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14.東京ビアドーム


 日本でやる最後のライブは、東京ビアドームで行われていた。

 その安西ミホのライブには、数万人の観客が居る。

 

 そんな中現れた突発的なダンジョンに、国中大騒ぎであった。


 他のダンジョン配信者たちや、冒険者のところへ連絡が行き、駆け付けられる者は駆けつけて欲しい……と、政府から通知が送られる。


 ──他のダンジョン配信者。

 

「え? 安西ミホのライブにダンジョンが出来た……!? 魔物が数千体いる……!?」


”いや~……命を掛けてまで他人助けてもなぁ”

”流石に助けに行くのは馬鹿w”

”会場大混乱らしいwww”

”意気地なし”

”行けよ”


「あっそ、まぁ俺は無理だね。視聴者のみんな~、これからゴブリンと……」


 また、他の配信者たちも続く。


「ライブ中に警報なったからビビったけど、安西ミホのライブで事件かよ……大ファンだけど……どうしよ」


”安西ミホはボディーガードに、ちゃんと守られてるとは思う”

”安西ミホは生きてるだろw”

”有名人が死ぬとは思えないw”

”大歌手だしな”


「確かに。じゃあ、被害は一般人だねぇ。なら僕ちんは行かなーい」

 

”それが正しい”

”良いんじゃない。自分優先で”

”仕方なし”

”助けに行くやつ誰も居なさそ~w”


 ………

 ……

 …


「助けに行くわけないじゃーん」


”笑いながら言うなよwww”

”不謹慎系配信者は、やっぱ違うねw”


「待って。事故現場撮影できれば、バズれるかも!」


”最低www”

”クズでワロタ”

”ここの民度終わってるな……”

”初見か? 肩の力抜けよ”

”ソラの所は最高だったのに……”


「ねぇ、他の配信者の名前出さないでくれる? マジキショいわ」


 *


 一方その頃、通知を送ったダンジョン管理センターは大騒ぎであった。


「人が足りない……!」


 管理センターのモニターには、真っ赤に染まった安西ミホのライブ会場。

 魔物の群れである。


 ダンジョンの発生を察知することは、直前でなければ不可能であった。


 つまり、地震と同じである。

 

 来る直前に予測はできても、数日前からいつ、どこでまでは不可能だ。


 報告が上がって、確認された魔物はおよそ数千を超えていた。


 上層、中層、下層……もしかすれば、深層の魔物すらいるかもしれない。


 それでも、ダンジョン管理センターは諦めてはいない。


 ライブ会場には、安西ミホによって招待された深層経験者の冒険者と、最近下層に挑み始めた大神リカといったメンバーがいる。

 彼らは一般人を守るだろう。


 だが、長くは保たない。彼らはただの人だ。いくらなんでも、千を超える魔物の相手など限界がすぐに来る。


「し、室長……」

「なんだ! この忙しい時に……!」


 たどたどしい様子で、眼鏡をかけた研究者が資料を持っている。


「あの、最初に上がった魔物の数の報告なんですけど……」

「数千だろ!? 既に聞いて、政府からも発表が……」

「それが、再度調べたところ、間違ってたんです……」

「は……?」


 研究者は何度も目配せを浮かべ、声を震わせる。


「魔物は数千じゃなくて……10万でした……」

「10万も!? 最初の報告より増えすぎじゃないか!?」


 乾いた笑い声が出る。


 こちらの戦力は、ライブ会場に冒険者が数百人いるかどうか。

 

 10万なんて途方もない数字を、誰が対処できるというのだ。

 

「終わりだ……今日は日本の歴史で最も最悪な日になるぞ……」


 *


「ここが東京ビアドームね」


 ソラの配信は、同時接続者数が200万人を超えようとしていた。

 他の配信者たちが向かわない中で、誰よりも最初に向かった人物であったからだ。


”すげえ……行くかどうか即決しやがった……”

”流石ソラだわ”

”俺達のソラです”

”好き”

”他の配信者が悩んでる中で、行動できるのマジぱねえ”

”行かないって言ってる奴多すぎw”


 ライブ会場の入り口に着くと、たくさんの警察官が集まっていた。

 人がごった返す中で、怪我人を上手く誘導したり、これ以上押し倒しあわないようにしている。


”うわ……こりゃひでえ……”

”地獄みたいな光景だ”

”やっば……”

”人多すぎ~~~!”


