48.ソラVS天狗
神隠しから抜け出してきた俺は、アオの救援に来ていた。
どうやらアオの片腕は、天狗に腕を切断されてしまったらしい。
「アオ、大丈夫?」
「僕の腕、取れちゃった。ソラー、腕治してー」
「いいよ」
”言い方が軽い!”
”え、治せるの……?”
”いやいやw 無理でしょw”
”ソラならいけるかもしれんけど……”
”どうやるの?”
ふむ……くっつけばすぐに治りそうだな。
「小童、どうやって神隠しから出てきた?」
「神隠しは空間を切り取ってループさせているだけでしょ? なら、水命糸で空間を繋げれば出られるよね」
「なんじゃ、儂らの能力を知っておったか」
「天狗の相手は初めてじゃなくてね」
千年天狗は「ほーう」と嬉しげにへ視線を向けた。
そそくさと、俺はアオの腕を繋げるための準備をする。
「カッカッカ! その戦い方にその実力────」
「待って、今集中してるから」
「……」
”天狗が黙ったwwwwww”
”なんで素直に聞くんだよwww”
”確かに面白いけど、ソラの術式を見ようとしてる可能性がある……?”
”なるほど……!”
”意外と賢いのか!?”
「……小童、終わったか?」
「もうちょっと」
アオの切断された腕をくっ付け、接続部を手で触りながら俺は心の中で術式を唱える。
「よし、くっついた」
「おぉ~! 治った~!」
”ふぁ!?”
”魔法か!?”
”どうやったんだ……?”
コメントと同じように、天狗も驚いた面持ちをしていた。
「おい……! 小童、今、何をした……?」
俺は人差し指を立て、「秘密」と微笑んだ。
先ほどの言葉を、天狗が続けた。
「ふんっ教えぬなら構わぬ。その戦い方、陰陽師の中でも特殊中の特殊、晴明家の者だな?」
「晴明家……? 俺、血筋の者じゃないよ」
ちゃんと調べたけど、俺もこの体も別に血筋じゃないし。
「冗談はつまらぬぞ。いくら千年前とはいえ、最強の陰陽師の一人である晴明の戦い方を知らぬはずがあるまい」
「いや、本当に知らないんだけど……」
俺が冗談で言っていないことを理解したのか、千年天狗が眉を顰める。
「……変な奴じゃの」
「変じゃないよ」
「変じゃろ」
”なんか始まったぞ”
”草”
”敵からも変って言われてて草なんだ”
「一応、言っておきたいんだけど、人がいないところで静かに暮らしてくれない? 別に俺、妖怪だからって祓うタイプじゃないし」
「そう言った陰陽師が他にもおった」
「その人はどうなったの?」
ニヒヒッ、と天狗が笑う。
「半殺しじゃ」
「……そっか」
話し合いは決裂。
陰陽師と妖怪。元よりお互いが出会えば、そこにあるのは戦いのみ。
出会ったら殺し合わなければならない。それが俺は嫌いだった。
天狗が五枚羽の扇を強く握りしめる。
「儂ら妖怪は、陰陽師に多くの同胞を殺された」
俺は腕を組んで頷く。
「その敵討ちはごもっとも」
「千年も封印してきた陰陽師を、儂は殺したいほど恨んでおるからのぉ……」
「千年も封印されてたら、それもそうだ」
”全部認めたぞ!?”
”ソラ!?”
”ここは否定して、『それは違う!』って言うんじゃないのか!?”
「この天狗は間違ってないと思いますよ」
人だって、嫌なことをされたら忘れないものだ。
それは魔物だろうと妖怪だろうと何一つ変わらない。
天狗が扇を大きく振り下ろす。
「儂は陰陽師を殺し、この世に再び妖怪の世界を築こうぞ!」
強く風が吹いた。
服がバサバサと音を立て、髪が後ろになびかれる。
その強風でドローンが揺れた。
”うわぁぁぁっ!?”
”風つっっっよ!”
”音がすげえ……”
「儂の名は千年天狗!! 名を聞こう、陰陽師!」
俺は腕を組んだまま名を告げる。
「上野ソラ」
それを合図にするかのように、千年天狗が突っ込んで来る。
なぜ天狗がダンジョンに居るのか。
千年前に封印されていた理由はなんなのか。
知りたい事は多くある。
”ソラが動かないぞ……?”
”何してるんだ?”
”ソラ、相手突っ込んできてるよ!?”
”動け! ソラ!”
”え、避けないつもりなの!?”
俺は片手で印を組む。
「カッカッカ! 何をしようと無駄じゃぞ!」
呪力を体内で循環させる。
先ほど、アオの腕を繋げるために使った術式を使う。
御影の家で見つけ、サクヤに材料を買ってもらって修理し、今回のために持ってきた術式だ。
妖怪は呪力を目視することができる。
俺は呪力阻害を使って、その眼を潰していた。
だからこそ、天狗は油断して突っ込んできた。
しかし、その阻害はもういらないだろう?
「ッ!? なんじゃ、その呪力量は……!?」
指先を天狗へ向ける。
「────第九術式展開」





