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自己中な幻想  作者: CLLK
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7

「おぉぉぉ…うぁぁぁぁ!」


コンクリートの様な材質で出来た通路に響く幼児の叫びと共に、腕を伸ばし叫ぶ幼児の周囲のコンクリートが"ビシッビシッ"とヒビ割れる。そしてその現象は、通路の奥に佇む餓鬼の様な異形に向い伸びていく。


「ハァァァァ…………!」


続けて何かを持ち上げる様な仕草になった幼児が、鼻血を垂らしながらも重そうに腕を持ち上げると、その仕草と同時に異形の周囲のコンクリートが剥がれ異形を押し潰した


「ズズッ……ハァハァ……げ…限界…」


自身の成長に伴いコックピット周りをメインに新たに改修した[takashi-kun mark2]のコックピット上部で、息も絶え絶えに上半身を露出させたまま通路の先の様子を伺うのは、血の滴る鼻を押さえている、この度、無事満3歳を迎えた俺だった


(くそぉ……レベルアップで威力は上がったけど、やっぱり頭痛はするのか……おっと、回収…回収)


「ハッ」と、右手で鼻を押さえたまま左の義手を瓦礫に向け集中すると、(やっぱりア○ラ君の様にはいかないか…)なんて考える内に義手が何かを掴むの感じる


(さぁて…経験値、経験値…初めて見る奴だからな何ポイントになるやら…ヒヒッ)


掌の中で溶けていく無色透明な結晶を感じながら、カスタマイズした❲自己診断❳の画面を表示させ2回スライドさせて自身のステータスを表示する


(え〜とぉ…確か135343pだったか……うおっ…おぉ50pも増えてる……以外と強敵だったのか……次は気を付けないと……)


なんてことはない、あのスライムから出たドロップアイテムは、触れる事で吸収できる経験値というかポイントの塊の様な物だったというオチだ。


あのスライム戦の後、何か変化は無いかと❲自己診断❳の画面をチェックしていた俺は、戦闘前よりポイントが100も増えていることに気付き、あの結晶はそういう物だと結論づけた。

そして、ポイントを得る為に積極的に生物は狩る事に決め、当初の目的、少しでもまともな生活環境を求め地下の探索を始めたのだった


先ずは、スライムがやって来たであろう大型のダクトを見つけ、内部にひしめくスライムを炎弾を駆使して排除していく。そして、やっとの思いで何らかしらの施設らしきものの内部に辿り着いた時には、俺が駆除したスライムは100体を超えていた。結果、ポイント的には美味しかったが半年以上に渡ってコツコツ貯めた魔力触媒が枯渇しかかったのは痛かった


(当時は1日に精々2つしか精製できなかったからな……おまけに機体を動かすのにも使うから仕方ないっちゃあ仕方ないんだが………まぁ、材料の人骨には事欠かなかったがな………しかし…)


俺は❲自己診断❳の画面を再度スライドさせ、最初の画面であるマップを表示させる


(やはりリポップはしないか……やっぱり此処はダンジョンじゃ無いんだろうな。まぁ、やっと施設内上層のマップは埋まったし……多分

……しかしまぁ、上層とは言っても産廃場の深さからいって、ぜんぜん地上には届かないよなぁ……はぁ…)


「ん…しょっと」


周囲に敵が居ないのを確認して機体から通路に降り立った俺は、通路上に何ヶ所かあるスライド式のドアを調べるのと、生身の身体を鍛える為に歩きだした


「……ムッ…うぅぅ…」


2年近くこの此処を探索していた俺は、この感じの通路にあるドアが自身では破壊という方法でしか開けられないのは既に既知の事だったので、ドアの前に立ち躊躇無く触れると能力を使う


"ガッ" "ゴッ" "メキョ"と、触れた部分を中心にドアが圧縮されていくと、俺が通れる隙間が出来た所で圧縮がとまる


「どぉぉれ…………おおっ……一年振りに倉庫っぽい物が……」


パイロキネシスで発生させた炎に薄暗く照らされた室内を、干渉範囲に納めてより詳細に把握していくにつれ、能力と連動させた某スカウターにヘッドマウントされたディスプレイへ室内の様子がより明らかに表示される。ディスプレイから情報では、其れなりの広さの室内に並べられた棚と物資らしき箱が並んでいるのが分かると、義手からその物資らしき箱全てへ向けて数多の極細のコードを伸ばした


(クッソ広いクセにこういう倉庫っぽい場所が全然見つからなかったからな、久々に…………ぐぬぅ……なんだ?…表面には浸透するのに中に浸透出来ない?……まぁ…後でいいか……大体…半分以上か…内部への浸透が終わったのは、先に此方からチェックするか、何か使える物…残っててくれっ…特に食料!)


