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第88話:謝罪


「まず政治ですが、我々は複数の代表者による会議で、様々なことを決めております。ワシは年長者故に長老などと呼ばれておりますが、代表の1人に過ぎませぬ。普段はワシが議長となり最終的な決定を口にしておりましたが、その役目は次の者に譲ってきましたので問題ありませぬ」


なるほど、引継ぎしてきたのか。まぁ、しばらくはこっちにいることになりそうだし、その方がいいのだろう。ついでに、次の世代を育てるいい機会として利用したのかもしれんな。


「次に生産ですが、こちらもワシ以外にも木工を生業にするものは多く、ワシが抜けたところで然程影響はありませぬ。時間さえかければ他の者たちでも作れますので、こちらも問題はありませぬ」


ふむ……まぁ、エルフだしね。そりゃあ、みんな木の扱いには慣れてるよねー。時間さえかければってことは、同じものでもフェルシアさんは早く作れるってことなのかな?

おそらく、みんな同じものを作れるが、作業速度と完成品の質の差でフェルシアさんに敵わないってところだろうか?


「最後に軍事ですが、実は現時点での最強はシャルリシアではないのです。今はまだ8番手に収まっておりますが、その才覚と伸びの良さから、遠からず現在の1番手を抜くであろうことは、郷の皆が認めるところです。技自体は既に全て習得しており、実戦による熟練こそ足りておりませぬが、お教えする事はできると見ております。このように未だ修業中の身故、今ここに来たとて郷の防備に影響は少なく、こちらも問題はありませぬ」


現在8位で将来1位確定とか、どんだけ才能あるねん……

それに、もう既に全ての技を習得済みで、あとは実戦による熟練のみって……それって、もうカンスト間近ってことなのでは?

弓特化、恐るべし………


「なるほど……郷の方には大きな影響はないということですね」


そう言った瞬間、2人がピクリと反応する。

なんだ?どうした?別におかしなことは言ってないぞ?一体2人は何に反応した?


2人とも身体に力が入り固くなっている。シャルリシアと言ったか、少女の方は微かだが震えてもいるし、拳も強く握っている。まるで何かに耐えるかのように……

わけがわからず、メリルさんの方に視線を向けてみるが、穏やかに微笑んだまま紅茶を飲んでおられる……


「シャルリシア」


「はい、お婆様」


対処を決めかねていると、フェルシアさんがシャルリシアさんを促し、ゆっくりと立ち上がる。2人はゆっくりと扉側に歩き出し、私たちが挟んで座っていたテーブルから少し離れた位置で、こちらを向いて隣り合って立つと、片膝をついて頭を下げる。


な、何事ぉぉぉぉぉっ?!何してんの、この人たち?!


ちなみに、今現在の配置がどうなっているのかというと、部屋の扉から見て、エルフ2人(横並び)>隙間>1人掛け座席>私>メリルさんという順である。

私と1人掛け座席の前にテーブルがあり、その向こうに2人が座っていた横長のソファがあり、メリルさんが上座にいる。(え?上座がわからない?お誕生日席のことだよ!)


「カヅキ様、謝罪が遅れましたこと、誠に申し訳ございません。また、先日行われた我が一族のサイスによる、不敬にして悪辣たる愚行に対して、一族を代表し、長老フェルシア及び末姫シャルリシアがお詫び申し上げます」


「「誠に申し訳ございませんでした!」」


嫌な予感の正体はこれかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!


なんだ、この重すぎる謝罪は?

いやいや、待って?!私、ここまでされるような事されてないからね?!確かにいきなり攻撃されそうになったけど!直前に止まったし、ギリ攻撃阻止できたし、精神的によろしくなかったけど無傷のままだし……


「謂れなく、己が享楽のためだけに弓を引かれたお怒りは御尤も。弁解のしようもございません。ですが!どうか、一族全てを滅ぼすことだけはお控えいただきたく!対価としては不満やも知れませぬが、長老たる我フェルシアと王族の末姫シャルリシアの首を持って、お怒りをお鎮めいただきたく存じます」


「件の元凶たるサイス及び我らの首を落とすことによって、溜飲を下げていただけますよう、何卒お願い申し上げます」


うわー……何、この状況……酷い、いろんな意味で酷過ぎる……

私は祟り神でも荒魂でもないんですが……懇願の仕方が、もはやその類に匹敵するレベルになってるという……

そして、この状況を作り出したメリルさんに「どうするんですか、これ?」と言う視線を無言で向けると、柔らかな笑みを浮かべながらとんでもないことを言い放った。


「カヅキの好きにして良いのですよ?この件の被害者はカヅキなのですから、許すも許さないもカヅキ次第です。許しはしないと一族を死滅させるもよし、許しを与えるために首を落とすもよし、一族を隷属させるもよしです。ですが、対価なしに許すわけにはいきませんよ?」


ぐぬぅ……最後にきっちり釘を刺してきよる。罪には罰を。罰無くして許すわけにはいかぬと。

今、罪の天秤に乗せるための対価は、一族の死滅もしくは隷属、そして首3つの3種類。どれも望んでいないが、それ以外を提示するとなるとそれらと同等、つまり一族全ての命に匹敵するものを言わねばならない。


首3つだけが安いように見えるが、実はそうでもないのだ。首を差し出すということは罪を認めるということ。特に今回の場合は、王族と長老が揃って罪を認め自ら首を差し出した以上、彼の一族には”己の享楽のためだけに何の謂れもない者を喜んで攻撃する者がいる”というレッテルを張られるということ。今後そういう一族として生きて行かなければならないということ。長寿なエルフには生き地獄以外の何物でもない。つまり対価としては、ほぼ同等なのだ。


それ故に、それ以外を求めるならば、その生き地獄に匹敵する対価を差し出させなければならないわけだが……どうしたものか………


2人はもう何も言わず、固まったように動かない。尤も、シャルリシアさんの方は震えを隠せていないが……それも致し方ないことだろう。

いくら姫として育てられ、こういうこともあるのだと教えられていても、実際にそんなことになるとは思ってもみなかったはずだ。ましてや、こんな若くして自ら首を差し出さねばならなくなるなど、誰に予想できようか。たった2日で覚悟が決まり、震えもせずに受け入れられる方がおかしいのだ。


今回のは不幸な事故だ。サイスという人がはしゃぎ過ぎたこと、対象が私だったこと、メリルさんが過保護だったこと、そしてそのメリルさんが一族を滅ぼせる力を持っていたこと。

どれか1つでも条件から外れていれば、こうはならなかったのだ。哀れとしか言いようがない……


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