口約束の婚約から始まるプロローグ
またもや始まる衝動書きの作品………勇者パーティー追放系なんてありふれた作品の、追放する側だった破滅する幼馴染みが、本当は主人公の事が大好きだったのに………なんて設定もありがちではありますが。
これはそんな幼馴染みが運命に逆らい、主人公と結ばれた場合の物語………
(なお、似た様な設定の勇者パーティー追放系作品なんてありふれてると思いますし、だからこそ特定の作品を揶揄してるつもりはありません、何かしらの追放系の設定と似ていたとしてもありふれてる以上、仕方ないかと。)
「わたし、おとなになったらラグのおよめさんになるの〜♪」
「マリィちゃん……うん!やくそく!!ぼくがおとなになったらおよめさんになって!」
「うん♪やくそくだよぉ〜♪」
これは、子供のよくある口約束。
記憶にも残らない些細な児戯。
だけど、ラグはちゃんと覚えていて…………
「マリィちゃん。」
「んぇ…?なぁにラグくん。」
「好きです、結婚を前提にお付き合いをお願いしますっ!!」
「良いよぉ〜♪」
これだけだったなら、微笑ましい物語だったんだろうけど………その、結末は。
「最低。貴方なんて人間の風上にも置けないわ。」
「そんな……マリィ…?」
「ハッ!本当におめでたいやつだなお前は!
マリィもとっくに俺の女だったってのになぁ!!」
「わたし達にもう近付かないでよ、無能。」
(ざまぁwwwwお前みたいな無能がモテるとか気に食わないから洗脳スキルで全員寝盗ってやったんだよバァァカwww)
幼馴染みのラグは、わたしと共に勇者パーティーの一員となって、だけど無能だからとバカにされ、幼馴染みであるわたしも寝盗られて………
その後、勇者共々、マリィは破滅した。
馬鹿な勇者に洗脳され、身体を弄ばれ、無茶な冒険に付き合わされて、わたし、マリィは死んでしまった。
勇者も、他のパーティーメンバーも、死んだ。
反対に、勇者パーティーから追い出されたラグは、実は有能だった、なんてよくある話で成功を掴み取っていく。
そんなよくある勇者パーティー追放系主人公の物語。
その、物語の主人公の幼馴染み、それがわたし、マリィなんだ。
コレは、そんなパーティー追放系主人公のラグのお嫁さんで居続ける為にわたしが頑張る物語。
こんな救われない結果、“マリィ”だって望んでなかったはずだから。
【どうやらわたしは勇者パーティー追放系主人公の幼馴染みな様なので、幼馴染みのお嫁さんで居られるように頑張ろうと思います!!】
まぁ、ざっくり説明するなら、わたし、マリィという人間の本来の運命はそういう訳なんだけどね。
ただ、わたしはそうはなりたくないし、そもそもマリィはラグの事が大好きで大好きで、ずっとずっとずーっと大好きで、そんなめちゃくちゃに重たい、最早執着レベルの重たい愛を持っていたのに抵抗虚しく勇者(笑)に洗脳されてしまった。
いや、あのメンバーの中で最後まで洗脳に抗っていたんだけどね。
おっとり系幼馴染みキャラなのに。
………おっとり系幼馴染みでヤンデレってマリィあなた中々に凄いわね!?
まぁそんなマリィであるわたし。
何故か幼少期にラグと結婚の約束をして、シロツメクサを編んで作った指輪を交換した瞬間に“わたし”がマリィの中に生えてきて同化した訳なんだけど。
そのお陰でわたしはこの先に何が起こるかが分かっちゃった訳で。
だからわたしはそんな未来を回避する為に頑張る事にした。
だってわたしはラグ以外の男なんて、要らないもん。
「ねぇラグく〜ん?」
「ん?なぁにマリィちゃん。」
「わたしもラグくんといっしょにしゅぎょーする〜♪」
「うん!いいよぉ〜!いっしょにがんばろう!!」
ラグが昔から鍛錬して、職業に関係なく習得出来るスキル……色々なコモンスキルを趣味で習得していたのは物語を読んで知っている。
だからわたしもラグと一緒にコモンスキルを覚える事にした。
だってコモンスキルって、馬鹿にされがちだけど実は特定のスキル同士がシナジー効果を持っていたり、別のスキルに化けたりするのを今のわたしは知っているから。
そこで狙うのは治癒系コモンスキル、【精神異常耐性】を今から覚えておく事。
そして戦闘能力も鍛えてラグを護れるお嫁さんになる事…!!
理想のプランは立ててある。
わたしは弓も使える聖女になるのを既に知っている。
だからわたしは弓術の他に初級剣術と初級槍術のスキルを習得する。
剣と槍は何故要るのか、と聞かれたら、万が一弓が使えない状況になっても、剣術や槍術があれば矢だけで戦えるからだ。
そして、更に覚えておきたいのはそんな剣や槍にもなる矢を作る事が出来る初級錬金術と初級鍛治術。
弓の修理や耐性の御守りを作るのにも使えるしね。
そして、聖女である事を隠す為にもステータスを偽装、隠蔽、改竄出来るスキルを覚えないといけない。
とりあえず、わたしはそれだけでもいい。
原作でのラグはそれも含めたあらゆるコモンスキルを習得していたけれど、それはもっともっと幼い頃から研鑽を積んできた彼だから出来たこと。
既に10歳になった今から始めるわたしは、決して彼と同じにはなれないし、なる必要は無い。
そもそもわたしは聖女になるのだから。
それにしてもラグくん、隠蔽・偽装・改竄なんてなんのために覚えたんだろ………?やっぱりスキル集めが趣味だからかな??
まぁ、そのお陰で作中ではこのスキルたちも確かに役に立ってたけど……………
とにかく、原作が始まるまでの残り5年。
この時間をわたしは無駄には出来ない。
わたしの未来の為にも……だけど、1番は、ラグの心に深い傷を付けた、あんな未来にさせない為にも……!!!
…………と言ってもまぁ、原作のラグは勇者パーティーを追い出されたその後直ぐに危ない所を助けて仲間にした猫耳の女の子と色々あって恋仲になって、時間はかかるものの傷は癒えるんだけど、ね。