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第89話:罰の選定


シャルリシアさんの震えが徐々に大きくなっていく。床に涙が落ちて痕を付ける。本人の意思に反し、勝手に溢れてきているのだろう。おそらく声が漏れぬようにするだけでも精一杯なはずだ。


さすがにもう待っていられない。まだ代案はきちんと決まっていないが、話しながら纏めるしかない。


「フェルシアさん、質問があります。面を上げて回答を求めます」


「はい、かしこまりました。ワシで答えられることであれば、何なりと」


よし、シャルリシアさんは顔を伏せたままだな。泣き顔は見られたくないだろうし、しばらくはそのままでいてもらおう。できれば、話してる間に泣き止んでくれると助かる。


「ではまず、あなた方の一族には秘匿された知識、技術、術式や素材はありますか?」


「……はい、一族の中でも極一部のものしか知らぬものが存在します」


「その秘匿が破られた場合は、どうなりますか?」


「多くのものが、何としてでも手に入れようと躍起になり、争いになるでしょう」


「それは一族にとって、どの程度の危機ですか?」


「っ!……場合によっては、郷を捨て、個々に離散して逃げることになるかもしれません」


よし、いい流れだ。とは言え、まだ不確定要素が多いから、慎重に進まねば……


「それは一族の死滅、及び隷属、そして悪辣な享楽者の一族という汚名と、どの程度差がありますか?」


「……まず、死滅よりは遥かにマシです。滅びは何よりも酷い最悪の結末故……次に隷属ですが、逃亡中とはいえ、まだ自由がある分だけ多少はマシでしょう。隷属した場合、どんな目に遭うかわからぬ上、最悪殺される可能性も否定できませぬ。最後に汚名ですが、こちらはほぼ同じかと存じます。悪辣な享楽者か秘匿し独占する者かの差でしかないでしょう」


うーん……前者2種には届かない。汚名は近いが、3人の首の分だけ対価が足りない。最悪サイスという人は見捨てるとしても、この2人を生かそうとすると、長老と姫の首と同価値のものが必要に……


「シャルリシアさんより若い人は何人いますか?」


「2人です」


「一族内での出産予定、あるいは身籠る可能性のありそうな人は?」


「今のところはありませぬ」


………………………


……………


その後、10分ほどの質疑応答を繰り返し、情報を集める。

その中から、受け入れ難く、長きにわたり罰として機能するものを選定していく。


「………それでは、こうしましょう。あなた方、深淵の森の郷の一族は、私、渡来人のカヅキに対して行った愚行を罪と認め、罰として、一族の秘伝とされ秘匿されているものも含め、あらゆる知識、技術、術式を伝授し、また今後300年にわたり、一族の活動範囲内にて採集可能な、秘匿されているものも含めたあらゆる素材を、毎月、一定数納め続けることとする。加えて、王族の末の姫たるシャルリシアを従者として捧げる。また、背信、離反、死別等により従うことを辞した場合、一族の死滅をもって償うこととする。よろしいか?」


「深淵の森の郷の長老フェルシア、罪を認め、罰を受け入れることを、ここに宣言致します」


「深淵の森の郷の末の姫シャルリシア、罪を認め、罰を受け入れることを、ここに宣言致します」


はぁぁぁぁぁぁ………何とかなった、か……?

とりあえず、誰の首も落とすことなく着地できたな……あー、疲れたー……

ほんと、毎回毎回交渉がベリーハードモードなのは、どうにかならんものか……交渉になる度に綱渡りしている気がする……


「さて……メリルさん、これで気が済みましたか?」


「ええ、カヅキの素敵な姿も見られましたし、満足です。サイスの首が繋がったままなのが釈然としませんが、それがカヅキの望みというのであれば、致し方ないでしょう」


「そうですか……それでは、次はメリルさんの番ですね」


「え?何かありましたか?」


「ありますよ?当然ですよね?これだけのことを仕出かしたのですから、相応の対価を支払わねばなりません。まさかとは思いますが、ご自分が何をしたのかわからない、などということはありませんよね?」


確かに私のために怒ってくれたのだろう。それ自体はとてもありがたいことだと思う。だが、今回はやり過ぎだ。

あの件は本人への罰だけで終わらせられたはずなのに、どうして郷まで巻き込んだのか……いくら腹の虫が治まらぬとはいえ、限度というものがある。さすがに一族全ての命を天秤に乗せるのは認められない。


「……サイスのみならず、一族全ての問題にしたことかしら?」


「ええ、そうです。なぜここまで大事にしたのですか?いくらなんでもやり過ぎです。何か理由があるのですか?腹の虫が治まらなかったからなどと言うのであれば、こちらにも考えがありますよ?」


「カヅキ。どうやらあなたは、自分がどれだけ重要人物なのか理解していないようですね。いえ、それとも忘れているのでしょうか?」


私が重要人物?その理由を忘れている?確かに私は特殊な存在ではあるし、女神にとっては重要人物かもしれんが、住人にとって重要ではないと思うが?そもそも、この世界に知り合い自体少ないし……


「やはり自覚がないようですね。いい機会ですから教えておきましょうか。いいですか、カヅキ。あなたは、このエルメキア王国内では国賓に値するのです」


「国賓?」


国賓ってあれだよな?国を挙げてもてなす人物。そんな大層なもんになった覚えはないぞ?


「そんなものになった覚えはないと言いたげな顔をしていますね。ですが本当です。あなたはこの世界に渡来人が来た初日の夜に、王国のみならず、他国も救っているのですよ?」


はい?王国のみならず、他国も救った?それも初日の夜に?

………ん?初日の夜?……まさか、あれか?バカ共を追放するために、住人が直接GMコールできるようにしたやつ!


「御使いの召喚?」


「思い出してくれたようですね。ええ、その通りです。あの功績により、あなたは各国で”暴徒からの救い手”として、半ば英雄視されています」


うそーん……私は別に英雄になりたかったわけじゃない。ただ目障りな奴らを排除したかっただけだ。私が見たくないものを見なくて済むように、手っ取り早く住人に始末させようとしただけだ。それなのに、何でこんなことに……って、何か前にも同じようなこと考えたことあったな……あの時は、マイアさんか王女だった気がする……



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