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第7話:観察対象兼情報源


「ではあとは宿ですね。こちらも既に話が通っているのでご安心を」


「その前に聞いておきたいことがあるのですが、よろしいですか?」


「はい、もちろんです。どうぞなんなりと」


「何故、私にこの役職を与えるのか、その理由です。おそらくですが、これは極限られた人にしか与えられない特殊な役職なのでは?」


各地の図書館に入り放題とか強権すぎる……


「お察しの通り、この役職に就くためにはいくつもの条件があり、貴方は全ての条件を満たしているわけではありません。ですが、貴方が非常に異質な渡来人であると判断された事も含め、観察対象兼情報源として友好的な関係を築くべきとの結論に達したためです。」


「観察対象兼情報源の部分は秘匿事項では…?」


それと非常に異質な渡来人はひどくね?でも詳細を聞きたい様な聞きたくない様な…


「私達が貴方を観察していた様に、貴方も観察されている事に気付いていながら放置して動向を窺っていたでしょう?であれば秘匿して不信感を煽るよりも、正直に話して信用を得るべきと判断しました」


「なるほど、納得しました。情報源と言うのは渡来人に関してでしょうか?」


「はい。本来はもっと親交を深めてから聞こうと思っていたのですが…この際ですから教えて頂けますか?」


「ええ、構いませんよ。それで今はどれくらい知っていますか?」


「そうですね。わたし達の知る渡来人と呼ばれる方の特徴としては、まず此処とは繋がっていない遥か彼方より行き来している事、一度の眠りが非常に長く場合によっては数日間眠り続ける事、そして最大の特徴として絶命する瞬間に特定の場所に強制転移されるため、実質的に限りなく不死に近い存在だと言う事ですね」


「ふむふむ…それ以外の特徴というと、あとは友人同士であれば離れていても会話可能、友人でなくとも不特定多数の人が集まる情報共有の場があること、装備品を一瞬で変更可能とか、あとはインベントリという亜空間収納辺りでしょうか」


他に何かあったっけ?こっちの住人が何が出来て何が出来ないのかがわからんし、プレイヤー側もまだ解放されてない機能とかありそうな気がするしねぇ……


「離れても会話可能とは、いつでもどこでもと言う事ですか?」


「ええ、お互いがこちらの世界に来ていれば、ですが」


外部サイトや個人端末と繋げられるかは私じゃわからんし…


「不特定多数の人で情報共有する場とは?」


「我々は掲示板と呼んでいますが、目の前に他の人には見えませんが、内容が共有されている板のような物が出てきて、それで筆談する感じです」


ヤベェ…説明しにくい!大丈夫?この説明で理解出来る?


「掲示板、ですか…?内容を共有……板…筆談……もしかして、左側に通し番号があって、上から下に向かって文章が流れていくものでしょうか?」


「ん!?…もしやこちらの住人も掲示板を使っていたりします?」


「はい。全員ではなく極一部の有力者のみですが、おそらく同じようなものだと思われます」


「あー、えーっと…うん、知ってるなら大丈夫、です、かね…?」


まさか既に使用中だったとは…え?この世界おかしくね?なんで掲示板のシステムを住人が使えるの?いや、そもそもシステム使えるなら渡来人の説明いらなくね?

さすがに全部のシステムを使える訳じゃないだろうけど、掲示板OKにしといて他の機能を消すのも変だしなー…


「掲示板のシステムまで使えるなら渡来人とほぼ変わらないと思いますし、あとはもう説明する事はない、かな…?」


「ま、待って下さい!どうして急に説明をやめるんですか?!」


「え?いやぁ…既に掲示板を使ってるって事は、渡来人のシステムを利用している人達がいる訳で…その人達は多分渡来人とほぼ同じ事が出来ると思うから、話すまでもなくもう知ってる事しかないだろうな、と…」


既に知ってる事をグダグダ話されてもつまらないだけだし…私なら欠伸が出る自信がある!


「わたし達は先に述べた特徴以外何も知りません。渡来人の”システム”と言う言葉も初めて聞きました。あなたの言う掲示板と呼ばれるものは確かにあります。ですがそれは誰もが使えるものではありませんし、何より数がありません。それに渡来人の掲示板は『目の前に他の人には見えない板の様な物』が現れるとの事でしたが、わたし達の使っている物は誰の目にも映る物ですし、目の前に現れたりもしませんし、簡単に動かす事も出来ない大きな道具なんです。」


システムと言う言葉を知らない?それに掲示板は誰にでも見える設置物っぽい?と言うことは少なくともシステムウィンドウは出てこないって事か?

あれ?その割には友人との遠距離会話については突っ込んで来なかったな…なんでだ?同じ様な機能を知らなかったからそういうものだとスルーしただけ?うーむ…やっぱり住人との基本仕様の差をはっきりさせないと、この先も齟齬が出そうだ…


「……どうやら私が早合点してしまったようですね。申し訳ありません。共通の機能を持っているなら他についても同様だろうと思い、説明するのは時間の無駄だろうと考えてしまいました」


「いえ、こちらこそ差し出口を挟んでしまい申し訳ありませんでした。余計な事を言ったばかりに話を脱線させてしまいました」


「やはり前提条件の違う方との会話には齟齬が出やすいですね。原因の一つは私が貴女方の能力を知らない事、何が出来て何が出来ないのか、文明や価値観の差異も重要でしょう。それを知る前に違いに関して話そうとしたのが間違いだったのかもしれません」


「こちらも少々焦りすぎました。渡来人の情報が入手出来ると思い、事を急ぎすぎた様です。一度落ち着くためにも此度の話はこれでお終いにして、カヅキさんには宿でお休み頂き、その間にこちらで資料を作成しようと思います。」


「確かにその方がいいかもしれませんね。私も少し話す内容を整理してみようと思います。今日は急だったこともあり纏りがなかった気もしますし…」


「では少々お待ちください。宿の方にご案内致します。」


「はい、よろしくお願いします。」


はぁぁぁぁ、やっぱりこういう説明とかって苦手だわ……

そもそも前提条件の違う人種と、その前提条件に関しての説明やら情報交換やらをする羽目になるとは夢にも思わんかった。

問題が先送りになっただけだけど、それでも一先ず乗り越えられただけでも良しとしよう。


時間倍率:4倍速。地球の1時間がゲーム内の4時間に相当する。


時間制限:地球時間で1日最大12時間までログイン可能。

     但し連続ログイン時間は最大で8時間まで。

     ゲーム内で連続20時間以上の行動でペナルティあり。

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