表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/63

33.術式の修理/御影の家


 その日はダンジョン配信とかではなく、雑談配信であった。

 ダンジョンに潜ることも考えたのだが、それよりも先にやるべきことを済ませようと思ったのだ。


 その過程を配信するべく、今日は雑談として枠を取っている。


 今回はサクヤのトラックを一部使って、作業場として配信中だ。

 ボウボウ、と軽く炎が手から出る。


「うーん……これは参ったな」

 

”マジックみたい”

”第七術式の炎っぽい”

”これをどうすんの?”

”アオがジーっと眺めてて草なんだ”


「アオとの戦いで、第七術式を一時的に壊したと思うんですけど……それで完全に術式がイカレちゃって」


 少し前、ダンジョン内部でアオとの戦闘時、『一緒に印を組もうか』と言って、第七術式を一時的に使えないようにした。だがその後、俺は無理やり第七術式を使って、完璧に壊してしまったのだ。


「流石に無茶苦茶な使い方したからなぁ……」


 腕があるだけ、まだマシなのかもしれない。


”術式が壊れたらどうなんの?”

”じゃあもう使えないの?”


「それを今から直す配信ですね~」


”……?”

”え、直せるの……?”

”そんな機械を直すみたいにw”

”ガチ?”


 それを聞いていたアオも驚く。


「それ、知らない」

「アハハ、本当だよ。ほらアオ、おいで。教えてあげるから」


 アオは俺と同じで、多くの術式が使える。

 知識の一部を引き継いではいるようだが、全てではないようで、分からないことも多くあるそうだ。


 教えられるところは俺が教えて、常識とかはカツさんに一任しよう。


”ソラが増えた”

”可愛いなこいつらw”


「術式の修理は、すべての陰陽師ができることじゃないよ」


 俺は分かりやすいように、視聴者にも伝えていく。


「そもそも、第五術式までしか使えない人が殆どだったんだ。それだけ使えれば十分だけど」


 基本の形、というのが非常に分かりやすいかな。

 そこから先の第六術式や第七術式と、自分で派生を作っていくことが多かった。


”ほえ~”

”面白いな”

”自己流になってくってことか”


「そうそう。それを見て、同じ術式が欲しければ頼み込んで教えてもらったり、一緒に作ったりする」


 俺は壊れた第七術式を摘出する。


「第四術式展開……呪式浮世」


 俺の腕から青色の文字列が出て、目の前に浮かぶ。

 アオが声を漏らす。 


「おぉ……!」

「綺麗だよね」


 術式の色は、人によって異なる。

 かなり前にも説明したが、医術に向いている陰陽師もいたのだ。


 そういう人間は赤色。呪詛や人を呪うことに長けた陰陽師は紫色。

 すべてに長けた人間は複雑な色を持っている。


 そして、一番平凡な色が青色だ。


「僕も、僕も出したい」

「えぇ? 良いけど……」


 アオにも同じように第七術式を摘出する。

 

「アオは、自分の術式が欲しい?」

「……! いいの?」

「もちろん」


”アオ可愛いw”

”ソラがすげえお兄ちゃんやってるw”

”こういうの結構好き”

”何か兄弟愛見てる気分だわ”

”ぽかぽかする”


 俺としては、ついでに術式を改造するような感覚だ。

 大した労力でもないし、アオが自分を出せるようにしていくのも大事だろう。


「僕、アレが欲しい。時間を遅くする系」

「えっ……なんで」

「テレビ、もっと見れる」


 あっ、そういうこと。


「まぁ出来なくはないけど……」


”え、出来るの……?”

”ソラ、それガチ?”

”冗談だろ……?”


「出来ますよ」


 アオがパチパチと拍手する。


「ソラ、凄い」

「アハハ……まぁ、とりあえず術式直しますね」


 術式の修理は慣れている。過去に何度も壊してるし……今回のような例は初めてだが。

 第四術式で術式を摘出し、浮かんでいる文字列を調整する。


 必要なら書き換えたり、作り変えたりもする。

 

 今回の場合は、壊れている文字を取り出し、新しく文字を入力していく。


 呪力で文字を刻み、術式を修復。

 

 片手でアオの術式も改造していく。


「こことここの文字を入れ替えて……」


”はっやwww”

”なんかむっちゃ眼を動かしてるwww”

”すげえなwww”

”何してるか分からんwww”

”ハッカーみたいな動きしとるなw”


 数分もすれば、完全に術式の修理が終わる。

 

