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第77話:装飾師の困惑


「不老不死……不老不死って、アレ、よね?不老で……不死ってことよね?年を取らなくて、死なないってやつ、よね……?」


「ええ、そうです。その不老不死であってます」


「ソニア、落ち着いて。あなた、同じことを繰り返し言ってるだけよ?」


余程強いショックを受けたらしい。思考回路が破綻していらっしゃる。誰か治してあげてください。


「メリルさん、渡来人が死なないって、もしかしてそんなに知られていないんですかね?」


「いいえ、かなり知れ渡っているはずです。渡来人が現れた当初は、いくつかの半信半疑な情報しかなかったのですが、数日後には渡来人の概略と私たちとの相違点を調べた情報が出回り始めましたからね」


「その割には、ソニアさんは何も知らなかったようですが……?」


「情報は最初、各国の上層部やギルドマスターに伝えられたそうです。次に各組織の中核となる人たちへいき、最終的に各ギルドメンバーや軍や警備兵、それと情報に目聡い商人たちにまで伝わったそうです。その後、耳のいい人たちにも知れ渡っていったようです」


「つまり、知らない人の方がかなり少ないと?」


「ええ……もう1か月以上経過するわけだし、既に周知の事実と言ってもいいくらいだと思うのだけれど……どうしてソニアは知らなかったのかしら?まさかとは思うけど、1か月以上も引き籠っていたのかしら?」


「違うわよっ!」


あ、復活した。


「来てすぐの頃の酷い噂を聞いて、それで関わらないようにしようと思って、情報も仕入れなかったからよ……」


それは逆なのでは?私ならむしろ、より詳しい情報を仕入れてどうすれば関わらずに済むか、そのための対策を練るけどなぁ……


「え?何その目。何やってんだこいつ、と言わんばかりの呆れたような目をしないでもらえるかな?」


「カヅキでなくともそうなるでしょう。面倒な相手から目を背けてどうするのですか。面倒な相手だからこそ積極的に情報を集め、対策を練るのが常道でしょう?それでよく元C級冒険者などと言えましたね」


「うっ!さっきからメリル、あたしにだけきつくない?あたし何かした?」


「カヅキの望みを否定したでしょう?理由などそれで十分です」


「…………」


「ところで、渡来人の特徴を話したわけですが、それでも否定されますか?」


「え?」


「私は渡来人故に不老不死です。ですから時間に追われることはありません。最初は器用貧乏だとしても、それがなんだというのです?あらゆることができて、どこででも生活できるなら問題ないでしょう?技能なんて使い続けていれば、ある程度までは勝手に上手くなるんです。人に見せるわけでも売るわけでもないのですから、一流と呼ばれるための評判など不要です。そもそも私を器用貧乏という人がいつまで生きていられるというのです?どんな悪評になっていようと、文字通り時間が解決してくれるのですから、私が気にする必要はありません。それこそ気が付けば、私のことを知っている人が誰も居なくなっているかもしれませんしね」


「あ……えっ………」


「ああそれから、言い忘れていましたが……カヅキはおそらく生産の才能を持っています」


「………はあぁっ?!」


ソニアさんの視線が私とメリルさんを往復するが、知らん顔しておこう。似たようなの持ってるけど、もっとやべーやつなので知られたくないんだよねー……

あー……紅茶おいしい……


「不老不死で、生産の才能を持ってるって……渡来人って何なの……?」


「渡来人と言えば……カヅキ、まだインベントリのことをソニアに説明していないのでは?」


「ああ、確かに。そうでしたね」


「え?まだ何かあるの?もう既に頭の中ぐちゃぐちゃなんだけど……」


「でも、知っておいた方がいいと思いますので、一応説明しておきますね」


驚くだけならともかく、混乱したり倒れられたりしたら困るからね。今のうちに説明して後の面倒を回避しておこう。


「………お手柔らかに、して、ね?」


「倒れてもすぐに起こすから、心配しなくても大丈夫です」


「できれば、そのまま寝かせて置いてもらえないかな……?」


「倒れなければいいだけの話です」


「では始めますね。インベントリというのは、一言で言うなら”移動する見えない倉庫”ですね」


「はい?一体何を言ってるの?」


「まずは実演してみせますね」


そう言ってマールさんのところで買った料理セット一式を取り出す。


「え?」


服の中にも隠しきれない大量の道具。たった今まで、ここにはなかった道具たち。それが一瞬で、それも纏めて出てきたのだ。そりゃ、何も知らなければ驚くよね。


「ええーっ?!な、なんでぇぇっ?!はっ、そうか、マジックバッグね!そうでしょう?!」


「違います。これはインベントリと言って、渡来人全員が持っている基礎能力です。不老不死と同じですね」


そう言いながら、料理セットを一瞬で全部格納する。


「マ、マジックバッグだって、それくらいできるし!」


「うーん……メリルさん、マジックバッグの説明をお願いしてもいいでしょうか?私が知らないアイテムなので……」


「ええ、もちろん。ふふっ……カヅキはなかなか頼ってくれないから嬉しいわ。それで、マジックバッグの説明だけど……まず、最初の特徴としては生産品ではなく、高難易度ダンジョンの奥地でのみ入手可能な希少品ということね」


「ということは、過去に自作した人はいない?」


「ええ、マジックバッグが発見されて以来、ずっと研究はされてるようだけど、未だに成功例はないようね。その性能は名前が示す通り、見た目より遥かに多くの荷物が入るということ。そのため、商人や冒険者など、荷物を持って移動することがある人にとっては垂涎の品となっていますが、まず市場には出回りません。発見者が手放しませんからね」


「まぁ、そうでしょうね。それを入手できる時点でダンジョンの奥地に行ってるわけですから、そこに行くまでの食料や水のことを考えても、大量の荷物が入るマジックバッグを手放す理由がありませんね」


「その通りです。お金では買い取れない。かといって奪おうにもダンジョン奥地に行ける戦力に勝てるはずもなく、実在は確認されていますが、決して手に入らないものの一つとされています」


「つまり、渡来人の人数分など用意できるはずもない、と……」


「一人分でも無理でしょう……その性能ですが、これには諸説ありますが、一番多く入るもので200㎏、少ないものだと30㎏と言われています。さらにいうとバッグの口より大きいものは入れることができない、肉などの生ものは腐るなど、制限も多いようですが、鉱石や財宝などを運ぶにはうってつけの品と言えるでしょう」


「そう考えると、やはりインベントリは異常な程の使い勝手の良さがありますね……」


破格どころの騒ぎじゃないな、文字通り異次元のレベルの代物だ、これ。

私の場合は、それすら置き去りにするトンデモポーチがあるわけだが……もう絶対に知られるわけにいかんな……


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