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第84話:特製毒餌


それで……薬草セットには各種というか、おそらく全種類の薬草や毒草が纏められているのだろうが……

良くわからないのが、それぞれの薬草ごとに”詰め合わせ”になっていることだ。本来ならば、薬草なら薬草99個とかになってるはずなのに、どういうわけか個数ではなく詰め合わせという表示になっている。


これが例えば、薬草詰め合わせと毒草詰め合わせの2種類だけだったら、大まかに分けてあるんだろうなって思えるんだけど、困ったことに既に全種類別々になっているのにも関わらず、その種類数だけ詰め合わせがあるのだ。どういうこと?


見ていてもわからんし、とりあえず薬草詰め合わせを1つ開けてみるか……あんまりいい予感はしないが。

その結果………薬草9999個が999枠入っていました……orz

これを見て最初に思ったことは、こんなにあっても出せないじゃん、出したら枠が埋まっちゃうじゃんってことでした。


しかし、ここで違和感を覚える。インベントリの中に薬草セットはあるが、薬草がまだないのだ。枠を埋め尽くすほどの薬草が表示されているべきインベントリの中には、私が採取した薬草だけで、文字通り溢れるほどの薬草は表示されていない。うーん?なんでだ……?


いろいろ試してみて判明したのが、この薬草セットは入れ子構造になっているということだ。入れ子構造というのは、別のものに例えるならマトリョーシカってやつだ。箱の中に1サイズ小さな箱が入っており、さらにその中にはもう1サイズ小さな箱が……という風に多段階構造の複数の入れ物の重なりのことだ。


つまり……この薬草セット、総アイテム数4億近いのに、1枠に纏められているんですよ……

薬草をはじめとする各アイテムが、全部9999個×999枠あるんですよ。1種類だけで約1千万個、それが約40種、これだけのアイテムが薬草セットという入れ子構造の中に全部詰まっており、枠を消費せずに出し入れできる。別な言い方をするならインベントリが4万枠増えたようなもの、といえばわかりやすいだろうか?

もうわけがわからないよ!と叫びたくもなるが、それはグッと堪える。

さすがに救援物資に文句を言うわけには………ぐぬぬ………


緊急事態を理由にして、全力ブッパした女神に思うところはめっちゃあるが、今回は助けられたし不問とする。

それに、これらの薬草類が必要だったこともあるし、何より文字通り使い切れないほどあるのだ。いずれ調薬や錬金術で使うこともあるだろうし、試行錯誤もいくらでもできると思えばいい。薬草関連だけ採取スキップ入ったということにしよう。そうでも思わんと、他のプレイヤーに対して心苦しくてかなわん……


いろいろと整理をしたところで、フィア用に毒餌(無害)を作るか……

ヘルプを見ながら、どうせだからと全部盛りの餌を作ろう。はっはっは、心苦しいからって早く素材を消費したいわけじゃないぞ?ほんとだぞ?これは効率的に能力を得るための最速最善の方法だからですよ?他意はありませんよ?



……………………


…………



「よし、できた!」


そんなわけで完成したのが、毒、麻痺、石化のみならず、混乱、幻惑、睡眠、衰弱、疾病、腐蝕の6種を足して、9種類のデバフを身に付けられるであろう、特製毒餌である!

さすがに別々に作ると凄い量になるし手間も掛るので、1つに纏められるようにヘルプを見ながら配分を考えたんだが、結構時間が掛かったな……

複数の効果を持たせる際の組み合わせの仕方はいろいろ書いてあったけど、9種のは書かれていなかったので、自作するしかなかった。多分、大丈夫なはず……


「フィア、これ食べて見てもらえる?ダメそうだったら、すぐにペッって吐き出してね」


「ピィピィ」


うんうんと頷いて返事をすると、すぐに食べ始める。

食べ始めたが、一応大丈夫そうではある。

食べ続けているが、今のところ特に異常はなさそうだ。

ずっと食べているが、変化なし。

そして完食。状態異常を起こす毒草9種を食べても、何の異常も起きてない?本当に?


「フィア。はい、お水だよ」


そう言って別の器に水を入れてあげると、どんどん飲んでいく。

器の水を飲み干すと、ケプッっと小さくゲップをしている。異常がないか、フィアを手のひらに乗せて間近で様子を見るが、これといった変化は確認できない。


そうこうしてると、フィアが手のひらで寝てしまう。ほんと、食べるとすぐ寝る子だなぁ……まぁ、幼子はそれが仕事といえば仕事だから、それでいいんだけど……

とりあえず、しばらくは様子見か。大丈夫そうなら私も寝て、明日の朝になっても問題ないなら、この毒餌を毎日食べてもらうことにしよう。




さて、朝になったわけだが、フィアの様子はどうなったかな?

ふむ……いつも通り気持ちよさそうに眠っているな。苦し気な様子はまるでない。

ふぅぅぅぅ……良かった、本当に。自分で作った毒餌でフィアが苦しむとか、自責の念で押し潰されかねん……


手のひらに乗せて様子を見るも、変化は確認できない。むしろできたら困る。あれだけ特殊な毒餌だからな、フィアの耐性では何一つ無効化できない毒が9種もあるのだ。すぐに変化が起きた時は毒が効果を発揮しているということに他ならないのだから。


とはいえ、一晩経っても変化が確認できないのであれば、おそらくあの毒餌はきちんと無害化できていたのだろう。あとは毎日朝晩食べてもらえば、そのうち能力も生えてくるだろう。

そろそろフィアにも起きてもらって、毒餌を食べてもらうか。


「フィア、朝だよ。起きてー」


手のひらに乗せたまま、声を掛けつつ指で軽くツンツンと突くと目を覚ます。


「ピィ……?」


「おはよう、フィア」


「ピィィ!」


「体の調子はどう?おかしなところはない?」


「ピィ?……ピィ、ピィピィ」


自分の身体を見回すようにした後、手のひらの上で跳ねながら、大丈夫だと言うように元気に鳴く。


「うん、大丈夫そうだね。それじゃ昨夜のを出すから、食べてもらえる?」


「ピィピィ」


大丈夫そうなので、1食分を出してテーブルに水と一緒に用意すると、お腹が空いていたのかすぐに食べ始める。

昨日もそうだったが、結構な量の毒草が入っているのに、美味しそうに食べるんだよなぁ……

動物ってそういうのに敏感らしいけど、無警戒で食べ始めるこの子は大丈夫なのだろうか?少し心配になってくるが、私が気を付けていればいいだろう。


あっさりと完食し、実に満足そうである。今のところは平気そうだが、一応気を付けて見ていよう。

それじゃ、今日も1日頑張りますか!


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