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自己中な幻想  作者: CLLK
5/11

5


(コックピット内…サイコフィールド正常に発動……魔力浸食率0.1%以下で安定……食道への外気の接続……成功……疑似神経回路の接続……完了……各部動作確認……以上無し……コックピット内へスライムジェル注入開始…ハッチ閉鎖…注入率…70%…80%……97%…注入口閉鎖…本体の固定及び保護完了……モノアイ映像をヘルメットシールド部へ投影開始…映像正常…❲自己診断❳とのリンク開始………サイコガン、レティクル表示……[takashi-kun] 起動ッ)


そこはかとなく某機動隊に出てきそうなシルエットな機体が産廃を掻き分けながら立ち上がるのを、俺は眼の前に表示される3つのモニターのうち俯瞰視点のものを拡大させて見つめる


(いや…似てるけど…大きさは俺用だから一回りも二回りも小さいし、脚も昆虫っぽいから……やっぱり2本脚でマニュピレータもガウォークっぽくすれば……でもそうしたら姿勢制御だけで俺の脳が焼き切れる自信がある……まぁいいか、そんな事より…マギスブレイン起動…『…っ…此処は何処だ…誰かいないのかっ、真っ暗で何も見え』記憶の書き換えを実行…『おいっ!?……………01起動しました。これより魔力制御にはいります…』完了)


何故か此処に定期的に落ちてくる現地人の中に偶に居る息のある人でいろいろとまぁ…倫理反する実験の末産まれたマギスブレインに、毎回起動時にする作業を一通りこなした俺は


「(興が乗ったてのもあるが…思いの外10ヶ月も過ぎるとは…それに全然身体動かして無いから辛うじて寝返りが出来る位しか身体に筋力がない…ってかこんなゴミ捨て場でハイハイなんてできねぇ…もっとまともな場所に移動しなきゃな……良し行くか)あうあ〜(発進〜)」


そんな締まらない感じで機体を動かすと、適当な方向へ真っ直ぐに進みだした


(う〜わ〜……いま手が何か突き刺した!?うぇッ、ぬちゃっとする……感じがするな……感度が良過ぎる……痛覚をカット出来るだけましか…)


初期は念動で機体を操作するつもりだったのだが、その方法ではどれだけ効率的にやっても稼働時間は5分が限界だった。それで初期設定からやり直し機体中に張り巡らせた疑似神経へ義手を通して俺の脳神経と接続させる事で、機体を仮の身体として操作する方向で再調整し最大稼働時間を大幅にのばすことに成功したのだった。


最初は人間の四つん這いとは違う脚の動きに多少苦労したものの、おそらくは〘器用貧乏〙という加護のおかげなのだろう直ぐに違和感なく機体を動かす事ができた。だが、神経接続の弊害といえばいいのか嗅覚、味覚以外の五感が機体を通して感じられてしまった。幸い意図的に痛覚をカットすることが出来たので、今では操作性の向上へ一役かっている…


あと〘器用貧乏〙を得たからなのだろうか、前世どちらかといえば不器用だった俺では考えられない程、割となんでもスムーズに作業できることもいろいろ夢中になってしまった要因の一つと言えた


(おっと……やっと外周へ辿り着いたか? 

ふぅむ……大体…150…いや200m程度か?探知範囲には…通路らしきものは無い…か)


思わぬ外敵に出くわさぬ様、ほぼ暗闇の中干渉範囲を変形させる事で前方メインに広い視界を確保し、細心の注意を払いこの空間の外周と思わしき場所まで辿り着いた。俺は、外周の周囲で干渉範囲の形をあれこれ変え探知を試みたが、探知範囲に通路や壁の奥の空間などは見つからなかった



(……ん?なんだ水か…それにしては…)


外周に沿って移動しようとした俺の身体…いや機体に冷り感覚を覚え、俯瞰画像へ意識を切り替えると機体に水にしては粘着性のある物体が少量コックピット上部へ付着していた


(上から……何だ?……あっつ!?………おいおい…これはもしかして…あのスライムって奴ですかぁ)


どうやら探知外の上から現在進行系で垂れ落ちて来ている粘着性の物体の出元を探ろうと主観映像を上方へ向ける途中で唐突に背中に熱を感じた俺は、俯瞰映像へ意識を向けると物体の付着した部分から薄っすら白煙のようなものが上がっているのを確認すると、これは所謂スライムだと判断して背中の熱も忘れ


(ヌートリアもどきとか、デカキモい昆虫みたいなのばかりから、やっと異世界らしくなってきたなぇ……えぇコラ!…)


スライムの存在に興奮気味に❲鉄男❳で機体上部に衝撃を発生させる。


"バチッ"


衝撃によって機体に付着したスライムが弾ける


(弾けただけで大したダメージは無いな…やっぱり浸透させてない生物には効果が薄いな)


機体を一歩後へさげながら、地面へ散らばったスライムがズズッと一つに纏まる様子を見て、機体から引き剥がした以外は効果が今ひとつなことを見て取る


(こういう時の為の……ぬおっ!『モノアイとの接続完了……標的固定…詠唱開始…』デカッ!)


その時、後部ユニットを含め胴体がちょっと高級なマッサージチェアほどある俺の機体を、余裕で包み込める程の大きさのスライムの本体が、ドゥルンッ、と落下してくると、身体を伸ばし覆い被さろうと迫ってくる。


「アブ〜っ(なんのぉ〜)」


咄嗟に機体上部にサイコフィールドを発生させながら胴体を屈め『標的ロスト…発動待機』の音声を無視してスライムの斜め横を高速で駆け抜ける


「ダッ(アンカーッ)」


2本の前脚に備えるワイヤーアンカー内の一つを、滑る機体を残る3本の脚で制御しながら外周の壁の高い位置へ射出と、アンカーの尖端を壁に打ち込み急制動を掛ける


「あい〜(イヅっ…重力制御ッ)」


頭痛による鼻血を軽く出しながら機体の重力を軽くするとアンカーのワイヤーを回収しながら機体を壁に張り付かせる


「うい!(後部索敵ッ………とら『標的捕捉、再固定』……最大火力っ)…うちぇ!(……てぇぇ!)」


真上を向く形で機体を壁に張り付かせた為、下方にいる筈のスライムを捕捉するため干渉範囲による索敵を行い捉えたスライムにマーキングを施すと、サイコガンとは別のレティクルにロックされたスライムに向けてトリガーを引くイメージで俺が叫ぶ


『範囲限定…最大火力…[これはただの炎弾だ]発動』


俺の叫びに呼応して機体の後部に簡素な赤い魔法陣が発生すると、マギスブレインの音声と共に魔法陣が青白く輝き出すと、魔法陣からスライムに向かい

ハンドボール程の白っぽい炎弾が発射される


『着弾…バースト』


炎弾がこちらへ身体を伸ばそうとしていたスライムへ着弾すると、炎弾は、同時に聞こえたマギスブレインからの平坦な音声とは逆に、ドーム状にスライムを包み込みその身を青白い炎で燃やし尽くさんとするのだった


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