クリスちゃんもわたしにとっては可愛い娘だよ?
挿絵はカスタムキャストにて作成
無事に森を抜けて街の近くまで帰ってきたわたし達は、ギルドへ報告に行く前にトワをどうするか、という話になった……
そりゃあ、今はわたしもラグもまだ15歳だからね。
推定5歳の娘が居たらおかしいし………しかも出発前には居なかった子な訳で………
ーという事だから、街中では新しいパーティーメンバー、という事にしてもらいたいんだけど……。」
「んぅ…?なら、スーじゃないほうがいいかなぁ〜?」
「ごめんね?トワちゃんはわたしとラグの可愛い娘で間違いじゃ無いけれど、やっぱり変に騒ぎを起こすのは良くないから……
こんなに人懐っこいミミックスライムは、わたし達から無理やり引き離されて魔物研究所で研究対象にされるやら、娼館に買われて客の好みに合わせて変身出来る娼婦やらにされてしまいそうだからね………
可愛い娘がそんな目に遭う事は許せないから…………
「ううん♪スー、わかってるよ!
おかあさんやおとーさんとはなればなれはいやだもん!
だから…………『変身』ッ!」
「「っ!?」」
トワちゃんはそう言うと変身能力を使って金髪の女騎士様に変身した……けど、女騎士………って、まさか!!
「どうだ?
コレなら問題無いと思うが。」
「その姿………もしかして?」
「……ああ、お2人は…初めまして、になるかな。
お初にお目にかかる。
私はクリスチーヌ……【クリスチーヌ・エトワール】。
エトワール公爵家の長女にあたる。
尤も、今の私は故人だからな、ただのクリスチーヌだ。」
「やっぱり………トワちゃんが取り込んだクリスチーヌ様、でしたか。」
「重ねて言うが私は今や故人……それに正確にはこの姿は“大人になったトワ”だからそんなに畏まらずとも良いよ、【マリィお母さん】?」
「っ!?」
「【トワ】と一体となった今となっては貴女が私の母上になるのだな………うむ、良い顔をしている。」
(私を憎んでいた継母とは大違いだ………)
「あの……
「ん?何かな【ラグお父さん】?
いや、父上。」
「もしかして、その瞳は……
「うん?鏡が無いから分からないのだが、何か変なのかい?」
そう言ってクリスチーヌ様…?は、自身の目元に手をやる。
その瞳の色は、右眼はラグの様な赤眼、左眼はわたしの様な緑眼で、まるでわたし達の子の様だし、その瞳自体が人間ではありえない輝きを宿していて、彼女の正体はミミックスライムであると如実に語っていた。
「わたしと、ラグの色…?」
「ほう…?私の瞳は元々は碧眼だったはずだが……。
今やご両親の色、となるのかな?」
「え………そんな…………恐れ多いですよエトワール公爵令嬢様!!」
「父上、頼むから今の私の事はどうか【クリスチーヌ】と。
死した私は、最早エトワール公爵家の者では無いよ。
それに、今の私は貴方とマリィ母上の娘だ。
娘に対して畏まらないでくれ。」
「ですが…!」
「もぉ〜!ラグは硬いなぁ~♪
よろしくねクリスちゃん♡」
本人が良いって言ってるんだし、クリスちゃんはトワちゃんと同じなんでしょ?
なら、ぎゅぎゅ〜っと抱きしめてあげちゃう♡
頭もなでなで~♡
クリスちゃんの方が背が高いけど、引き寄せたら察して膝立ちになってくれたから胸に押し付けちゃうよ~♪
※マリィは160cm、クリスチーヌは176cm。
「マリィ!?」
「ほぅ……安心するな。
そうか………これが、母の温かさか…………死してから経験出来るとは…………
「うふふ♪クリスちゃんも大事な大事なわたしの娘だよ♪
だから〜、い〜っぱい!思う存分!えんりょ〜なく!わたしに甘えてねクリスちゃん♡」
「よろしく頼む、母上。」
「はぁ〜い♡」
クリスちゃんは生真面目さんなのね〜?可愛い〜♡
と、2人目の娘の可愛さにメロメロになっていると、大好きな旦那様が慌てた様にツッコミを入れてきた…?
「っ!マリィッ!?いくらなんでも君はおおらか過ぎるよ!!公爵令嬢に膝をつかせるな!!」
「え〜?でも、クリスちゃん本人が良いって言ってるし、クリスちゃんの方から膝立ちになったんだし、なにより実際、喜んでるよ??」
それこそ、クリスちゃんに犬のしっぽがあったらブンブン振ってるだろうなぁ〜って位に。
クールな美人さんな見た目なのに存外子犬……ううん、大型犬タイプなのねクリスちゃん♪
あんっ♡胸にぐりぐりと顔を押し付けないでぇ〜♪くすぐったいよぉ〜♪あははははっ♪
「そうゆう問題なのかなぁ!?
