第98話:ランク詐欺
短剣の次は、ガラス工の再修業。
こちらも石工と同じく、おかしな技術はなかったので、大変スムーズに進行しました。
さすがに設備がないので大型のものは作れなかったため、そっち方面は知識だけになってしまったが、それでも貴重な知識である。
他にも、透明度や強度の変え方や色の付け方などの細かい知識や技術など、あまり知られていないことも教えてもらえた。ありがたい。
多分、部屋の窓や食器を作る時くらいしかガラスは使わないと思うが、知識も技術もあるに越したことはないからね。
その次は斧である。
こう言ってはなんだが……斧は多分、ほぼ伐採にしか使わないんじゃないかと思う……
でも、さすがにそれは言えないので、しっかり戦闘技術も全部いただきます。女神スコップは一応、斧でもあり、槌でもあるから……
斧を習う人っていないらしくて、めっちゃ嬉しそうにしていたから、本当のことは言えなかったんです。申し訳ない……
そして次の鍛冶は、なんか長くなりそうなんだよなー……
前回は、売り物になるくらいの武器や盾(大型を除く)が作れるようになるところまでだったから、今回は全部教えられると、非常に張り切っておられる……
いや、自分では重量武器も重鎧も、然程興味もなければ使う予定もないので、本来は習う予定はなかったのだが……今更これだけスルーするわけにもいかんし、大人しく教えてもらうことにしましょう。知識と技術はあって困るものじゃないし、いつかどこかで役立つ時がくるかもしれないしね。
などと思っていられたのも最初だけ、すぐに思い知らされることになりました。何がって?こっちも錬金術並みに、秘匿技術のオンパレードだったんだよぉぉぉぉぉっ!!
製作技術以前に、鉱石の精錬と説明で目玉飛び出るかと思ったわ!
ファンタジーお決まりの鉱石はもちろん、全く知らん鉱石まで、そりゃあもう多種多様に揃えてくれましたよ?ミスリル?オリハルコン?当然の如くありますねぇ、アダマンタイト?ヒヒイロカネ?はいはい、もちろんありますよー、他にも魔鉄に各種属性金属にダマスカス鋼、玉鋼、マギアストーン、スピリットメタル、ドラゴニウムが出てきた……ハッハッハ……オイ、ネタバレやめーや!新発見の楽しみがぁぁぁぁぁっ!!
などと心の中で叫んでも、時すでに遅しである。だってもう知ってしまったからね……もう知らなかった頃には戻れない、悲しいなぁ……
文句を言っていても始まらないし、気を取り直して鉄と鋼のインゴットでも量産しながら、師匠の講義を聞きますかねー。(前回で慣れたので、作業しながらでも大丈夫)
ミスリルが魔力伝導率が高いのと、アダマンタイトが硬いだけなのはこの世界でも同じらしい。
だが、オリハルコンの扱いがとても珍しくて驚いた。この世界のオリハルコンは、どうやら真鍮に近い金属らしい。
ただ、やはり普通の真鍮とは完全に別物で、オリハルコンを使って加工すると、付加効果が非常に付きやすいらしい。加工する対象によって、ある程度方向性はあるものの、ランダムで装備品自体の能力底上げや使用者のステータス上昇、稀にスキルも付くことがあるようだ。
そのため、常に品薄で非常に高価な素材となっているらしい。まぁ、そうなるのが当たり前なのだが……何故、この人は普通に持ち歩いているのだろうか?
魔鉄は鉄に魔力が馴染んだもので、劣化ミスリルとも呼ばれることもあるらしい。金属的にも魔力的にもミスリルに届かないが、属性魔力と馴染ませることができるため、属性金属にできる鍛冶師なら、魔鉄のままではなく属性金属として使用することが多いらしい。
余談だが、属性金属にできる鍛冶師はかなり少ないらしく、店に属性武具が並ぶことはほぼないらしい。
ダマスカス鋼と玉鋼に至っては、そもそもインゴット化することができる人が限られてるため、伝手がなければ武具はおろか、インゴットすら入手できないらしい。
その希少なインゴットの現物持ってる人が、目の前にいるんですけどね……
残りの3種に関しては……なんていうか、もうね、頭おかしいとしか言いようのない素材だった……
マギアストーンは森の最奥部、通称魔窟と呼ばれるダンジョンの深層でしか産出されないらしい。
魔窟と呼ばれるだけあって、極めて強い魔力がダンジョン内に充満しており、C級魔術師でさえ魔力酔いを起こすらしい。基本的に魔力系のステータスが低い戦士系だと、上層すら抜けることは難しいのだとか……
スピリットメタルの産出されるダンジョンは、アンデッドの巣窟でエルダーリッチ級がいるのではないか?と言われているが、最下層に辿り着いたものが未だにいないため不明らしい。
ちなみに、アンデッドだから光属性があれば余裕と言って、ダンジョンに入って行ったC級冒険者パーティは、命からがら、ボロボロになって戻ってきたらしい。
なんでも、プリースト系のスケルトンもいて、光属性が無効化された上に連携まで取れていて、普通にC級冒険者パーティと戦ってるようなものだったとか。しかもそれが1層の通常の敵なのだから、どうにもならないと帰ってきたようだ。
ドラゴニウムはもう聞いただけで、エンドコンテンツですか?と言いたくなるような内容だった。
C級冒険者は所謂トップ層である。もちろんベテランと昇級したばかりの者たちでは、結構な実力差があるのかもしれないが、それでもC級と認められるだけの実力はあるのだ。
にも関わらず、C級6人のフルパーティが5つ、総勢30名のレイドパーティでさえ、その山岳ダンジョンに辿り着くだけでやっとだったのだという……辿り着いたものの、もう既に満足に戦えるような状態のパーティはひとつも残っておらず、このまま中に入っても無駄死にするだけと判断して、非常用の帰還アイテムを使って戻ったらしい。
そんな話があるのだから、当然どのダンジョンであろうと、希少鉱石を持って帰ってくることなど不可能に近い。
そのはずなのに、どうして深層で産出されることを知っているのか?どうして現物が目の前にあるのか?おそらく……いや、まず間違いなく、この人たちは自力で採ってきたのだろう………
ここまでくれば断言してもいいだろう。この人たち、間違いなくランク詐欺だ!B級になれなかったんじゃなく、なろうとしなかったんだ!
C級という、それなりに人数がいて目立たない立場で、好き勝手なことして遊んでいたのだろう。他の誰も到達できない場所に行ったのも、ただの好奇心ではなかろうか?そこで手に入れたレア素材も、荒稼ぎに使うのではなく、全部自分たちの実験材料にしたのではなかろうか?
市場価値など知ったことかと、思い付くままに素材を突っ込んで遊んでいたのでは?そうであれば、この人の手持ちの素材にも、錬金術のレシピにも納得がいく。
私も大概変人だとは思うが、この人たちだって五十歩百歩じゃないか……そんなことを考えながら、鍛冶の再修業を続けていくのであった……




