………
「ぇぅ………。」
「…ふぇ?」
何故か幼い女の子が居ました。まる。
………うん、おかしくない??
ここは深い森の中。
それにこの子はまだ子供、に見える。
なら捨てられたにしてもここで生きられるはずがない。
更に肌の色がおかしい。透き通る様な青は人間の色じゃない。
ここから導き出される答えは。
「魔物…?」
「ぅぅ………。」
でも、魔物ならこの結界内には入ってこれない。
にもか関わらずここにいるという事は………
「なぁんだ………敵じゃないのかぁ〜♪」
フレンドリーな味方勢力の魔物!!
それか迷子かな?
とりあえず敵では無いことは確か!!
安心っ♪
※この場にラグが居たら『いやそんな訳ないでしょ!?判断が早過ぎるよマリィ!?』とツッコミが入るところである。
「おいでおいで〜♪迷子?お家分かるぅ〜??」
「ぇぅ…!」
「きゃぁぁ〜ん♡かわいい〜っ!!」
「~♪」
敵じゃないと判断したわたしが両手を広げて受け入れる体勢になると、嬉しそうな顔で胸に飛び込んできたから可愛すぎて撫でくりまわしてしまった~♪
あ、柔らかい。ぷにぷにしてる〜!
見た目的にもスライムかなぁ〜?
とは思ったけど、やっぱりスライムだねこの子。
はわぁ〜♪嬉しそうな顔で胸に顔を埋めてくるのかわいい!!キュンキュンしちゃう♪
くつろぐ為に胸布を外してたから今のわたしの胸は柔らかいはずだしね〜♪
………はっ。もしやこれが母性本能!?だいじょぶ?おっぱい飲む??
「ぇぅ……おかあさん……やっと、みつけた………!」
「は〜い♪わたしがお母さんだよぉ〜♡」
「やっぱり、おかあさん…!
うぅ………おかあさぁぁぁん!!スーね!スーね!!たくさんたくさんがんばったの…!いたくて、つらくて、たくさんないたけど………でもがんばったの…!」
「大変だったねー?えらいえらい♪いいこいいこ♡」
「ふぇ……おかあさん……スーね、もう、つかれちゃったの……おかあさん…………もう…はなれ……な…い………すぅ………すぅ…………んにゅ…………
「あらら、寝ちゃった………?」
撫でくりまわしてたら安心しちゃったのか、スライムちゃんは眠ってしまったみたい………かわいい寝顔……うーん……でも、冷静になってきた頭で考えたら、なんでスライムが最初から人間に懐いてるんだろ??
しかも、見ず知らずのはずのわたしを【おかあさん】と呼んでいたし……
「…………。」
まぁかわいいからいっか~♪
いいこ………いいこ………よくお眠りなさい………
そうやって、スライムちゃんの背中(?)を撫でながらまったりしていたら、わたしも段々と眠くなり、焚き火がパチパチと燃える音とスライムちゃんの寝息をBGMにわたしは眠ってしまった………
「んぅ………?あ。」
気付くと周りは暗くなっていた。
けど、焚き火は未だにパチパチと燃え盛っている。
「………ラグ…?」
これだけ暗かったら帰ってきてるんだと当たりをつけて周りを見渡すと、対面に焚き火へ枯れ枝を焚べるラグが居た。
わたしに気付くと、苦笑いしながら話しかけてきた。
「おはよう、マリィ。
結界内とは言え油断し過ぎたよ?
