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【3月1日発売】ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった  作者: 昼行燈


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59.鯉のぼり


 ここは御影アカリの家の屋敷であった。

 この前、アカリの屋敷へ出向いたアオは、すっかりアカリ家の鯉を気に入ってしまい、事あるごとに遊びに来ていたのだ。


 アカリ本人からも池配信の許可が下り、別にそれくらいなら構わないと配信を許してくれた。


 だが、何度も『本当に池の配信するの? ねぇ、本当に池?』と確認をされたのは言うまでもない。


【池を見る配信】


 そのタイトルから始まった配信の画面に、アオの姿はない。 

 代わりに、優しそうな中年男性、細りとしている割りには筋肉質な冒険者がいた。

 伝説とも呼べるその配信の始まりは、榊原カツからだった。


「こんにちは、榊原カツです。今回はアオの配信なんだけど、一応俺が保護者として出てるんだ」


”保護者は必須”

”アオ単体の配信は不安だからカツさんが居てくれるの嬉しいw”

”ソラが保護者だったら収集付かなくなりそう”

”アオソラ配信って名前になりそうだな”

”青空、みたいなね”


「そこで今回は御影アカリさんのお家にある池を観察しようということになってね……」


”どういうことwww?”

”え……将軍の家!?”

”御影アカリの家の池で配信すんのかwww”

”場所wwwwwwww”

”なんで人んちの池を観察配信すんだよwww”

”なんの配信だwwww”


「でも、鯉が結構立派なんだよ~。日本錦鯉っていって、緋紋斑点が綺麗でさぁ、庭園も枯山水とかもあって、大層良い庭園なんだ。それにこういうお庭は数少ないと思うから、見ても損はないと思うよ」


 アオに代わって、カツさんが説明をしていく。


「日本の庭園って、あまり日本人でも興味がない人が多いんだけど、日本を代表する一つでもあると思うんだ。特に海外との違いで有名だよね」


 日本と海外の庭の違いについて説明していく。

 若者ですらあまり知らないようなことを、おじさん口調で続けていった。


「海外で有名な庭といえば、幾何学式庭園だけど、あっちって不変や変わらない完成された庭が美しいって言われているんだよね。逆に日本の庭園は未完成が美しいって言われていて、四季に合わせて庭が変化していく。自然と共に生きる日本人らしさを表現していて素敵だよね」


 屋敷の縁側を歩きながら、御影アカリの家の庭を紹介しつつ、面白知識も披露していくカツにコメントが感心する。


”カツさん詳しっ!!”

”流石カツさん”

”なるほどなぁ……”

”そういう観点で庭を見たことはなかったかも”

”言われて分かる庭の美しさ”


「庭って一言で言っても、色々とあるからね。少しでもこういう機会で知ってもらえたら俺は嬉しいよ~」


 カツが微笑んだ。

 カツの熱狂的なファンであれば、その笑顔にイチコロだろう。


”アオはもしかしてこれを狙っていたのか……?”

”俺たちに庭の美しさを伝えようと……?”

”絶対違くて草”

”アオの配信であってカツの配信ではないぞw”

”これもはやカツの配信じゃねえかwww”

”日本庭園を紹介しよう、とかいうテレビ番組でありそうな内容で草”

”テレビだったら絶対に見てるな”

”ここで『名店のお団子を食べます』とか食レポ始まりそう”


 そうして、カツの足が止まる。

 

「はい、そして池です」


”池だな”

”池”

”アオの池”


「アオの池ではないですね……」


”アオの池ではねえなw”

”アオの池じゃないだろwww”


 配信の画面にはアオが映っておらず、ただ茫然と池が配信されている。


”本当にただの池配信が始まったwww”

”何もないwww”

”たまに鯉が映るくらい……? なんだこれw”


 数秒、数分と時だけが過ぎていく。


”でも少し安心したかも”

”池配信だからな、のんびりした配信で、ある意味需要あるだろ”

”これでたまにアオが出てくるって感じなのかな”

”あ~、ししおどし良い音するな”

”高級庭園”

”まともそうな配信で良かった”


 各々がコメントしていく中、徐々に異変は起こり始める。


”なんか、池の中でプクプク泡でてない?”

”鯉が呼吸してるんじゃね”

”それだと思うけど”


 そのプクプクとした泡は次第に大きく成り始め、正体を現す。


”!?”

”!?”

”!?”


「鯉って良いよね」


 アオが池の中から顔を出した。

 顔以外は全身鯉の姿をした、アオだった。

 全身は鯉のスーツを着ており、顔だけ人の形をしていた。


 その姿はまるで人面魚のようであった。


「だから僕も鯉になろうと思う。アカリからもちゃんと許可貰った。僕は偉い」


 鯉に全くの影響を出さず、池も汚さない完璧な配慮をアオは行っていた。


”人面魚!?”

”ふぁっ!?”

”え!?”


 それを見ていたカツが素っ頓狂な声を出した。


「え……え? あ、うん……え? あれ……?」

「サクヤに作ってもらった。お手製、人面魚スーツ」


”何言ってんだwww”

”な、なんだこいつ!?www”

”なんだこいつ鯉を全身で体現してきたwww”

”人面魚ならぬ人面アオが出てきたぞ!?”

”え、あれ、なんか急に混乱してきた”

”衝撃映像じゃねえかwwwwwww”


「池に行った僕は、鯉に恋した……ふふっ」


”真顔で言うなwww”

”無表情がwww”

”無表情だからやばすぎるwww”

”何考えて泳いでんだよwwwwww”

”あの銀髪の子に何作らせてんだよwww”


「……」


”何か言えwww”

”喋れwww”


「ぴよぴよ~」


”それはヒヨコだ!”

”何も間違ってませんが? みたいな顔するなwww”

”全部間違ってんだよwww”

”ドヤ顔すんなwww”

”鯉の要素ねえじゃねえかよwww”

”そもそも鯉鳴かねえよwww”


 配信用ドローンから背を向け、尾ひれを上手に動かして泳ぎ出す。


「僕は鯉。食べちゃダメ」


 そうして池中へと潜って行った。


 ただ一人残されたカツは、ぽかんと現状を理解できずにいた。


”ダメだwww”

”自由すぎるこいつwww”

”なんだよこの配信wwwwww”

”ただの池配信じゃねえw”


 カツがぼそりと呟いた。


「なにこれ……」




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