そう想いながら、室内に侵入した俺は棚に沿って歩きながら物資の中身をスカウター越しにチェックしていくと、その中のいくつかに食料らしい物を見つけるが


(うぅ…駄目だぁ腐ってやがる……漸く……んっ?!腐ってる…だ…と……)


中身が腐敗していると思われる物資の保管箱の前で呆然としていた俺は、ある事に気づくと、急いで衣服の類が保管されている筈の箱へ近づくと、義手から追加で何本もの極細のコードを伸ばして箱へ浸食されると強引にロックを解除して蓋を跳ね飛ばす


「……劣化は……して…無いな……なら……」


保管箱の中から引っ張り出したツナギの様な服を、あれこれチェックしながら状態を確認した俺は、ワナワナとツナギを見つめ呟くと、視線を漂わせ未だ能力が浸透しない箱の一つを見定め、浸食したコードがブチブチと切れるのも構わずフラフラと歩きだす


(あの産廃場以外で今まで腐るもんといえば、それこそ、この施設内の異形共しか見たことが無い……それに、その他の物にしてもおそらく…例外なく経年劣化していた…筈…)


学校の教室より少し大きめの倉庫内を、棚を縫う様にゆっくりと移動し、目的の保管箱の前に立つと焦る気持ちを抑えつつ慎重にコードを浸食させていく


「ふぅぅぅ……(焦るな…ゆっくりと、慎重に……認証?知らんな。無視して単純にロック機構を……いいぞ…自壊するような機構も見受けられんな)」


コードを浸食させた事で、より詳細に保管箱の構造を調べていく


(……なるほど、ここからか……確かにッ、侵入出来ないなっ………まぁいい、そんな事よりまずは開けるか)


保管箱の内側、能力の干渉の及ばなかった部分への侵入を諦め、箱のロック機構を物理的に強制作動させると、"シュ"という音に続き蓋の隙間から弱い発光が起き蓋が持ち上がった


(いい加減…俺に食べ物…味覚を満たす物を……輸血紛いの栄養補給はもう嫌だ!)


「か…缶詰…なのか…………………


おぉぉ…何と言う…偉大という………ついに…ついにッ……」


俺の懇願が通じたのか、背伸びをして覗いた蓋の中には、見慣れない料理の絵の着いた缶詰ともいうべき物が並んでいた


「ぐぅぅ……漸く……ッ!!」


喜びに能力を使う事も忘れ、自身の身長と然程かわらない保管箱を必死によじ登った俺の目が、一部の缶詰が少しずつ変色と膨張を始めているのを捉える


「チィィ!A…サイコフィールドっ」


(ど…どうだ?…………)


缶詰の変化に、焦りと苛立ちを感じながら、俺は咄嗟に保管箱自体を能力で保護し、それ以降の缶詰の変化を見守ると共に、箱を浸食していた自身のコードを変化した缶詰へと伸ばした。


(どうやら変化は止まったか……クソっ…どうなってやがる…………!)


「オェッ…気持ち悪ッ!」


缶詰へ浸食させたコードから、中身の詳細な情報が脳内に流れてき、変色した部分からどこぞの物体Xの様に細く触手の様な物が生えかかっている様が分る


「マジか…半分はやられてやがる……遅すぎたんだ…よじ登るのが…」


保管箱の缶詰の上で、手ずから汚染された缶詰を外へより分けながら嘆くも、俺は無事な缶詰を手に取り缶詰の上部を一周するようにコードを巻き付け、其処を基点にコードの内側の空間を無理矢理転移させる

汚染された缶詰を除いた保管箱の中の空けたスペースに、空間ごと転移させた缶詰の一部が落ちるのも気にせず、俺は蓋を開けるように転移させた部分から上の缶詰を持ち上げた


「さてさて…(なんの料理か分からんが、今ならあの納豆だって美味しく食べられる自身がある)……くぅぅ!」


缶詰の中身は絵からの予想に反して、見た目ペーストっぽい何かに見えたが、そこから香ってきた匂いはまさに調理された料理の匂いその物だった


(この匂いなら…ぐっ……いける!)


既にディスプレイにはこれが無害である事が示してあったのにも気づかず、スンスンと匂い確かめると、マントっぽく義手をさらけ出す様に巻いていた物の内側から取り出した苦無もどきを、頭痛も厭わずスプーンの形に形成していくと


「いただきます!」


そう言って俺は、義手によってガッチリと固定された缶詰へ、スプーンを突っ込むのだった


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