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第73話:言いませんよ?


ん……んむ…………朝か、起きねば……

目が覚めて体を起こすと、お腹の上で何かがコロンと転がる。


「ピィィィ……?」


「おはよう、フィア」


転がったのは、どうやらお腹の上で寝ていたフィアらしい。

昨日、寝る時には枕のところにいたはずなのに、寝ている間にわざわざ移動したのだろうか?あったかいかもしれんが、息苦しそうな気もするけど大丈夫なのかな?


「ピィィ!」


少しキョロキョロした後、私の顔を見て声を上げつつ抱き着いてくる。うむ、かわいい。

自分とフィアに〔洗浄〕を使ってさっぱりすると、フィアが全身をブルブルと震わせた後でバッと羽を広げてからまた閉じる。それでどうやら落ち着いたらしい。

なかなか面白い動作だが、見ていてほっこりするのでそのままにしておこう。


「よし、ご飯を食べに行こうか」


「ピィピィ」


うんうんと頷きながら一声鳴くフィアを肩に乗せて階下へ降りる。


「おはようございます」


「おはよう、カヅキ。今日もこの後は裁縫かい?」


「ええ、そうですね。とは言っても、昨日はなんだかんだでいろいろありまして、結局裁縫には手を付けられなかったんですよ。なので、ようやく今日から裁縫を習うことになりますね」


「おや、そうなのかい?まぁ、相手は貴族だしねぇ、いろいろ面倒なこともあるだろうさ」


「良くしては貰っているんですけどね。それこそ過剰なくらいに。でも、思っていた以上に結構長い期間通うことになりそうです」


「そりゃそうなるだろうさ。何しろ元とはいえ生産職に弟子入りするんだ。一人前になるまで習おうとすれば、相応の時間が掛かっちまうのは仕方ないってもんさ。余程の天才でもない限りはね」


すみません。その余程の才能を後付けで貰いました……


「そうですね。ここの期限が切れたら屋敷に住むことになりそうなので、期限が近付いたら教えてください」


「あいよ。でもそれなら期限を延ばしたら、カヅキはずっとうちにいるのかい?」


「そんなことをしたら、メリルさんが猛抗議してきますよ?」


「そいつは困るねぇ……」


「……メリルさんって昔からあんなに過保護だったり、心配性だったりしたんですか?」


「いや?そんなことはないと思うけどね。むしろ自分にも相手にも厳しい感じの人だったはずだよ。厳しすぎるってわけでもないが、甘くもないって感じかねぇ」


「滅茶苦茶だだ甘なんですけど……」


「そりゃ、ただ単にカヅキが放って置けないからじゃないかい?せめてもう少しくらい、パッと見で頼り甲斐があれば、そうはならないんだろうけど……」


渡来人プレイヤーは容姿で判断しちゃダメなんですよ?ただのアバターだから。

幼女がバカでかい斧とか両手剣とかぶん回すのいいよね!とか言って、見た目だけ幼女にする中身おっさんな人とかもいそうだからね……


「やっぱり戦闘技能、ですかねぇ……」


「それもあるだろうけど、まず見た目がね。人の印象ってやつは、服装も大事なんだ。せっかく裁縫を習おうってんだから、もっと上等な、人に舐められないようなのを作って着るといいさ」


「あー……服装、ですか……どうせ当分は戦闘しないからと気にしていませんでしたが、確かにそろそろ変えた方がいいのかもしれません」


「ああ、そうだね。何だったらメリル婆に服が欲しいって言えばいいさ。多分喜んで用意するだろうからね。もっともカヅキの口振りからすると、一流の冒険者が着るような奴を何着も揃えそうだけどね」


「絶対に言いませんよ?!ほんとにそれくらいやりそうなんですから!」


いや、マジで!というか、そんなことを言おうものなら、服だけじゃなくて全身の各部位ごとに最高級品を用意しそう。他にもアクセとかいろいろ集めてきそうでめっちゃ怖い……


「まぁ、それはそれとしてだ。ほら、朝食できたからお食べ。残さず食べて大きくなるんだよ」


「外見的な成長はもうしないと思うんですけどね……いただきます」


「ピィィ」


そう言ってフィアと一緒に朝食を食べてから、宿を出て屋敷に向かう。




「おはようございます」


「いらっしゃい、カヅキ。待っていましたよ。既に裁縫を教える準備は整えてあります。さぁ、行きましょう」


「えっと……朝からすごくお元気ですね。確かにそのために来たのですが、そんなに急がなくてもいいのでは……?」


何か、物凄くテンションが高いんですが……どうなってんの?


「ふふっ……裁縫なんて、するのも教えるのも随分久しぶりで、私も楽しみなのよ」


「ああ、なるほど……一度やめた事って、機会がないとなかなか手を出そうと思えませんからね」


そういうのって、再開すると当時のこととか思い出すんだよねー……

それまで完全に忘れていたにも関わらず、やたら鮮明に思い出せることも多いし、どうして今まで忘れていたのかと思う程印象的なことも思い出して、すごく懐かしくなったりするんだよね……あれはいいものだー!

え?何?おっさんくさい?いいんだよ。だって中身はおっさんだもの!


「ええ、そうですね。今回は機会に恵まれ、裁縫の準備をしていたわけですが、その際に昔のことを思い出して懐かしくなりました。いつの間にか忘れてしまっていた大切な思い出たち。カヅキと出会い、裁縫を再びすることにならなければ、おそらく死ぬまで思い出すことはなかったでしょう。それらを思い出すことができたのは、あなたのおかげです。本当にありがとう」


お礼を言われるようなことは、何もしていないんだけどなー……

とはいえ、その感謝の気持ちを否定するのもおかしいし、少し座りが悪いが受け止めておくことにしよう。


「……どういたしまして。メリルさんが大切なものを取り戻せたのであれば、何よりだと思います」


「何物にも代えがたい大切なものを取り戻して貰ったのだもの。せめて私の持っている全ての知識と技術を授けることで返させていただくわね」


うん?何か変なフラグが建ってない?

これだとまるで、一人前どころか一流、下手すれば超一流になるまで鍛え上げようとしているみたいな……気がしなくもないんだが……気のせい、だよね?誰か気のせいだと言ってぇぇぇぇぇぇっ!


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