57.【グラタヌキの面白雑学】
その日は、初のグラビト配信のお披露目会であった。
サクヤがスタジオを借りて、可愛い背景を用意する。
子どもや大人が見ても楽しめる。ダンジョン配信以外からの視聴者層も獲得しようというのが、サクヤの大きな狙いであった。
「~グラビトの【グラタヌキの面白雑学】~」
タイトルコールが鳴り、配信が始まる。
白衣を身に纏うグラビトが映し出される。
”可愛い”
”可愛い”
”もふりたい”
視聴者の数も、ソラと比べると少なく感じるかもしれないが、それでも数十万人は見に来てくれている。
好奇心で観に来ている者が大半であろう。
「…………可愛い言うな」
ぷいっとグラビトが視線を逸らし、椅子に座っているセンが目を丸くした。
「なんじゃ、もう始まったのか? 古狸」
「そうだ。あと、私は古狸ではない。グラビトという名前がある」
「うむ! ではグラビト……じゃが、ここでは先生というのが良いのかの」
一応、設定上ではグラビトが教師役とし、センが生徒である。
”もふもふとロリ天狗が喋ってる”
”これは現実か? ここが天国じゃないのか?”
”可愛い”
”可愛いしかコメントしてない奴、語彙力死んでるな”
「ふんっ、私も目的がなければ、このような配信はしていないぞ」
”目的って?”
”何か理由があるんだ”
”どういうこと?”
「私は可愛いのではない! 賢いのだ! それを視聴者に知らしめてやろうという訳だ!」
”可愛いwww”
”理由が既に可愛い”
センが頷くように笑った。
「グラビト先生は可愛いぞ!」
「お前まで可愛い言うな! ……まぁ良い。授業を始めるぞ」
グラビトが重力魔法を使い、授業用に持ち出した小さな黒い球体を浮かせて見せた。
「今日は魔法の説明からしようではないか」
”グラビトが魔法を解説してくれるの!?”
”えっ、それって無茶苦茶凄くない?”
”魔法ってあんまり詳しくないから気になるわ
「まずは私の魔法についてだ。重力を司っているが、正確には重力ではない。いわば、点による攻撃を行っている」
「点? 儂のとは大きく違うんじゃな~」
「お前は妖怪だからな。魔力がないのでは、使い方も異なるだろう。だが、勉強にはなるはずだ」
グラビトの重力魔法は、人間の中で扱える者はだれ一人としていない。
いわば、魔物やボスのみ許された魔法であった。
「私が重力魔法を使う際、まず位置を指定する。このようにな」
球体を移動し、センの頭上にピタリッと置いた。
「センの頭上を中心とし、重力を発動させる。引き寄せるか反発させることもできる。私の意志次第だ。ソラと戦った際に見せたのは強力な反発で、圧し潰すつもりだった。ヴァルの奴めは魔法耐性はあっても、全身を圧し潰すような反発までは抑えきれなかったのだろうな」
「言ってることが難しいぞ!」
センが手をあげてそう答えた。
「ふむ……つまりは、柔らかいボールがあるとして、一点に集中して攻撃すればへこみはするが割れない。しかし、ボール全体を包み込むように圧力を加えれば、身動きは取れないだろう?」
”あ~、だからグラビトの魔法で倒れていたのか”
”なるほどなぁ”
”おもろ”
「ソラはそれを見抜いたのかは知らんが、自身の上に呪層壁を展開して私からの干渉を防いだ……という訳だな」
「ほえ~」
”草”
”センが素直で可愛いw”
”ほえ~じゃねえw”
「なぁ、ちなみにソラの術式とやらはどうなんじゃ? アイツの解説はできるのか?」
「……あれは別物過ぎて、話にならん」
「儂ら妖怪も全く原理が分からなくて、奴ら陰陽師には手を焼いたものじゃ。グラビト先生の解説があれば、奴の弱点を見つけられるかもしれん!」
「ソラのは……なんというか、そうだな。私から言わせれば、未知過ぎるという訳だな」
”ソラは魔法使えないって言ってるもんなぁ”
”ソラの術式は特別過ぎて、マジで誰もよく分かってない”
”ソラ本人も分かってないから面白い”
”草”
「ソラの術式による攻撃は、私たちによっては魔法と同義だ。だが、致命的に似ていて似ていないところがある。それは性質だ」
グラビトが面白い話を続けてみせた。
ソラやグラビトたちは、各々は自覚をしていないが、自分たちの本来持っている知識が研究者たちでさえ知らない物ばかりであったからだ。
「本来、魔法というものは一貫性だ。例えばサンダーだな」
指先からビリビリと小さな雷を出す。
「ここに水魔法を加える……などということはできない。誰かと魔法を掛け合わせれば可能だが」
”あっ! 確かに!”