魔物はともかく、人間は入れてしまうんだから。
僕じゃなかったら襲われていたね。」
「え〜?ラグになら襲われても………
「あー…うん、とりあえず今はやめようかその話。」
「……?うん。」
ラグが何時もの甘やかす雰囲気を消し、真剣な顔になったからわたしも甘える雰囲気を消し、真剣な顔になる。
そして、ラグは視線を移し、わたしに抱き着いて眠るスライムちゃんに視線を合わせた。
「それで?君に抱き着いて寝てるそのスライムは何者?」
「わたしの義理の娘…になりました。」
「うん?」
「えっとね………
わたしは『意味が分からない』とばかりに困惑するラグに事情を説明した。
「なるほど。状況は分かった。意味は分からないけど。
スライムもスライムだけど状況を受け入れる君も君だよマリィ!?」
「そう?」
「ぇぅ…?」
あ、話し声でなのか分からないけどスライムちゃんが起きた。
とりあえず頭なでなで〜♪
「おはよう♪」
「あ…おかぁしゃんらぁ〜♪」
「はぁ〜い♡お母さんですよ〜♡」
「きゃ〜♪」
あまりの可愛さに頬擦りすると嬉しそうな叫び声を上げるスライムちゃん!可愛さ限界突破!!
というわけで〜……
「ね?わたしがお母さんでしょ?♪」
「うんそうだね…?というかそのスライム喋るの??
ならミミックスライムか……
「へ…?」
ん?どうしたのかなスライムちゃん。
ラグに気付いたらしく、じ〜っとラグを見つめる。
見られてるラグもキョトンとしながらスライムちゃんを見つめ返す………すると、スライムちゃんはにっこりとして……?
「や〜らかいにんげん……あなたもおかあさん…?
やったぁ〜♪おかあさんがふたりだぁ〜♪わぁい♪」
瞬間、ずっこけるラグ。
座ってたのにずっこけるなんて器用だね??
直ぐに起き上がったラグは早速ツッコミを入れた!!
「いや違うからね!?僕は男だっ!!」
「ふぇ…?おとこ…?って、なぁに…?」
「「え?」」
「え?」
……スライムちゃんは何を言ってるのかな〜?
「……君、【男女の違い】、って分かるかい?」
「だんじょ…?」
「ふむ………
キョトンとするスライムちゃんに毒気を抜かれたのか、ラグは授業を始めた。
教材はわたし達だね!
「じゃあまずは君が言う所の【お母さん】についてだね。」
「おかあさん!」
「うん。
【お母さん】とは親の中でも女性の事を指す言葉だ。」
「じょせい…?」
「女の人、だね。それじゃあー
~夫婦教育中~
「えっと……?つまり、【だんせい】であるあなたは、わたしの【おとうさん】…?」
「うん、そうゆうこと。」
「そっかぁ〜……
「嫌かい?」
「ううん!おとうさんは“や〜らかい”からいいの!」
「なら………いっか。」
「うん♪えへへ〜……おかあさんとおとうさん…♪スーの、おかあさんとおとうさん!!」
「「………あ。」」
そう言えばまだこの子の名前を聞いてなかった……
「ところで〜…わたしの娘であるあなたのお名前は?」
「ぇぅ…?なまえ…??」
「えっと、あなたをどう呼べば良いのかな?
わたしはマリィっていうのだけど…
「まりぃ…?おかあさんはおかあさんじゃないの…?」
「えっと、おかあさんっていうのは個人……わたしを指す言葉じゃないの。
なんというのか…あなたの言うところの“や〜らかいにんげん”を指す言葉の1つでしかないから、沢山の“や〜らかいにんげん”さんや他の子のおかあさんが沢山いる時にわたしをおかあさんって呼ばれても呼ばれたっていうことが分からなくなっちゃうでしょう??」
「ほえ…?」
「だから、わたしがわたしだって、あなただけのお母さんだって分かるようについているのが【名前】だよ♪
だから〜、わたし達だけの時はいいけど、他にも“にんげん”がいる所ではわたしの事は【マリィ】、それか、【マリィお母さん】って呼んでくれるとお母さん嬉しいかなぁ〜?」
「うん分かった♪マリィおかあさん!!」
「うんうん♪素直でよろしい♪」
可愛いのもあって頭を撫でると嬉しそうにはにかむスライムちゃんが可愛いです!!
