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第86話:メリルの正体?


その後も講義は続き、結局夕方近くまで掛かって、ようやく全ての知識を伝えられたわけだが……


「もうやだぁ……もう二度と弟子なんて取らない、もう人にものを教えるとか、絶対にしないんだからぁ……」


まだ実践に手も付けていないのだが、この時点で既にソニアさんがグロッキー状態になっていた。

普通、こういう時は教えてもらっている生徒側が突っ伏すものだと思うのだが、今回は教師側のソニアさんの方が突っ伏して、泣き言を言っているのである。


特に何があったというわけでもないのだが、途中からソニアさんが弱気になり始め、徐々に半泣きになっていき、終わる頃には涙目になっていたのだ。

様子が変わり始めた辺りから、何度か休憩も挿みつつ、メリルさんにソニアさんの状態を確認してもらいながら、講義を続けてもらったのだが……かなりきつかったようだ。


多分、講義とかしたことないって言っていたし、あまり理屈で考えない感覚派だったらしく、知識をうまく言語化できずに、説明まで持っていけなかったのが、強いストレスになったんだと思う。

まだ知識だけで、実践が丸々残ってるんだけど……大丈夫かなぁ、これ?


「よしよし、頑張りましたね。もう、お勉強の時間は終わりましたよ。だからもう大丈夫です。大変なところはもう終わったのですから、そんな泣きそうな顔をしていないで、気を楽にしていいのですよ?」


そんなことを言っていますけど、ソニアさんをそこまで追い込んだのはメリルさん、あなたですよ?

途中、ソニアさんがストレスで変調をきたし始めた辺りで、私が「根を詰め過ぎてもアレですし、今日のところはここまでにして、また明日にしましょうか」と言ったところで待ったが入った。


おそらくメリルさんも気付いていたはずなんだが、講義を続行するように言葉巧みに誘導し始めたのだ。講義から逃げたがっているソニアさんを、ゴールへと向かう方向にしか行けぬように進路を狭め、背中を押して進ませ続けた。

その結果が、この惨状である……


「そうですね。これでもう講義は必要なくなったので、明日からは実践だけですし、もっと気楽にできると思いますよ」


「……ほんとうに?」


「ええ、本当です。今日の講義だけでもかなり有意義でしたし、明日からは資材の説明も道具の説明もなしで作業に入れます。作業の流れも既に知っているので、サポート程度で済むと思います。ですから、今日ほど疲れることはないでしょう」


「……うー……わかった」


なんか、幼児退行してないか?この人……

私は、まず事前知識を仕入れるのが当たり前だったからこの流れになったけど、必要な時に必要な分だけ知識を求めるタイプのソニアさんには、かなり辛い思いをさせてしまった……ほんと、申し訳ない。

でもほら、嫌なことや面倒なことは、先に済ませておいた方が後で楽だし、ね?

明日からは、なるべく早くスキル化して解放してやらねば……


「さて、今日の分は終わりましたので、私は宿に戻りますね。ソニアさんも今日は疲れたでしょうし、この後はゆっくりしてください」


「うん、そうするー……」


「それではカヅキ、また明日ですね。あなたもゆっくり休むのですよ?」


「ええ、わかりました。それでは失礼します。おやすみなさい」


そうして、宿に戻った後はいつも通りに過ごし、様子を見ながらフィアに毒餌を食べてもらい、大丈夫そうなのを確認してから眠りについた。




翌日は、予定通り朝から装飾の実践を開始していたのだが、お昼過ぎにメリルさんが来客により席を外すことになった。

その後、いくらかの時間が過ぎてからメイドさんが私を呼びに来たが、どうやら呼ばれたのは私だけらしく、ソニアさんは手持ち無沙汰になるため、休憩することにしたらしい。


日時から考えて、おそらくメリルさんが呼び寄せた郷の人とやらが来たのだろう。

タイムリミットまであと数時間。良く間に合わせたものだと思う。

どんな文面で手紙を送ったのかは知らないが、相当物騒な文面であったことは想像に難くない。そんな宣戦布告ともとれる手紙を受け取って、実質2日で協議、準備、移動をするのは、かなりきつかったのではなかろうか?

メリルさんは走れば間に合うとは言っていたが、その言葉の意味するところは、おそらくではあるが、決して休まず全力で走り続ければ、というかなり酷い意味合いな気がする……


そんな強行軍を強いられても、それに従ったということは……宣戦布告がただの脅しではなく、本当に攻め滅ぼされかねないという結論を出したことになる。

それはつまり、あの手紙の差出人であるメリルさんであれば、それが可能だと思われてるということだ。

そこまで行くと、もうはっきり言って単なる隠居貴族じゃないよね?


何というか、あまりにも影響力が大きすぎない?

これじゃまるで、一国の王様を相手にしてるみたいじゃないか。それこそ、軍事大国と周辺の小国みたいな力関係の……

うん?ちょっと待て………王様?いや、王族……?辺境伯、高位貴族……まさか、まさかね……ひょっとして、もしかして、まさかとは思うが……メリルさんって、元令嬢じゃなくて、元王女なのでは……?


そう、前に邪推したことがあるように、高位貴族なら王家の姫を娶ることができるのだ。辺境伯爵家に嫁いだとしても、何も不思議ではない……

この世界ではどうなっているのか知らないが、ファンタジーものの話の中には、王族の子供が正体を隠して冒険者として修業するって設定も、それほど珍しいわけではない。

メリルさんは、これに該当するのでは?


現国王のことは良く知らないし、ましてやその血筋に関してはなおさらだ。まだ始まったばかりの最序盤であることに加え、エミーリアの件で無意識に王族から距離を取ろうとしたのかもしれない。王族に関することは全く調べていない。まぁ、街の図書館に王家の資料があるとは思えんが……


よく物語では、国王候補の兄弟姉妹にやたら出来のいい子が混じっていて、疎まれたり面倒を嫌ったりして、王家から距離を置く切れ者がいたりするのだが……メリルさんやエミーリアはこの枠に当て嵌まるのではなかろうか?


もしも、この仮説が正しかった場合、メリルさんの私に対する異様な、執着とも言えそうなほどの過保護っぷりも納得がいく。

元辺境伯爵夫人ではなく、元令嬢でもなく、元王女。

しかも、相当の切れ者で、かつ元C級冒険者、それも英雄手前のだ。もしかしたら、B級に届かなかったのではなく、わざと届かないように調整していた可能性すらあるのかもしれない。


そんな人が、長い年月を掛けて貴族としての教養に加え、知性、気品、優雅さなどを高めたとしたら、プリンセスキラーの称号によって好感度がカンストしていてもおかしくないのではないか?


うん、後付けではあるが、メリルさん元王女疑惑が否定できない要素で固められていく……

でも直接聞くわけにもいかんしなぁ。もし王家に興味ありと思われたなら、マジでいつでも玉座に座れるように準備しかねないからね。それも都合のいいことに、エミーリアが城でスタンバっているから、超速で話が進みそうだし……王族に関する話は禁句にしなければ……


あー……余計なことに気付いてしまった……

事前に危険を知れたのは幸いだが、同時にヤベーところにいることも知ってしまった……この先、訪れるであろう師匠候補も、とんでもない人ばかりになることが、ほぼ確定である。


依然として行方不明な私の平穏さんは、今頃何処にいるのだろうか?一刻も早い帰還を望むばかりである……


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