 かなり早く着いたようで、ダンジョンが発生してから十分しか経っていない。


「えっ、ドローン付いてこれたんだ」

『ネットワークが繋がっているのなら、どこまでだって行けるぞ』

「流石」

 

 サクヤが安全な場所に居てくれることが、一番安心だ。

 数万人規模のライブだったため、警備員はかなり多かった。それが功を奏して、魔物との拮抗をなんとか保てている。


 配信者ではない冒険者も居て、警察と協力して避難をさせたり、魔物と戦っている。


「魔物を盾で押せ!」

「クソッ! 多すぎる……! いっそのこと魔法で……!」

「ダメだ魔法で攻撃するな! 一般人を巻き込んでしまう!」

「守れ! 今は避難を優先するんだ!」


 指揮系統がグチャグチャになっている。……状況が一向に見えないな。

 仕方ない。今は目の前の魔物だけでも倒すか。


 両手を構える。

 最小限の動きで、宙を舞うように動ける武器……。

 

「第一術式展開……水命糸」


 地面を蹴って駆けて行く。

 一番危なそうな、リザードマンと戦っている警察官の横に、割って入る。


 大きく飛んで、糸の輪をかけた。


「ッ!?」

「ガギャッ!?」


 糸が絡まり、リザードマンの頸が飛ぶ。


「い、一撃……!?」


”この警察官ラッキーだったなw”

”運が良い”

”リザードマンをワンパンw”


 警察官に視線を向ける。


「大丈夫です……か。げっ」

「あっ! 上野ソラ!」


 俺はこの警察官を知っていた。

 俺が大神リカを救う前日に会った、警察官の渡部さんだ。

 

『あのねぇ……君、高校生でしょ? 下層になんか行けるわけないじゃないか。大物配信者でもないんだから』


 こう言われたことを鮮明に覚えている。

 俺は傷つきやすいのだ。だから、忘れないのだ。


「あの時はすまなかった! 疑って失礼なことを言った!」


 おぉ、初手から90度の謝罪が飛んできた……。

 

 コメントも誰?と聞いていて、説明しようか悩んだが後回しにする。


「ずっと謝りたかったんだ! それに助けてくれてありがとう!」

「い、いえ……それよりも渡部さん、状況は?」

「そ、そうだな。人の避難を最優先させていて、まだ間に合っていないんだ。幸いなことに、安西ミホに招待されていた冒険者や配信者も居るが、かなりギリギリだ……」


 正直、一網打尽が一番楽なのだが……それは一般人を巻き込む。

 となれば、各個撃破が手堅いだろう。

 

「後は任せてください」

「え?」


 人形の紙をポンッ、と出す。


「ヴァル、守りを固めろ。ここから先は怪我人を一人も出すな」

「御意」

「うお……本物だ……! 本当にボスを式神に……!」


”ヴァルきちゃー!!”

”その渡部って警察官よりは安心感やべ~w”

 

 平安時代の陰陽師が、個人戦だけが得意だと思うなよ。

 無数の魑魅魍魎共を相手することだってあるんだ。


 最も効率よく……誰よりも最速で事態を終わらせる。

 

 上着を脱ぎ棄てる。


「呪力の回転率をもっとあげるか……連発は疲れるけど、そう言ってる場合じゃないかな」

 

 体内で循環している呪力を巡らせ、その速度を上げる。

 血流を加速させる、という表現が近いだろう。


 俺は体内でそれを行い、身体を強化する。


 行くか。


 思いっきり地面を蹴る。

 砂埃が舞う。


「ちょ、待────速っ!」

  

”うわっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!”

”はっっっや!”

”やば!”

”怖い怖い怖い!”

”砂埃すげえwww”


 そうして、人々の垣根を通り抜けながら、水命糸をひっかけて行く。


 あそこでも戦ってる……。


「くっ! ここでやられる訳には……!」

「ギガガァ~……!」

「横失礼」

 

 パァァンッ! と魔物の頸が飛ぶ。


「え、は? え? 今なんか通った……?」


 ソラが移動するたび、その場所で魔物が倒れていた。

 ドローンには魔物が倒されていく光景が映し出される。

 

”えっなにこれは!?”