わたしの娘は最高でぇぇっす♡
「あ、それじゃあ、おとうさんはなんておなまえ?」
「僕は【ラグ】。だから【ラグお父さん】だね。」
「わかった♪ラグおとーさん♪」
「よく出来ました。」
ラグも娘の可愛さにやられたのか、嬉しそうにスライムちゃんの頭を撫でる………
これは!父性の顔だっ!
だからおっけー♡
というわけで本題だね!
「それじゃあ改めて………あなたのお名前は?」
「スーの…なまえ………なまえ………うん、そうだね………スーはね、【えとわぁる】、ってなまえ!」
「えとわぁる…?あぁ、【エトワール】か。
………って、エトワール!?」
「ならあなたは【トワちゃん】だねぇ〜♪
……って、どうしたの?ラグ。」
なんだか顔色が悪いよ?ラグ。
「い、いや……この国でエトワール、と言えば、【エトワール公爵家】を指すんだ。
だから平民…ましてや魔物がエトワールを名乗る事は許されない。
許されるとしたら、この子はエトワール公爵家の関係者、という事になる。」
「え…?」
あ、うん、理解したわ。
厄介案件だこれーっ!?
って、待って待って!?
そう言えばエトワールって…!!
『お初にお目にかかる、私は【クリスチーヌ・エトワール】という者だ。
訳あってこのミミックスライム殿に身体を捧げた者である。』
原作でのラグの仲間の1人、ミミックスライムのエトワールちゃん&中の人(?)のクリスチーヌ様では!?
「あああああっ!!【クリスチーヌ様】!!」
「えっ!?知ってるのかいマリィ!?」
はっ!?しまった!ついネタバレを!!えぇい!こうなったらしかたない!!
「う、うん……確かギルドにも捜索依頼書があったはず。
だからこの子、多分【クリスチーヌ・エトワール公爵令嬢】の死体を食べたミミックスライム……だと思う。」
「あぁ、身体だけを食べても身体の許可を貰っていないと身体と技術しか手に入らず、記憶までは奪えないのがミミックスライムの特性だ。
にも関わらずエトワールの名が出てくると言う事は………
「うん、クリスチーヌさんは何らかの事情で死にかけの時に出会ったこのミミックスライムちゃんに自ら食べられたんだと思う。
証拠を、誰に殺されたのかを、エトワール公爵家に伝えに行く為に。」
原作でもそう語っていたのがミミックスライムちゃんとクリスチーヌ様の回のこと。
その後、ラグと仲間達はエトワール公爵家の問題を解決し、それを機にミミックスライムちゃんもクリスチーヌ様も男性としてのラグに惹かれていくんだけど、それは原作の事。
現実でのミミックスライムちゃん………ううん、【トワちゃん】はわたしとラグの“娘ポジション”だから心配はいらない………はず。
と言っても原作では猫耳少女の事をおかあさんと呼んでいて、最終的には猫耳少女とラグが結婚したから2人の娘ってポジションに収まっていたけど。
それはそれとして……………
「でも、この個体の知能はまだまだ幼子レベルだったから、この森を彷徨うだけだった、と。」
「たぶん……。」
わぁ………厄介事案件だぁぁ……でも、可愛い娘を今更ほっとけないし!
「ラグ?」
「ああ、分かってる。このスライム……エトワール…いや、トワはもう僕達の娘だ。
この子の事は見捨てないよ。」
「流石ラグ♪」
ついでに【トワ】ちゃん呼び確定!!
まぁ…流石にそのままエトワールちゃん呼びは不味いもんね………
という訳で、原作ではラグの2人目の仲間、今作ではマリィ&ラグ夫婦の最初の仲間(娘)であるミミックスライムのトワちゃん(&クリスチーヌ様)の登場でした。
次回はエトワール公爵家に……!
行きません。
何せ2人は平民のBランク冒険者なので。