”言われて気付いた。なんで気付かなかったんだろう……”
”そういえばソラって複数、何かと何かを掛け合わせてた!!”
”言われてみれば……!”
「ソラは雷に糸を纏わせ、さらには呪層壁を同時に展開していた。複合術式、とソラは呼んでおるが……あれは私の頭を持ってしてもよく分からないのだ。一体どんな頭をしていたら、あれほど複雑な命令文を組めるんだか……」
”そう考えたら、ソラって凄くね?”
”頭平安狂だから不思議じゃない”
センが首を傾げた。
「なんじゃ? そんな特別なことか?」
”え?”
”え……”
”セン何か知ってるの?”
「うむ! あの戦い方は、帝直属部隊から独立し、かの五星明會の一人となった安倍晴明と同じ戦い方じゃ!」
「……なんだそれは」
”なにそれ……!?”
”安倍晴明!?”
”ガチの陰陽師の名前でてきた”
”ごせい、めいかい?”
”五星明會なんて聞いたことない”
「ありゃ? 有名じゃあらんのか? 冗談はやめい~、最強の陰陽師五人衆のことじゃぞ。それぞれの流派の開祖とも言われておろうて」
コメントが僅かに静まり返る。
誰も知らない話題で、それはすでに失われた知識であった。
「でも、よくよく思い出してみると、ソラの奴の戦い方は古臭かったのぉ。ありゃ、一番戦いが盛んだった頃よりももっと前の戦い方みたいじゃった。まるで陰陽師という名が出来たばかりの頃のような……まっ、儂はその頃に産まれておらんが!」
カッカッカ! とセンが快活に笑う。
”センもっと聞かせて聞かせて!”
”すげえ興味出る”
”グラビトの話も面白いけど、こっちも面白いぞ!?”
「本当か!? 儂の話は面白いか!?」
”面白い!”
”陰陽師の話ってソラだとふんわりしてるから嬉しいかも”
”今までこっち系統の話してくれる奴いないから新鮮”
センの眼がキラキラとしていく。
「そ、そうか! 陰陽師は嫌いじゃが、お主らが知りたいのならもっと話してやろうぞ!」
そうして数分も立たないうちに視聴者の数も伸びて行き、動画サイトの急上昇ランキング1位になる。
「あっ……儂ばかりが話しても良いのか? グラビト先生」
「私は構わん。センを視聴者に知ってもらうことも、私の役目だろうからな」
「……ッ! うむ!」
笑顔でセンが軽く話し始める。
「確か、ソラの戦い方は……水命派、あれ? 泥沼派? あれ?」
”センちゃん大丈夫か!?”
”急におばあちゃんになった”
”可愛いwww”
「うーん……すまんのぉ、視聴者たち。いかんせん、記憶が千年前でな。あまり覚えておらんのじゃ」
”大丈夫大丈夫!”
”ゆっくり思い出していこ”
”可愛いからヨシ!”
「優しいの! うむ! 思い出す!」
しかし、その後のセンは一向に思い出すことができず、五星明會という名前がだけが視聴者たちの印象に強く残った。
グラビトは今回のことを受け、配信終了間際に口を開いた。
「うむ……そうだな。たまにセンの話をする場を設けて、私だけの知識披露会ではなく、お前の知識も話してみないか?」
「え!? 良いのか!?」
「好きなように話せ。視聴者もそれを望んでいそうだしな」
”センちゃんともっと話したい!”
”やったー!”
”陰陽師系統だけじゃなくて、妖怪も聞きたい”
「うむ! 儂もお主らのこと好きになったぞ! もっと話そうぞ!」
ロリ天狗が満面の笑みで、両手を掲げた。
「グラビト先生の威嚇の真似じゃ!」
”可愛い”
”可愛い”
”可愛い”
”可愛い”
「コメントが壊れた!」
さきほど、配信陰陽師第一巻が発売されました。
電子書籍の特典やアニメイトやメロンブックス限定の特典SSなどもございます。
また、コミカライズの情報も記載しております。
まだ内容は公開されておりませんので、あまり触れることはできませんが、
本著でもある私が自信をもって堂々と胸を張って素晴らしいと言えるコミカライズです。
そちらも期待していただきつつ、ファンの皆様と
【ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった】
ご一緒に可愛いソラくんを盛り上げていくことができたら幸いです。
何卒、よろしくお願いします。
【Amazonリンク】
http://amazon.co.jp/dp/4798634565