”えっぐ……!”

”強すぎだろ!”

”待って。ソラってボス戦した後なんだよね?”

”すげえwww”

”ドローンでもギリギリで草”

”はっや!”

”もはや残像じゃね?”

 

 糸で絡める。

 糸の強度を上げ、攻撃を弾く。

 伸ばす。

 繋げる。


 針の穴しか通らない隙間すらも糸はすり抜け、人を助ける。


 過ぎた時間は数秒。

 されど、その数秒で二十体の魔物をたった一人で捌いていく。


 その光景を見ていた視聴者はもちろんのこと、ドーム内にいた冒険者すらも感嘆としていた。


「凄すぎる……」

「誰だよ、あいつ……」

「次元が違いすぎる」

「助けて、くれた」


”ふぁ!?”

”今糸が触れただけで消し飛ばなかったか!?”

”こいつ、たった一人で戦況変えてる……”

”すげえwww”

”つっっっよ!”

”やっぱりソラが現代最強じゃね?”

”お姉ちゃんだ! 今助けてくれた人お姉ちゃんです!”


 視聴者がさらに増える。

 

”トレンドになって大騒ぎしてるから初めて来たけど、凄い……”

”これは初見じゃなくてもビビってる”

”マジでエグイ……”


 ソラが到着し、数分が過ぎた。

 たったそれだけで、ライブ会場は魔物の死体で埋まる。


”海外にもこの映像流れてるっぽい!”

”そらあ安西ミホのライブでダンジョンが発生したらそうなる”

”そうじゃなくても、これすげえだろ!”

 

 *


 東京ビアドーム内部。

 深層経験者である冒険者、榊原カツは汗を掻いていた。


「まったく! ミホさんも、最後にとんでもないライブに招待してくれたものですね!」

 

 魔物の攻撃を大きな盾で防ぎ、一般人たちを守る。

 大神リカとのコンビネーションで、うまく魔物を集め、剣で倒す。


 即席のパーティーだが、カツが巧い事カバーすることで、リカが動き易くなっていた。

 

「カツさん!」

「俺が盾になる! リカちゃんはそこを狙って!」

「はい!」


 カツ自身は既に三十を超えている。

 冒険者は若い人ほど強く、トップにいる傾向がある。

 

 それでも冒険者を続けているのは、目標である妹の病気を治すために金が必要だったから。


(ハハ! ダンジョン配信者だから、って甘く見てたけど、意外と動けるじゃないか。若さかな!)


 カツは理解していた。

 自分の全盛期は既に過ぎている。


 今は培ってきた経験でカバーして、深層へ挑んでいるのだ。


(でも……数が多すぎないか!? これ、長くはもたな……あれ?)


 先ほどまで、倒せど倒せど湧いて来る魔物に、違和感を抱く。


(なんか……減ってる……)


 ふと、視線を大神リカに移す。


(もしかして、彼女がやったのか?)


「ブボッ!?」


 遠くの方で、何かが弾けた。


「ん……?」


 カツが目を凝らす。

 最近は歳なのか、遠い物が見えない。

 

 誰かが戦っている……のだと思う。


(にしては速すぎるような……)


 中層の魔物、リザードマンがカツの目前に現れる。


「ギガッ!」

「ッ────! しまっ!」

「伸びろ」


 水色の糸が、リザードマンに絡まる。

 そうして弾けた。


「大丈夫ですか?」

「き、君は……? あっ! 待った、答えないで!」

「えっ」


 カツは眉間のしわに手を伸ばし、思い出そうとする。

 おじさんなので記憶力が悪いのだ。


「確か、えーっと……そう! 上野ソラだろ!」

「そうですけど……」

「助けに来てくれたのか!」

「はい」


 カツが興奮する。

 少年心のような気持ちになる。

 