お貴族様に目をつけられたく無いんだけど!?」
「………案ずるな父上。今の私はただの父上と母上の子、つまり平民だ。
それに、この見た目で私が【クリスチーヌ・エトワール 】だと分かる者は早々に居ない。
どうやらトワ殿は、存外そこら辺の事情が分かっているようだ。」
「絶対違う…!あの無邪気で無垢でマリィみたいに能天気な娘にそんな気遣いはないっ!!」
「流石にそれは母上にもトワ殿にも失礼ではないのか?父上。」
「いいや…初対面で妻の胸に飛び込む様な警戒心の無さは思慮も無いとしか思えない…!
いくらマリィが善人で、愛情深くて、子煩悩な本心を持つ巨乳美少女だとしても、だよ。」
「ね〜えラグ〜、わたしを褒めてくれてるのは分かるけど〜…女の子に面と向かって“巨乳美少女”はないと思うなぁ〜♪
お母さん、ちょぉ〜とデリカシー無いと思うよ♡」
「君は僕の母親じゃなくて妻だからね!?」
「あはは〜……ラグ、言葉を額面通り受け止めちゃって〜……普段ならそんな事無いだろうし、テンパリすぎぃ〜………
「ん゛ん゛っ…!ごめん、今のは失言だった。」
「父上……。」
思わず苦笑いで返すと、ラグはわざとらしく咳払いをして無理やり気持ちを切り替えたのか、(表面上は)冷静になった。
うん、顔が赤いし動揺が隠しきれてないよ〜?
可愛いなぁ〜♪ウチの旦那様♡
なんか、クリスちゃんは残念な人を見る目になってるけど〜
…あ、もしやコレ、クリスちゃんの恋愛フラグ折れた?
だとしたら嬉しいけど……可愛い娘と旦那を巡って戦いたくは無いし。
「ああもぅ!話を逸らさないでくれるかな!?」
「え、何の話だっけ??」
「……っ!……っ!……はぁ、馬鹿らしくなってきた………。」
「うふふ♡」
「母上に流されやすいですね、父上。」
「言わないでくれないかな、クリス。
あといつまでマリィに抱きついてるの??」
「あ、もうそう呼んでくれるのか。ありがとう父上!」
「………うん、君が元々公爵令嬢だっとしても、今はトワ。
無理矢理にでもそう納得した。」
(と言うか、見た目的に歳下であろうマリィの胸に顔を埋めて甘える公爵令嬢とか威厳もへったくれも無くなってるし。)
※実際、生前のクリスチーヌは18歳。恐らくトワ(精神年齢5歳前後)に引き摺られて多少精神が幼くなってると思われる。
「それでも嬉しいよ、父上。」
「うん、君も臆面も無く僕をそう呼ぶからね。」
「……私にとって、【両親】と呼べるのは、最早貴方達しか居ないからな。」
「えっ…?それって…………
両親と呼べるのはわたし達しか居ない…?
もしかしてそれは………
察したわたしに対して、なんてことの無い様にクリスちゃんは言う。
「ああ、本当の…いや、産みの母は私を産んで直ぐに亡くなったから記憶に無い。
血縁上の父は政略結婚でしかない母から産まれた私に、興味なぞ示さなかった。
父の愛する継母は、そんな私を疎ましく思い、事実、私はこうして排除された。
今のエトワール公爵家には、その継母が産んだ息子しか子が居ないし、私が居た頃だって父は継母と息子しか愛さなかった。」
「………貴族だとよくある話、だね。
娘は政略結婚の道具にしかならない。
それが【お貴族様】だし。」
「そんな……。」
子供は可愛いものじゃないの!?
例え政略結婚の相手が産んだ娘だとしても!血の繋がった実の娘なのに!!
継母にしても半分は愛する夫の血を引く娘じゃないの!?
わたしは、クリスちゃんが冷遇されていた事が悔しくて、クリスちゃんを改めて抱きしめなおして頭を撫でる。
クリスちゃんはそんなわたしに嬉しそうに再び抱きしめ返してくれた………
「母上。私は大丈夫だ。
今はこうして、私を愛してくれる母上が居る。
それに………今は私を愛してくれる父上だって、居るんだ。」
「ラグ………。」
「マリィ、これからは僕とマリィでクリスの事も沢山愛してあげよう。父親と、母親として。」
ラグも、わたしごとクリスちゃんを抱きしめていた。
わたしとラグの間に挟まれたクリスちゃんは、本当に幸せそうに笑うから、わたしは、もう何も言えなかった。
ただ、わたしはそんなクリスちゃんをもっと胸に押し付けた。
母性つよつよ系バブみヤンデレ(?)主人公………属性の方向音痴過ぎないかマリィさんや。
ヤンデレ属性が消えてなぁい??
マリィ:娘は可愛いし甘やかしたくなるから仕方ないね♡
ただし、ラグを父親として見なくなったらどうなるか、分かんないよ??(ニコニコ)
そすか………




