第90話:騒動収束?
「また、その件に加えて第4王女エミーリアが直接、渡来人カヅキへの不干渉命令を各ギルドマスターへ発令しています。この不干渉には当然ですが、攻撃や敵対も含まれます。王族が自ら発した命令の効果範囲は、国内全てです。この不干渉命令の時点で、カヅキは国賓扱いになっており、その禁を破れば国賊として手配、討伐されるのが必定」
エミーリア、貴様かぁぁぁぁぁぁっ!
まさか、あの時点で国賓になってるとか思わんて……ギルドマスターたちに釘を刺しただけじゃなかったのか……
ただの一般人には、そもそも国賓なんて単語自体、そうそう思い浮かぶものじゃないんだから、そんなことになってるとか、気付きようがないだろう……
「多くの人を救い、英雄視され、尚且つ国賓とされている者に対して攻撃を行うということが、どれほどの大罪かわかりますか?」
「事が大きすぎて、想像し難いですね……」
「まず人々を救った英雄に対してですが、これは救われた人々の感謝や尊敬を纏めて反転させたもの、つまり感謝や尊敬と同量の憤怒や蔑視を向けられるということ。国賓に対してですが、こちらは国としての面子や威信が関わります。国の賓客が攻撃されるということは、国そのものに攻撃されるも同然です。加えて要人への警護や国の治安に疑いを持たれ、他国から誹りと侮りを受けることになるでしょう。それ故に、真相を明らかにし、相応しい償いをさせねばなりません」
あ……これ、ヤベーやつだ。要するに、あのサイスって人がしたのは、国賓への暗殺未遂ってことになるのか……そして、国が面子や威信にかけて、これを裁かねばならぬと……
「もしも、この件が表沙汰になった場合は、深淵の森の郷は言うに及ばず、エルフという種族そのものに対して、あなたに救われたと感謝している者たちと各国全てが敵意を向けることになるでしょう。最悪、各国の軍や冒険者によってエルフ狩りが行われ、大罪を犯した種族として公開処刑される可能性すら否定できません」
「……………」
「それ故に、今回の件は内密かつ迅速に処理を終わらせねばならなかったのです。仮にバレたとしても、まずは真偽を確かめねばならず、事が起こったであろう私の元へ確認の使者を立てねばなりません。その時点で、既に罪に見合った罰を受け、償いまで完了させていることにより、それ以上口出しできぬようにしたのです」
そういうことかぁ……別にメリルさんの腹いせというわけではなかったようだ。むしろ原因は私の方にあったようだ。でもさ……自分が英雄や国賓になってるとか、誰も思わんだろうぉぉぉぉ?!
「なるほど……メリルさんが大事にしたのではなく、どちらかというと私のせいで大事になってしまったというわけですね……まさか、自分が国賓なんてものになる日がこようとは思ってもみませんでしたが……ハハハ………メリルさん、あらぬ疑いを掛けてしまい、申し訳ありませんでした」
「いえ、いいのですよ。察しのいいあなたが、自身が国賓であることに気付いていなかったのは意外でしたが、それを考慮に入れると私に憤るのも納得がいきます。あなたの目には、郷の一族に対して理不尽を強いているように見えたのでしょう?」
「ええ、自分達の与り知らぬところで誰かが罪を犯したとして、その誰かが自分たちと同じ一族だからという理由で殺されるなど、余りにも理不尽ではありませんか。個人の罪であれば、個人に償わせればいいだけでしょう?それなのに下らぬ面子に拘り、他者への外聞を気にして、己が利益のために他者を蔑ろにする。だから私、はっ!………何でもありません、失礼しました」
「こちらも少し配慮の仕方を間違えようです。あなたがこういったことを嫌っていることはわかっていたため、できる限り関わる時間を減らそうと最終決定だけしてもらうことにしましたが、初めから全て説明しておくべきだったのかもしれません……とはいえ、郷の一族がどう動くのかわからなかったため、交渉の余地なく詫びもいれぬと言うのであれば、あなたに何も知らせぬまま一族を滅ぼすつもりでした。師匠については別の職人を呼んで、そんな一族など初めからいなかったことにするつもりでしたし、何より事前に教えてしまうと、全てが終わるまであなたが思い悩みそうでしたから……難しいですね」
しれっと一族を滅ぼすつもりって言わないでもらえます?すぐそばで聞いてる当事者もいるんですよ?
とりあえず、これでこの件は終わりってことでいいんだよな?一部、非常に困る要素が残っているが、今更どうにもならん。自分のせいで人が死ぬよりはマシと思おう。
「何はともあれ、これで全て終わったんですよね?これ以上面倒事はありませんよね?」
「ええ、大丈夫です。もうこれ以上は何もありませんし、2度とこのようなことは起こしません」
「わかりました。では次に何か起きた時には……私は逃げます!この街も国も知り合った人達も全てなかったことにして、誰も居ない何処かへ逃げます。そしてもう戻って来ることはありません。国が滅び、人類種が絶滅しようと、知ったことじゃありません。好きにしてください。私も好きなように生きていきますので」
「カヅキ……?それは………ふぅぅ、わかりました。今後、絶対に面倒事は起きないと、あなたを煩わせないと約束しましょう。もしも約束を違えた時は、我々人類種を見限ってもらって結構です。その代わり、何も起きなければずっとここにいると約束してもらえますか?」
すげーな、言い切ったよ、この人……でもずっとここにいるつもりはないよ?縛り付けられるのはごめんです。
「その約束はできません。私が今ここにいるのは、旅立つための準備をするためです。それ故に準備が終われば旅立ちます。それは決して変わりませんよ?」
「え、ええ、それはわかっています。私の言い方が悪かったですね。……コホン、何事も起きなければ、修業が終わるまでここにいてくれますか?」
「はい。私が面倒だと、煩わしいと思うことが起きない限り、ここで修業を続けようと思います」
「そうですか。それを聞いて安心しました」
ほっと安堵の息を漏らすメリルさん。
そっちはそっちで、これから防犯その他で大変なのかもしれないけど、こっちはこっちで、かなり大変な事態になっていて、先が思いやられるのですが?
まだ人間不信が治ってないのに、永続従者ができましたよ?
私はこれから、どこなら心安らかになれるの?どうしたら気楽になれるの?誰か教えてくれよー……




