第79話:ヒヨコ?
「そもそも従魔の卵なんて、何処で拾ったのよ?!しかも、何でそれが卵で、抱いてたら孵化するってわかるのよ?おかしいでしょ?!」
まぁ、そうですよねー。私も逆の立場だったらそう思う。でも世の中いろんなことがあるんですよ、ほんとにね……
「卵は平原で採取してる時に、どこからか飛んできたんですよ。それが私の頭に当たり、衝撃で倒れ、痛みに耐えている時に、コロコロと転がって来て、私の身体に当たったのが卵だったんです。それで触ってみたら、中から気配がするんですよね……それも、どういうわけか抱っこして欲しそうな気配が……」
「はぁぁぁぁぁ……もうどこから突っ込めばいいのかしら……?それで拾って孵化するまで抱っこしていたと?」
「そういうことです」
「物好きにも程があるわね……というか、なんで卵の中の気配なんてわかるのよ?」
「なんでと言われましても、直接触ったら命の有無くらいわかるでしょう?」
そういや、あれの少し前に鋭敏感覚が発現したんだっけ……
「あなたの知覚能力おかしいわよ?普通は卵の中の命の有無とかわからないし、それにここに来た時も、部屋の外から中の様子を知覚してたでしょ?」
「まぁ、初心者にしてはそれなりに知覚できる方だとは思いますが、それにしたって盗賊職とかの人とは結構差があると思いますよ?それにソニアさんも従魔術師なのに、こちらのことを窺っていたでしょう?」
「あたしのはただの慣れよ。長年の冒険者時代の経験によるものよ。でもあなたは、その経験も職業技能もなしにあたしを上回っていたでしょう?あの時、扉から姿を現そうとした瞬間からの行動は明らかに異常よ?これが冒険者を5年も10年も続けていた人なら、それほどおかしいとは思わない。でもあなたはまだ1か月と少ししか経っていないのに、しかも職業技能すらなしにその域に到達している。一体何をしたら、たった1か月でそこまでの能力を得られるの?」
「うーん……そこまで言われるようなことはしてないと思うんですけどね。私は単に臆病で小心者なので、そういったことに敏感なだけだと思います。それとこちらに来てからは、丸々1か月、ずっと図書館に籠って調べものをしていましたよ。これは他の司書の方が証言してくれると思います」
姿勢制御とかアクロバットとか、いろいろスキルを獲得するために動きながらだったけど……
「臆病なだけであんな動きができるわけないでしょうに……あと1か月ずっと調べものって、おかしくない?学者や研究者でもあるまいし、何をそんなに調べるっていうのよ……おまけにあの動きの説明になってないし……」
だって、説明するの面倒くさいし……それにまた、頭おかしいとか言われそうだからね。そりゃ、スルーできそうならするよねー。
「できるものはできる。それだけのことです。それで、従魔術についてなんですが、教えてもらってもいいですか?」
「あー、はいはい。教えるわよ。とは言っても特に教えるようなことはないのよね。精々どんなスキルがあって、その効果はどんなものかくらい。従魔術師の能力は、教えることができる技術ではなく、従魔術師としてより高みにいくことで能力が目覚める感じって言ったら……わかる?」
「………とある瞬間に、ふと気が付く。といったところでしょうか?」
「あー、うん。多分それでいいと思う。基本的にテイムできる上限数が増えたり、従魔に対するバフを覚えるけど、自分に対してはほぼ何もないから、カヅキが覚えても役に立つか、わからないわよ?ああ、そういえばまだカヅキの従魔がどんな種族か聞いてなかったわね。種族によってはアドバイスできるかもしれないけど……種族によってはできないかもしれないから、それは承知しておいてね」
なるほど、この世界の従魔術師はそういうタイプなのね。割とスタンダードなやつだ。でもこれってゲーム的にはどういう処理になるんだろうな?ベースレベルがいくつか上がる度にスキル覚える感じなのかね?
とりあえず、今はフィアについて聞いておけばいいか。
「そういう感じなんですね。わかりました。それで私の従魔なのですが、種族はヒヨコです」
「え……?ちょっと待って……え?ごめん、もう一回種族名言ってもらえる?」
「ええ、種族名は……ヒヨコ、です」
うーむ……ソニアさんの目が見開いておられる。これはあれか、まーたイレギュラーなやつか。
まぁ、そもそも卵を拾って孵化させてる時点でイレギュラーだしねぇ……この分だと進化先もイレギュラー満載な気がする。なんならイレギュラーしかない可能性すら有り得る……
もういろいろと諦めて突き抜けちゃった方が楽になれるんだろうけど、そう簡単に開き直れんのよなぁ……
「ヒ、ヒヨコ?ヒヨコってテイムできたっけ?いや、そもそもヒヨコって種族あったっけ?確かに鳥系の雛をテイムしている人はいた気がする……でもそれは、それぞれの種族の雛であって、種族名自体はその種族だったはず………」
うーん、大丈夫かな?知恵熱で倒れるんじゃなかろうか?
「えっと……ごめんなさい、ヒヨコという種族は知らないと思う。ヒヨコ自体は当然知ってるし、他の鳥系の雛のことも知ってるけど、従魔の種族としてヒヨコがあるのかどうか、私にはわからないわ……」
「そうですか。まぁ、成長して進化すれば何かしらわかるでしょうし、気長に待つことにします。どんな風に成長するのかわからないというのは、見方を変えればどんな風にも成長できるということでしょう?知ってることより、知らないことの方が楽しみじゃないですか」
うん、どうせイレギュラーなら、どんな能力を持つ種族に進化したとしても不思議じゃないのだ。ならばいっそ、本当に最凶コカトリスを目指してみようか?どう育てればそこに行きつくのか、さっぱりわからんけど……
≪システムメッセージ≫
<ヘルプ:従魔の育て方 が解放されました>
は?!おい、待てや!そんなヘルプあるなら、最初から表示しておきなさいよ!
なんで今、このタイミングで解放したの?育て方について考えたから?それならフィアが生まれた時か、その前に考えてた時でも良かったよねぇぇぇぇぇっ?!
ないよりあった方がいいのは確かだけどさぁ……何か、納得いかねぇぇぇぇぇぇぇっ!!