「ほい、アオ」


 浮いている術式をアオの元へ戻す。


「ありがとう、ソラ」


 それだけ言うと、アオが「わ~」と外へ駆けだして行く。

 さっそく新しく得た術式を使いたいようだ。


「可愛いよなぁ……あいつ」


 ついつい、幼い頃の晴明を思い出してしまう。


”お前もだぞ”

”ソラ、お兄ちゃんみたいでいいね”


「よし、俺もちゃんと術式が直ってるか確かめたいので、外に出ますね!」


 アオと同じように「わ~!」と駆け出す。


” 兄 弟 ”

”この兄弟終わりだよ”

”このお兄ちゃんもうダメです”

”アホしかいねえwww”

”素でやってんだろうなこいつwww”

”ソラとアオそっくりじゃねえかwww”


 その後、外に出た。

 アオは時間を遅くする系の術式を手に入れ、満足していた。


「これで映画がたくさん見れる」


”絶対アカン”

”ろくなことになる気がしないwww”

”なんでも吸収するからある意味怖いwww”


 俺もスメラギを参考にして作った、思い出深い術式が直ったことを確認する。


「第七術式展開……炎華」


 ボウッ、と花のように炎が広がる。

 うん、ちゃんと直ってる。


”そういえば、第七以降はフル装備って言ってたけど”

”言われてみれば、気になる”


「今は持ってないんですよね~。誰かが俺の装備を持ってるとは思うんですけど……」


”え?”

”どういうこと?”


 *


 御影アカリは、部屋でソラの配信を見ていた。


 御影一族の本家は、現代ではお祓いや悪霊退治……それに準ずる仕事をしている。

 本家がある場所は塀で囲まれた和風な家であり、東京でもそこそこの場所に建っている。


 かなり広いため、使用人も雇っているのだ。


「アカリ~! アカリ~!」

「あ~、もうママうるさい! なに!?」

「パパもママも見たわよ!? 陰陽師の人とコラボしてたわね!?」

「コラボじゃなくて、共闘」


 あれから御影アカリは、自宅に戻っていた。

 一か月の家出も、ソラの一言で帰ることにしたのだ。


 ソラから『家に戻った方がいいよ。親御さんが心配してる』と言われ、渋々帰って来たのだ。


 軽い説教をされたのち、しばらくは自宅にいるようにと言われてしまった。


(アイツに言われると嫌でも従う私がほんと悔しい……なんでなのよ)


 ぐぬぬ……とアカリが悔しがる。


「あの人とは結婚するの? ねぇ、いつ結婚するのかしら? あんなに強くてカッコいい陰陽師の人なら、アカリも満足じゃない?」

「けっ! あいつとはまだそういう関係じゃないから……! ほら、出てって!」


 慌ただしい足音が近寄って、アカリの父親が出てくる。


「妻よ! お赤飯が炊き終わったぞ!」

「まぁ! アカリちゃんも食べる?」


 怒る気力も失せたアカリが、肩の力を抜く。


「はぁ……陰陽師ってそんな大事?」


 アカリの両親が困ったような顔をする。

 さも当然だ、と言いたげだ。


「短命の呪いを解いて下さったのが、陰陽師なのよ? その恩を返さないと……」

「我が家の蔵にも、それに関する書物はたくさんあるぞ。本当だからな!」

「あっそ……蔵に平安時代のものがたくさんあるんだっけね」


 どうでもいい、と言いたげにアカリが視線を逸らす。


(陰陽師じゃなくても、別にソラみたいな人なら……)


「蔵には凄い宝物がたくさんあるんだぞ~。安倍晴明から受け継いだ物もあるらしいしな! 『これは恩人の物だから、大切に守れ』って言われてるらしいぞ!」

「なにそれ。そんな大昔の約束を守ってるとか、馬鹿じゃないの……待って。蔵……」


(ダンジョン配信事務所の陰陽の打ち上げ以来、私はソラと会ってない……てか、会う理由がない)


 でも、とアカリが考える。


(陰陽師関連の蔵があって、それを配信して欲しい的なお願いなら……理由としては十分じゃない?)


「ま、ママ……テレビでよく、開かずの金庫みたいなのやってるじゃない?」

「え? えぇ、そうね」

「それに近いこと、やってもいい?」



【とても大事なお願い】

 仕事をしながら合間で執筆をしています!

『面白い!』『楽しみ!』

そう思っていただけたら応援


作品のフォロー

評価の【★★★】


それらで大変モチベーションの向上に繋がります……!

よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダンジョン配信者を救って大バズりした転生陰陽師、うっかり超級呪物を配信したら伝説になった
3月1日発売!!
クリックすれば購入ページへ飛ぶことができます
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