「会ってみたかったんだよ~! 俺はカツって言うんだけど、深層冒険者がみんな、君を次世代の五本指に入れる強さかもしれないって噂しててさ~!」


 ソラの両手を掴み、身体ごと上下に振る。


「あうわうあわ」


 揺られたソラが謎の言葉を漏らしていると、カツが笑顔で語る。 


「いやぁ、若いって良いなぁ。おじさんもね、若い時は凄かったんだ。昔は配信アプリなんてなくてね、でもそりゃあもう凄くて……」


 長々と話し出すカツに、後ろで守られていた一般人……それに大神リカも気付く。


「えっソラさん!?」

「あっ! 彼がリカちゃんが言ってたソラくん!?」


 大神リカ、安西ミホ、そこには多くの人達が居た。


「助けに来てくれたのか……? でも、あんな子どもじゃ」

「今有名な上野ソラってあの人なんだ……!」

「初めて見た!」

「アホの子……!」

 

 懐疑的な声、助かったと安堵する声。

 たくさんの想いが入り乱れる中で、ソラが言う。


「まだ戦えますか?」

「あぁ、もちろんだ!」

「ソラさん! 私もまだ戦えます!」


 戦えるのは何も二人だけではない。実力は劣るとはいえ、他にも冒険者はここに居る。


 来た道は、既にまた魔物が増えている。


 いくら倒しても倒しても、どこからか湧いて来る。


「これだけの人々を守りながら移動するのは無理ですよね」

「さ、流石に無理だな……入口をこうして守ってるくらいだ。中にはまだ数千人はいるし……」


 リカが呟く。


「全員は守り切れない……誰かは死ぬのを覚悟しなきゃ」


 今のところ、幸いなことにこのライブ会場で死者は出ていない。

 それもすべてはその場にいた冒険者が死に物狂いで戦ってくれたお陰だった。


 安西ミホが大好きという、同じ志を持つ仲間を殺させはしない……その覚悟をみな持っていたのだ。


 ソラが腕を組んで、顎に手を置く。

 なにやら悩んだ様子で、唸り始めた。


「うーん……うーん……」


 その唸り方を知っている人は、本物を見れたと興奮する。

 同様に、コメントも騒いでいる。

 

”でた!”

”このタイミングで唸り出したぞwww”

”えぇ……”

”なにすんの……? こんな絶望的な状況で”

 

「俺が魔物を全部抑えるので、その間に移動して貰ってもいいですか?」


 カツとリカが呆気にとられる。


「……は?」

「……え?」


”何言ってんだ……?”

”この数を……?”

”いやいやいや!”

”いや、無理だろ……”

”絶対できないw”

”それはソラでも……”


 カツが頬を引き攣らせる。


「ま、魔法を使うのか……?」

「魔法じゃないですけど、まぁ似たようなのを」

「だ、ダメだぞ! 魔法は使えない! 瓦礫に埋もれた人を巻き込んだらどうする……!」

「誰も巻き込みませんよ」

「そんなの不可能だ……! 深層冒険者でさえ、そんなことはできない!」

「アハハ、大丈夫ですよ。じゃ」


 それだけ言い残し、ソラは大きく飛んだ。


「マ……マジで一人でやるつもりか……!? ガチで!?」


 カツは信じられなかった。

 目の前にいる青年は、嘘偽りのない瞳をしていた。

 

 *


 ソラが瓦礫の山……そのてっぺんに立つ。

 

 上を見上げれば、天気は晴れ。曇はない。

 透き通った世界のソラ。

 

 ひとたび俯瞰すれば、そこは地獄絵図。

 魔物が跋扈している。


 その中間に、ソラは立つ。


 見える魔物の数は軽く数千……下手をすれば万はいるかもしれない。


「第三術式展開……式神」


 ポンッと煙が出ると、グラビトがソラの真後ろに出現した。


「わ、私をさっそく使うとは……良い度胸ではないか」

「少し力を貸して欲しくてさ」

「誰がお前に……!」

「身体治してあげるから。あと凄いことも教えてあげる」

「む……凄いこと……なら、まぁ……」


 グラビトは俺との戦闘で負傷し、その傷を癒せてはいない。

 まぁ、手伝わなくても治してあげるけど。


 知識を求めるグラビトの扱い方は、少し分かった。

 

 うし……やるか。

 

「シィィ……」


 息を整えろ。

 心臓の鼓動を上げろ。


 呪力を回せ。


 俺の持つ力で、人を助ける。


「はぁ……」


 練り上げた呪力を一点にまとめろ。

 両手・・で手印を組む。


”なんか手印違くね?”

”さっきと違う……!”

”グラビトの時は片手だった!”

