※~期間限定~発売直前【重版決定!!】の記念SS
この度、多くの熱烈なファン読者の皆さんが予約していただいたこともあり
なんと! 発売前に重版が決定しました~!!
https://x.com/HJbunko/status/1762371994723516538?s=20
ありがとうございます!ありがとうございます!
そこで今回は特別に本編以外でのソラくんと晴明をメインとした記念SSをご用意しました。
本編にあまり関係はありませんが、応援して下さって多く予約してくれたみなさんへのお礼を込めて、用意させていただきました。
期間限定公開とし、発売後からでもしらばくは残っています。
あとは時期を見てカクヨムの近況ノートに移動させます。
※最新話までのネタバレ有り(晴明が登場します)
平安時代。
朝日に室内が照らされ、平和な朝の始まりを告げる鳥の鳴き声に、ソラが薄っすらと目を開けた。
まだ昼前である。休日の朝に、特にやることもないのならば起きる必要もないだろう。
そう考えたのち、「……もうひと眠り」と二度寝を決め込む。
すると、勢いよく襖が開いた。
「起きてください!!」
ビクッ、とソラがその声に驚き、布団から飛び上がる。
「な、なんだ……晴明か。ビックリさせないでよ~」
ソラがむーっと頬を膨らませると、ギロリと鋭い視線を向けられる。
「朝餉の用意はとっくにできています。二度寝していては、私の料理が冷めてしまいますでしょう」
「ん~……」
ソラはやっぱりもう一度寝たいと思うも、晴明の手作り料理を考えると、少しばかり気が引けたようだった。
「ソラマメ豆腐ある?」
「あります」
それから朝餉が用意してある部屋へ向かおうとする。
ソラは「ふわぁ~」と歩きながら眼をショボショボとさせ、時折こくりと頷くように眠りかける。
晴明はソラが転んだり、壁にぶつからないように手を繋いでいた。
「ほら、ちゃんと歩いてください」
「あい……」
こうしなければ、ソラは時折廊下で寝ていることもあったりするのだ。
酷い時は壁に衝突して寝ていたりもする。
なんとか朝餉の前までソラを連れてきて、座らせる。
「いただきます」
「いただきます……」
黙々と食事する晴明に対し、コク、コク……と箸を持ったまま眠りかけているソラ。
そそくさと自分の分を晴明が食べ終わると、ソラの隣に座った。
「ほら、あーんです」
「あーん……」
むにゃむにゃとした顔でご飯を咀嚼しているソラに、晴明は次第に思う。
(この人……私がいなかったら、どうするんだろう)
まるで雷に打たれたように、その事実が徐々に不安に思えてくる。
(というか……私が来るまでどんな生活してたんだろう? いや、本当にどんな生活してたんだ!?)
ソラの現状を知っている晴明は、本当に分からなさそうに眼を泳がせた。
「あー……あれ。晴明~」
「はいはい。あーん」
ソラの生活能力は、地獄の閻魔ですら逃げるほど皆無である。
晴明は、ソラが脱ぎっ放しの服や家の掃除、食事まで用意している。
「あの……私がいなかったら、どう生活するつもりなんですか?」
「え~! 晴明がいない生活なんて考えられないよ!」
その言葉で、晴明の手が止まる。
「私の、いない生活は……考えられない……」
晴明が顔を俯かせ、表情が読み取られないようにしているようだった。
「そう、ですか。別に嬉しくありませんね」
(う…………嬉しい~!! やっぱり先輩は私がいないとダメなんだ……!)
ソラマメ豆腐を手に取り、ソラへあーんする。
「はい、ソラマメ豆腐です」
「やったー!」
ソラの顔を見るたびに、晴明は自然と頬が緩んでいたのは言うまでもない。
*
朝餉の後、晴明は届いている仕事について説明を始めた。
「休み明けに入っている仕事ですが、少し遠旅になるかもしれません。紙人形の補充と、術式が刻まれた道具を持ち出すことを忘れないでくださいね」
「はーい」
「前の戦闘で破損した第十術式と、第八術式の修理は終わっていますが……まだ完璧ではありません。やっぱり先輩の技量がないと、調整は難しいですね」
「晴明も早く、術式の調整できるようになろうね」
「私が早く一人前になってしまったら、この屋敷からいなくなりますよ。早く一人前になりたいですが」
ソラが静かに顎に手を置いた。
「……それは困る。晴明が居なくなったら、俺白骨遺体で見つかるよ」
「先輩、どんだけ生活に自信ないんですか」
はぁ、とため息を漏らす。
晴明の目の前にいる人物は、紛れもなく朝廷から認められた正規の陰陽師だ。
「先輩は戦闘や祓いに関して、強者の多い陰陽師の中でも最上位、いや随一……だとは確信しているのですが……先輩のこういうところが強さに繋がっているのでしょうか。不思議な生態です」
「あっ、今日は日向ぼっこにちょうど良さそうな天気だよ~」とソラが縁側へ向かっていく。
「まだ話の途中です!」
「ふげっ!」
晴明がソラの首根っこを掴む。
しゅん、とソラが下を向いた。
「今日お休み……」
「仕事の準備を先に終えた方が、当日にバタバタしなくて済むんです」
晴明は時間に厳しく、さらには慌ただしく準備することなどは嫌っていた。
「そういえば先輩、最近ずっとどこへ出かけていたんですか?」
「人助けをしてたの」
晴明が半眼になる。
「勝手に仕事を受けてたら、ソラマメ豆腐の店主に護符を与えた時みたいに、また朝廷から怒られますよ」
「いやでも……まぁ、その……えっと」
反論ができない、と悟るとソラがふにゃっとした顔をする。
「すみません……」
「別に良いです。ただ、ちゃんと私にも教えてください」
口を尖らせ、晴明が呟いた。
「仲間外れは……嫌です」
その様子にソラが気付き、少し驚く。
そうしてニへッとソラが笑う。
「晴明は可愛いね~。子どもらしくて俺は好きだよ」
「子どもじゃありません!」
いくら否定しようが、ソラから見ればまだまだ子どもであった。
「何があったのか、聞きたい?」
「勿体ぶらないでください。私は先輩のすべてを知る権利があります」
「アハハ……まぁ、その始まりはね─────」
電子版特典SSとちょっと絡んでます。
実は小説の重版は作家人生として初めての経験で、非常に感慨深いです。
それをソラくんとこの作品を支えてくれるファンの皆様と迎えられたことを大変嬉しく思います!
発売まで残り三日ほど! まだまだ予約をしております!
何卒、お願い致します……!
【HJ文庫】
ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった
【Amazon】
https://x.gd/vVdYG
あと書籍ではこの二人をもっと掘り下げていけたらな、とか勝手に思ってます。





