41.【side大神リカ】
Pooverの事務所で、大神リカはマネージャーと会話をしていた
「リカさん、ソラくんの配信って毎回新しいことが起きてませんか?」
「まぁ、ソラさんですから……凄いのは今に始まったことじゃありませんけど」
ソラさんの配信は、もはやそれで全てを片付けられるような気がしていた。
だって、もはや常識から外れていることが多くて……コラボしても思ったことだけど、ソラさんといると、自分の常識がいつも変わってしまう。
今回の配信もそうだ。
アカリちゃんと配信を始めて、突然現れたのは妖怪。
「座敷童ちゃん……可愛かったなぁ」
しかものじゃロリっ子なんて……可愛すぎる!
弟とかも、小さい頃凄く可愛かったし……私って子どもが結構好きかもしれないなぁ。
アカリちゃんの家に住んでるのなら、遊びに行きたいな。
連絡先は交換してあるし……後で連絡してみよ。
スマホを弄っていると、マネージャーが思い出したように耳打ちしてくる。
「Pooverのトップによれば、今度は御影アカリちゃんを誘ってみないかって話が出てるみたいですよ」
「え、アカリちゃんを?」
「あっ、知り合いだったんですか?」
「ソラさん関連でちょっと」
今、Pooverの勢いは維持できているものの、ダンジョン配信事務『陰陽』の勢いが強すぎていつ追い抜かされてもおかしくなかったりする。
なんとかPooverの勢いが保てているのは、ソラさんの事務所は、ソラさんとカツさんの二人しかいないからだ。
若手最強冒険者と名高い五人のうち、その一人である御影アカリ。
その実力は深層に潜れるほどの強さがあり、たった一人でしか活動しないことから、将軍と二つ名が付く程の一匹狼だ。
「あっ、ソラさんが入ったことで今は若手最強候補は六人か」
正直、私は間近でソラさんの活躍を見てきた。だから断言できるけど、ソラさんは圧倒的に突き抜けている。
あれはもはや、若手の範疇に入る実力ではない。
お陰で、私のような最近やっと下層に潜れるようになった若手配信者が凄くない、みたいな風潮になっている。
ソラさんと比べられたら、そりゃそうなっちゃうよね~……でも、ソラさんが凄いのも事実だし。
ソラさんの凄さを認めて、私も追い付けるように頑張ろう! って思わなきゃ。
ふんっふんっ! と鼻を鳴らす。
「リカさん、最近なんか変わりましたね」
「もっと明るく、素敵にならないと視聴者の皆さんに応援してもらえないですからね!」
ソラさんが大成功した秘訣に、ようやく気付いて来たのだ。
何も、特別な力や戦闘だけがソラさんの全てじゃない。
ソラさんの凄さは、素を前面に出していることだ。
「あっ、もしかしてリカさんもソラマメみたいなあだ名考えちゃったり?」
「はぁ~? 何言ってるんですか? ソラさんはソラさんだから良いんです。後追いしてる配信者もたくさんいますけど、到底ソラさんに追い付けてませんし」
事実、私は毎日他の配信者も追っているが、ソラさんの後追いを始める者が多い。
インゲン豆さんの影響もあるだろうけど、ナス太郎とか、トウモロコシマンといった配信者が出てきている。
ナス太郎に関しては、ナス汁などという液体をぶちまける配信をしていたり、トウモロコシマンはポップコーンでダンジョンを攻略するという狂気っぷり。
全体的に、ソラさんの影響かダンジョン配信者界隈が狂い始めてきてるんだよね……その筆頭はソラさんだけど。
マネージャーが、指を突き合わせながら「良い案だと思ったんだけどなぁ~」と落ち込む。
どこがいい案なんですか。顔を洗って出直してきてください。
「じゃあ、リカさんは何か案あるんですか?」
「私は……魔法を覚えます。魔法です!」
「魔法って、才能がないとそもそも使えない奴ですよね」
「一応、才能はちょっとあるんです。私が苦手なだけで……」
「じゃあ、魔法をメインに使う配信者とかに、裏で使い方を教えてもらったらどうでしょう?」
その案に、リカが顔をあげた。
「それ良いですね!」