”今回は両手!?”

”やっば!”


 先ほど、カツって人やリカさん……視聴者に言われた。


『無理だ』

『一人で止めることなんか不可能だ』

『そんなことできるはずがない!』

『絶対にできない!』

 

 無理かどうかは、俺がよく分かっている。

 不可能だ、と言われて『はいそうですか』と引き下がれるのなら、今ここには居ないんだよ。


 無理だと言われた転生術を成功させたから、俺は平安時代から転生した。


 上野ソラとして、ここに立っている。


 無理でもやってみなきゃ分からない。これは、本当に大事なことだ。


 両手で組んだ手印に集中する。


 俺は人々を助ける陰陽師だ。


「第四術式展開……」


 *


 たった一瞬、静まり返る。

 人々は見た。


 ソラの周りだけが、まるで真っ黒に覆われていたことに。


「第四術式展開……」


 それは本来、()()()()はずの呪力が、可視化できるほど濃密な呪力であった。


「真命操作」


 

 カツ、リカ達が驚く。


「ッ!?」

「────ッ!!」


(ソラさんの雰囲気が変わった……! のほほんとしてない!)

(おいおいおい……! なんて威圧だよ……ッ!! 本当に青年か!?)


 人々の全身が鳥肌で逆立つ。

 直感で理解できてしまう。


 ここにいる誰よりも……魔物よりも、ソラは強い。

 

 たった一人で全てを変えられる力があるのだと。

  

 グラビトが思う。


(まさか、まさかコイツ! 私の魔法を出すつもりか!? ま、待て! 私は魔力で魔法を出すのだ! それを呪力で出そうだなんて……何が出るかなんて、全く予想ができないぞ……!!)

 

 出力が全く異なるモノを使う。

 

 例えば、スマホを充電しようにも、充電器の形が違うのなら刺さることはないし、互換性が異なる。

 ではもしも、無理やり刺して充電したら……? できてしまったら?

 

 性質は同じ電気でも、その形には意味がある。

 

 第四術式……それは、いわば魂の移動であった。

 モノからモノへ魂を移す。これは、呪いの解除や、付喪神の引っ越しなどの用途で使われる術式である。


 意識を式神と共有し、式神の持つ能力を拡大し、自身で操る。


 それが、真命操作。


 刹那の静寂。


呪重喪失グラビティ


 シィィィ……────ドガァァンッ!!

 

 強烈なまでの重力が魔物のみを襲う。

 人は完全に避けている。

 

「ん? 数体逃れてる……おいグラビト、ちゃんと制御しろ。怒るぞ」


 ソラの声が響く。

 

「ソラ! 貴様がいきなり莫大な力を送って来るからだろうが! 私の許容をとっくにオーバーしているというのに……!」

「俺も一緒に制御しているでしょ」


 グラビトが冷や汗をかく。


(クソ! こいつ、本当に私よりも何倍も一人で制御している……! 言い返せん……! 負けてられるか!)


 重力がきちんと残りの魔物を捉える。


”あれ、魔物の動き止まってね?”

”今のなんかやっば……”

”何したんだ? よく分からない”


「一体何が……」

「魔物の動きが、止まった……?」

「こ、ここら一帯の魔物の動きを止めたんじゃないかな……」


”はぁぁぁっ!?”

”ガチ!?”

”さっきグラビトがやってた重力魔法もう使ってる!”

”ヤバw”

”これグラビトの能力をソラが拡大したってことだろ!?”


「じょ、冗談だろ……!? ここが、どれだけ広いと思っているんだ!?」

「数千体はいるんだぞ……!?」

「凄すぎる……」


 技を成功させたソラは、外野の声を聴くことなく笑う。


「笑ってる……」


 他人から見れば、狂気に見えるだろう。

 だが、本人はただ……純粋に喜んでいたのだ。


 魔法と呪力は異なる。出力が違うのなら、調整すれば良い。


 魔法は変化すれど、本質は変わらない。


 すなわち、陰陽師以外の力……魔法にも手を出せたのだ。


 それが喜び以外のなんであろうか。


「あっ、あの~! カツさん~! 早くみんなを移動させてください~」

「あ、あぁ!」

 

 たった一人で戦況を変える。

 それが、陰陽師・上野ソラであった。



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