第9話:そっ閉じしたい・・・
……………あー…えー、うん、そっかー…そういうことかー……
記憶の極一部だけだが戻った(戻された?)ため、何故こんなステータスなのかの疑問は解けたが…いや、やりすぎだろ?!これもう、十分チートレベルやん!
ステータスが低い?攻撃スキルがない?スキルレベルがMAXじゃないからチートじゃない?違う、そうじゃない!なにこの生き抜く事に必死すぎるスキル群は!
一体どこのボスだよ?!って言いたくなる程の耐性スキルの山は!あ、でも秘匿と生活魔法はマジで助かります。これに関しては女神グッジョブ!ありがとう!!
でもそれ以外はやりすぎなので反省して下さい。
え?秘匿の効果?これだよ
─ 特殊スキル:秘匿(ユニーク) ─
スキル所持者のあらゆる情報を完全に秘匿する。看破系のいかなるスキルを使用しても何一つ情報を得る事は出来ない。種族固有スキルやユニークスキルでも突破する事は不可能である。
うん、これのおかげで種族に(?)が付いていようが、ステータス補正値がおかしかろうが、ありえないスキルを大量に取得していようが誰にも気付かれない!
こんなの見られた日にはどうなるかわかったもんじゃないので、ほんと助かった…
生活魔法は、火起こしやら飲み水やら洗濯やらが楽に出来るやつ。とても便利。
あー、もー……驚き疲れた、やってらんねー………
もうなるようになれ、というかなるようにしかならん。明日は明日の風が吹く、きっと明日の私がどうにかしてくれるだろう。頑張れ、明日の私ー…今日の私はもう考えるのをやめま……インベントリまだ見てねぇ………うそーん、もう勘弁してくれよぉ~……
でもこれ、後回しにする程マズくなるやつだよなぁ~…
はぁ~~、仕方ない、やるか。嫌な予感しかしないけど…うりゃっ!
そっ閉じしたい…猛烈にそっ閉じしたい……
うおぉぉぉぉぉぉっ!!ほんと何してくれてんだ、あの女神ぃぃぃっ!
インベントリ40枠のうち半分の20枠がスイーツで!10枠が調味料でっ!何かアイテムも入ってるし!!どんだけ盛れば気が済むんじゃぁぁぁぁっ!!
……っっはあぁぁぁぁぁ~~~………ダレカタスケテ~……
クッキー、ケーキ、タルト、バームクーヘン、チョコ、アイス、ピザ、煎餅、コーヒー牛乳……どういうラインナップだよ?いや、どれも好きだけど…
調味料はさしすせそに胡椒、みりん、大蒜、鷹の爪にカレー粉…そして、アイテムがマジックポーチとマジックポケットに多目的スコップにテント……
うん、もうさっさと見てしまおう、そうすれば終わる…
─ アイテム ─
マジックポーチ
・容量 300枠 ・スタック数 9999個
・時間停止
・譲渡・売却・廃棄・強奪・破壊不可
タブ作成や切り替え、ソート、ゴミ箱機能も付いている優れもの。
とある存在がたった一人のために作り出した極めて大容量な小物入れ。
マジックポケット(2連)
・容量 赤:20枠 青:20枠 スタック数 999個
・時間操作可 ・温度調節機能 赤:加熱 青:冷却
・譲渡・売却・廃棄・強奪・破壊不可
時間操作する事で長時間掛かる煮込み料理もすぐ出来る優れもの。
とある存在がたった一人のために作り出した保温可能な小物入れ。
多目的スコップ
・譲渡・売却・廃棄・強奪・破壊不可
スコップ本来の掘削機能だけでなく、斧・鋸・金槌・階段・フライパンとしても使える。突・斬・打による攻撃も可能。攻撃・防御補正は所有者のレベル依存。
とある存在がたった一人のために作り出した一つで大抵の野外作業が出来る万能道具。
コンパクトテント
・譲渡・売却・廃棄・強奪・破壊不可
防汚・防音・消臭・遮光・環境迷彩を完備。見た目は寝袋一つ分だが、中は12畳ほどの広さで高さもあり圧迫感は皆無。ラグ敷なうえ室温湿度は快適に保たれ光量調節も可能。
とある存在がたった一人のために作り出した非常に快適な小型テント。
アッハッハッハ…うん、もう突っ込まんぞ。予想の遥か上を行っていたが、ぶっ壊れ性能なのは予想出来ていたからね。
まぁ、あれだ…何かいろいろどうでも良くなってきた。どうせ秘匿スキルでバレやしないんだし、もう開き直ってしまおう!余計な事は気にせずほっといて、気楽に過ごそう、はい、思考終了!
