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第70話:演舞?


結局あの後は、中庭でメリルさんに見守られながら、体の動きをチェックする羽目になった。


何故見守られながらかというと、中庭に用意されていたティータイムを楽しむようなテーブル席で、メリルさんが書状を書き始めたからだ。

最初は案内するだけかと思っていたのだが、中庭に到着すると、既にある程度の範囲が自由に動き回れるように準備されており、さらには休憩のみならず、書類仕事もできるように整えられたテーブル席が、その範囲が見えやすいような形で設置されていた。

そう、どこからどう見ても観覧席。なんでこんなのが庭にあるのさ……


そもそも中庭云々という話になったのは、ついさっきだよね?なのに、なんでもう用意できてるの?

元々あったの?それにしたって、仕事兼用のテーブルとかいろいろあるのもおかしいよね?何?漫画とかによくいる完璧な執事やメイドが、さも当然とばかりに一瞬で用意したとか?

リアリティ抜群のこの世界の住人が、それをするのはどうなのさ……


などと理解不能なことに頭を悩ませながらも、用意されたスペースで少しずつ身体を動かし始める。

歩きから速足、駆け足、ダッシュと速度を上げつつ、急停止や急発進もする。それから側転、前転、バク転、反復横跳び、走り幅跳び、それらを適当に繋げた連続運動など、いろいろな動作確認をしつつ、それに伴う感覚や身体各所への負荷などもしっかりチェックする。


やってみた結果はというと、やはり予想通りというか、やり始めてしばらくは思ったように動けなかった。

なんというか……自分がこれくらいと考えている力加減で、予想以上に動く。微調整が利かないというか、物凄く大雑把な動きになる。


パソコンのマウスカーソルに例えると、感度を高く設定しすぎたために、いつも行き過ぎてしまうみたいな感じだ。

どうすればいいのかもわかっているし、実際そのように動かしているはずなのに、頭で思い描いたように身体を動かすことができていない。

こればっかりは、何度も何度も実際に体験して、感覚を覚える以外に方法はない。


だから繰り返す。何度でも。身体に完全に馴染むまで。

途中から空間認識のラインを利用し始めた(慣れたら目盛りや、マス目状のグリッドも出せるようになった)ので、自分がどれくらいの動きができるのか、その差を明確に認識できるようになってからは、より修正がしやすくなった。


感覚が一致し始めてくると、やはりというか……自在に動けることが楽しくなってくる。

急成長したのはステータスだけではない。各スキルもまた異常な成長をしただけでなく、追加、統合と進化しているため、その分できることの幅も増えているのだ。


徐々に感覚のズレが減っていく。すると、それまで感覚を掴むことに費やしていたリソースに空きが出てくる。その空きリソースを使って少しずつ自分の周囲へ感覚を向けていくと、地面の状態や風の動きがわかるようになってくる。

感覚が馴染んでいくたびに、それを繰り返す。徐々に知覚できる世界が広がっていく。そこでゆっくりと眼を閉じると、黒い、けれど色がないだけで、全てが見える世界になる。そして今回は感覚を馴染ませるために、出しっぱなしにしている空間認識のグリッドによる等間隔の線が走っており、さながらワイヤーフレームの3Ⅾゲームフィールドにいるような気分になって、少し面白かった。


そうしていると、ふと姿勢制御の時に使っていた棒のことを思い出した。

思い出したのも何かの縁、今使ったらどれくらい動けるのだろうかと思い、インベントリから出して足元に落とす。使わなくなってからそれほど時間が経ったわけでもないのに、やけに懐かしく感じると不思議に思いながらも、棒を使って様々なアクションをする。

あの頃よりも、ずっとスムーズに動けているし、バランスを崩すこともない。

ああ、自分もちゃんと成長しているのだな……と感慨に耽りながらも身体を動かし続け、満足したところで動くのをやめて眼を開ける。




眼を開けたにも関わらず、世界は暗いままだった。うん?なんでだ?ここに来た時はまだ昼間で、日もまだそれほど傾いてはいなかったはずだ。まさかとは思うが、真昼間から日が沈むまでずっと動き続けていた……?


観覧席の方を見て見ると、相変わらずそこにはメリルさんが機嫌よく座っていた。

何も言わないわけにもいかないし、何よりお暇して宿に戻らねば……


「すみません、こんな時間まで長々と……」


「いいえ。こちらこそ、とても素晴らしいものを見せていただきました。ありがとう」


「お礼を言われるようなことは、何もしていないのですが……」


「先程の演舞は実に見事でした。何より、その動きが自然でとても美しかった。初めのうちは身体の動きに追いつかなくて、制御するのに苦労していたようですが、ぎこちなさが薄れて来てからは、急速に動きがよくなっていきました。そして後半は、目を離すのが惜しいとさえ思えるほどの動きでした」


「え?えっと……もったいない程のお褒めの言葉ですが、あれはただ単に思い付いた動きを適当にしていただけですよ?演舞でも何でもない、ただの……トレーニング(?)ですよ?」


「それでもです。私にとっては、ずっと見続けていたいと思える程に好ましいものでした。あの動きは誰かに習ったものなのですか?」


「いえ、誰にも習ったことはありません。完全に自己流ですね」


そもそも動き自体適当なやつなのに、自己流も何もあったもんじゃない……

棒を使った動きも、スケボーって確かこんな動きしてたよなー?って感じのふわっとした記憶の再現でしかないわけだし……褒められるようなところは何一つとしてないんだけど、何故に美しいとか言われねばならんのだ?謎だわー………


「それと、もうこんな時間なので、そろそろお暇して宿に戻ろうかと思います」


「あら?それならここに泊って行けばいいでしょう?モームの所へは私から使いを出しますし」


「いえいえ、戻ると言ってあるので、食事も準備されてると思います。それを無駄にするのも悪いので、戻りたいと思います」


「……そうですか。そこまで言うのでしたら仕方ありません。残念ですが、今日の所は引き下がるとしましょう」


今日だけじゃなく、宿の期限切れまで大人しく引き下がっていてください。


「それでは失礼します。また明日、よろしくお願いします。おやすみなさい」


「ええ、ではまた明日。待っていますね。おやすみなさい」


さーて、帰るかー!

早く帰って、部屋でまったりしよう……


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