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『ふぅ…何とか付与できましたか…』
『良かったぁ…間に合ったぁ〜』ッ
『う…うむ…まぁまぁじゃな』
男が空間と共に地上から姿を消した頃、少し離れた上空からその様子を伺っていたものたちがいた
『…まさか、失敗したのですか…この幼女は』
『うぐっ……わ、儂が失敗など、す…する訳なかろう…女神よ』
『本当かい?、それにしては随分と様子がおかしいけど…いったいどんな力を付与したのさ?』
『きよ……ん…ぉ…じゃ…『なんだい?』クッ…このショタ神めが……だから…器用貧乏…じゃ!』
『プッ、器用貧乏って…キミ…』
『チッ……儂だって、こんな結果になるなど思うてもなかったわ!まさか神格が足らぬとは…』
『貴方…いったい何を付与しようとしたのですか?』
『ぬっ…なにせ誕生したての儂にとっては初の転移者じゃからなっ、気合をいれて低レベルでもよいので技能系のスキルを思い付く限り全て付与しようとしたのじゃが、まさか神格が足らずにあんな器用貧乏なんてスキルになってしまうとは……』
『もしやとは思いますが、もちもん其れは1つずつ確認して付与したのですよね?』
『ん?そんな訳無かろう、時間も押しとったからのぅ…纏めてやったが、何か不味かったかの?』
『この子は…』
『ハハ……君よく無事だったね……ああ!だからスキルが変化したんだね』
『ムッ……どういう事じゃ?』
『ハァ…いいですか?私達にも神格に応じて付与出来るものの数や質に制限があるのです。仮に、その制限を超えて付与を行えば、神格の低下や最悪自身の消滅さえあり得るのですから、今回は何故かスキルが整合性を取ったものへ変換されて事なきを得てますが……』
『お、おぉぅ……そうであったか(あっぶねぇ…そういう事は前もって教えとくもんじゃろうが!)』
『因みに、幾つのスキルを付与しようとしたのさ』
『んっ?そうさなぁ…幾つであったかのう?百や二百では無かったとは思うが……あだっ!』
『この幼女が……二度とそのような馬鹿真似をしてはなりません。…つぎヤッたら私が殺すぞ……分かりましたか?』
『ヒッ⁉ もっ、もちろん、わかっておるのじゃ!』
『にしても、上手いことやるもんだよね。まさか先に加護を付与してから攫うなんてね。でも、ああやると地球人の枠から外れちゃうんだね……今迄では認識出来てなかったから判らなかったよ』
『えぇ…忌々しい事ですが。それに、今回の相手はどうやらあちらの世界で理を司っているそれなりに古く高位の神の様ですし、私達の様な新興の神とはそもそも自力が違うのでしょう、見破るのは難しいですね。せめて、私達が司る異世界転生や転移であるなら、幾ら古い理の神のやる事であっても問題無く介入できるのですが…』
『まぁ…その転生や転移の定義が地球人に限定されておるからのぉ…』
『えぇ…でも一応…外から来る分に関してはその定義からは外れていて、権限もあるのですが…そっちに関してはSF由来の神が対応するとの事で、私も誕生してから一度もその案件は担当したことが無いのが実状です』
『ほう…そうなのか、しかし、それはそれで面白そうじゃな』
『あのさぁ女神、ちょっといい?その辺の話も大事なんだけど、今回さぁ、何故か付与が何時もより調子良く出来なかった? お陰でそこの幼女ほどじゃ無いけど、僕も今迄よりも強い能力を付与できちゃったしね。それに、今気づいたんだけど、何か僕等って、此処に来る前より明らかに力が増してない?…これって…なんでか分かる? 』
『儂か? 儂は能力を使う事自体初めてじゃからのぅ…よぅ分らんわい』
『…………ンッ!…それは、端的に言うと、あの人が倒した相手の神の眷属の力が私達に吸収された事の結果ですね。今迄の私なら気付け無かったでしょうけど、力が吸収された事と神格が上がったのもあって眷属から問題の神の情報を多少なりとも読み取れたお陰で、断片的にでも現場で何があったのか見返る事ができて解った事ですが…』
『へぇ〜、計らずもレベルアップしちゃったって事? 彼には感謝だね』
『うむ、そうじゃなっ』
『願わくば、幸せに生き抜いて欲しいものです……そして、欲を言えば彼には何とか此方に帰還して貰って、いい感じに異世界転生を現世間にアピールして貰えば…』
『儂等の神格も鰻登り…という事じゃな!』
『フフン…もしかしたらそんな未来も有るかもと、僕と能力を経由して彼と此方に薄い経路を繋いでおいたから、転移系の能力でも習得すれば座標として選択出来るようになる……と思うよ』
『『オオッ』…ん?! 思うじゃと?』
『うん、なにせ物凄く薄い繋がりだからね…だから、首尾良く彼が転移系の能力を得たとしても、余程習得度を上げないと候補にも挙がらないんじゃないかな?だからといって余り濃く繋ぐと、今度は転生にどんな影響が出るか解らないよ。最悪、身体が寿命を迎える迄に魂が定着せず自我が目覚めないかも知れないし。』
『ほほぅ…勉強になるのぉ』
『フフッ、何にせよもう賽は投げられたのです。後は、彼がどう生きるかに任せましょう』
その言葉を最後に、男が消えた現場を見下ろしていた三人の神はその姿を消したのだった…