そろそろいい時間だろうし、下に行ってご飯食って寝てしまおう、ヨシ!
「すみません、今、夕食頼んでも大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ。好きなところに座って待ってておくれ」
「わかりました」
移動しながら改めて1階を見渡すと、扉の前にロビー、入って右側角に階段があり、階段そばに宿の受付をするカウンターがある。ロビーの左手には簡易な仕切りがあり、その向こうが食堂になっているようだった。
ファンタジー系の宿屋によくある1階が酒場になっているような物ではなく、この店の食堂は泊り客専用となっているらしい。
多分だが、この店くらいになると酒場で飲んだくれるような輩では泊まり続けることが出来ないのだろう。だからこういう落ち着いて食事出来る様にそれなりに広く、テーブルや椅子もそれなりの物が揃えられているのだろう。この間取りなら背の高い仕切りを使えば簡易的な個室を作って、話し合いの場などにも使えそうだ。
「はいよ。ゆっくりお食べ」
そうして運ばれてきたのは、パンとシチューと…ステーキ。
ん?おかしくね?普通、頼んでもいないのに割と厚めのステーキとか出てこないよね?
「えっと…何かすごくありません?いつもこうなんですか?」
「はっはっは。1か月も泊ってくれる上客だからね、そりゃ飯だっていいものになるさね!」
そう言って肩をバンバン叩かれる。意外と痛くはないからいいけども…
「とは言えさすがに毎日は出ないけどね。食べたいものがあったら事前に言ってくれれば、ある程度は融通を利かせられるから注文してみるといいさ」
「そうでしたか。何分こういう所に泊まるのは初めてでして、勝手がよくわかってませんでした。あと私は渡来人なので、こちらの料理がどのようなものか知らないので、教えて貰えると助かります」
そもそもこっちのメニュー自体知らないから、頼みようがないという…
「ああ、そういやそうだったね。それじゃまた後で話してあげるから、まずは冷めないうちに食べちまいな」
「そうですね、ではいただきます」
それじゃ、まずはステーキを…ハグッ!
ひと噛みした瞬間、噛んだ場所から肉汁が溢れ口内を暴れまわり、肉の旨味がジュワアァァァァァと脳にまで染み渡る錯覚を覚える……
ああ、なんて言うか…この”肉ぅぅぅぅぅぅぅっ!!”って感覚を、めっちゃ久々に味わった様な………
そう、それこそ前回食べたのが何時だったのか、もう思い出せない程に昔だった気さえして思わず目を閉じて、その味を堪能してしまう。
「あぁ………うまい……………」
そんな短い言葉が、瞼を閉じた際に目の端から何故か溢れた涙と共に口から漏れると…
「あんた、一体……いや、いいんだ。足りなかったらまた焼いてやるから好きなだけ食べな」
そう言って、モームさんが優しく頭を撫でてくる。
え?いや、違いますよ?そんな同情されるような事情がある訳じゃなく…
「あ、いえ、大丈夫です。ちゃんと足りますので…」
「何言ってんだい、子供が遠慮何てするもんじゃないよ!ちゃんと食べてないからそんなに細いんだろう?ちょっと、あんた!肉もう一枚焼いとくれ!」
「え?!あの…ほんとに大丈夫なので…」
「いいから!それ全部ともう一枚肉を食べきるまでは部屋に行かせないよ!」
「……はい」
あ、これ、何言ってもダメな奴だ。ただうまいって言っただけなのに、なんで欠食児童みたいな扱いになってしまったのか…
あ~、何か嫌な予感がする。この先毎回おかわりさせられたり、下手すりゃ息子扱いされそうで怖い……
過保護女神の甘やかしが、ついに始まる。
この女神、ゲームのみならず私生活含め全部調べたので、好きな食べ物とかも熟知してるんです。