第93話:フェルシアの講義
装飾スキルは無事ゲットできたけど、まだ覚えられる技術は残ってるので、それらも全て覚えさせてもらおう。
システムメッセージは他の人にはわからないので、気付かれることも中断することもなく、そのまま作業を継続できるのも助かる。
むぅ……さすがに一日で全ての技術の習得はできなかったかー……まぁ、その気になったのが遅かったしね……
これ以上遅くなると宿の食事の時間を越えてしまうし、モームさんにも心配を掛けかねないから仕方ない。今日のところは、これくらいにしておこう。
「ソニアさん、今日はここまでにしましょうか。さすがにそろそろ宿に戻らないと心配させますので……」
「そ、そうね。あー……疲れたー……なんでそんなに集中し続けられるのよ?おかしいでしょ……」
「やる気に満ちてるからですかね?」
「やる気だけでそれが可能なら、職人見習いはみんな1日で卒業できるわよ……」
「また明日もよろしくお願いします。それではお疲れ様でした」
「はい、お疲れ様。ちゃんと休むのよ?」
「わかりました。でも、明日は早めにくるつもりなので、ソニアさんも早く休んでくださいね」
「……はい。ご飯食べて、すぐ寝よう……」
「それでは失礼します」
その後、メリルさんにも挨拶をして宿に帰る。
そういえば……シャルリシアさんのこと、何も言われなかったな。改名のこととか……あんなことがあったし、気を遣ってくれたのかもしれない。
なんか有耶無耶になってしまったが……まぁ、向こうは向こうで従者修業もあるし、何か言ってきたらその時に対応しよう。それまでは自分のスキル上げに専念していよう。
宿に戻って食事をしながら、モームさんに遅くなった理由とこれからの予定を伝える。まだシャルリシアさんのことは黙っておこう。彼女の修業が終わる前に宿の期日がくるはずだしね。そのうち機会があったらでいいだろう。
だって、若い女性の従者とか、どう扱っていいかわからんし……どう話せばいいのかもわからん……なので保留です。
モームさんからは「やる気があるのはいいことだ。頑張りな」との励ましを貰って部屋に戻る。
フィアに毒餌を食べさせてから一緒に寝る。おやすみなさい。
翌日、朝も早くから屋敷に行ったら、ソニアさんはまだ寝ていたようだ。
すぐに起こされ、食事を取らされた挙句、作業場に連行されてきたソニアさんから恨みがましい視線を受けるが、昨日の時点で既に伝えていたのでスルーして昨日の続きを始める。
文句を言いつつも、再開すればしっかり教えてくれるのでありがたい。
その日の日暮れ直後になって、ようやく全ての技術を習得できたようだ。結局、丸3日掛かってしまった……やはり2日は無理なのか?いや、3日でも十分すぎるほど早いんだろうけど、早速予定が狂い始めましたよ?予定は未定というけれど、まさにその通りになってしまった……
とはいえ、まだこの程度なら予想の範囲内である。全員3日掛かったとしても2か月で収まるし……元々2日はあくまで希望だったからね。ちゃんと及第点は取っているので問題なしである。
「ソニアさん、3日間お疲れ様でした。おかげで装飾を無事習得出来ました。ありがとうございます」
「うん、カヅキもお疲れ様。まさか、ほんとに3日で全部覚えられるとは思わなかった……あたしの今までは何だったのかと考えなくもないけど、やめておくわ。泣きそうになりそうだし……」
「まぁ、それはともかくとして……これで全て終わったのですから、ゆっくり休んでください。明日からは起こされることもないでしょうから」
「ええ、そうね。そうするわ。カヅキは、明日からもその調子で続けるんでしょ?」
「一通り覚えきるまではそのつもりです。全ての基礎技能を習得しないと、南の平原以外は怖くて街から出られませんからね」
「どの口がほざくのか……この分だと、カヅキが戦闘技能を望むだけ身に付けたら、その時点でこの周辺はおろか、王都にまで単騎で抜けられそうになっていそうな気がするのは、あたしだけかしら……?」
「ソニアさんだけですね。使えるのと使いこなせるのとでは天地の差がありますし、何しろモンスターとの戦闘経験がありませんから、そんなことはできませんよ?」
「……どうかしらね?」
「それではメリルさんに挨拶してから、帰ろうと思います。今までありがとうございました」
「どういたしまして。これであたしはお役御免ね。今までお疲れ様。この後も頑張りなさい」
「はい、それでは失礼します」
その後、メリルさんに挨拶しがてら、装飾の修業が全て終わったこと、明日からは木工に入ることを伝えると、我がことのように喜ぶと共に了解してくれた。本当に助かる。感謝せねば……
翌日からは予定通り木工となったが、事前にメリルさんが私のことを教えておいてくれたのだろう。まず最初に講義からになっていた。
さすがはエルフの長老、知識量が半端じゃない。だが知識の吸収は望むところである。フッフッフ、その膨大な知識、全てを喰らいつくして見せよう。
木工のみならず、薬草をはじめとした草花、樹木の知識に加え、森に棲む動物や大地となる土や石などの所謂地質学、さらにはこの世界や今いる大陸のこと、精霊や妖精に属性、神々についても教えてもらうことができた。
この世界って、精霊や妖精はいるとは思っていたが、神々もいたのね。女神以外に誰も関わってこなかったから、1柱だけなのかと思ってた……だって、図書館でも神々に関しての本なんてなかったんだもの……もしかして、禁書扱いとか?
あるいは私が知らないだけで、どこかに神殿とかがあって、神々に関する資料はそっちにしか置いてないとかだろうか?
そんなわけで、フェルシアさんの講義が終わったのは、何と11日後だった!
予定を大幅に超えたが、後悔はない。あるわけがない!これだけ有用な知識群、自分だけで得ようとしたらどれだけ時間が掛かるか、わかったもんじゃないからね。
フェルシアさんの方も、これだけ知識を求めるものは非常に少なく、ましてや、これほどまでに自分から貪欲に、より多種多様な知識を求めるものはエルフにもいなかったようだ。その上、私のもの覚えが良く全て一度で覚えるものだから、フェルシアさん自身も興が乗って、持てる知識をどんどん教え込んでしまったらしい。
そして一通り教え終わる頃には、11日が経過していたという……
メリルさんは私の成長を喜んでいたが、ソニアさんをはじめ新たに合流した師匠たちも、みんな揃って私たちに感心を通り越して呆れていたらしいということを、後日知ることになった……




