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第67話:心の問題


「なるほど……既に下準備はできていたのですね。それで次は何でも作れるようになり、その次にどんな状況でも戦えるようなるつもりだったのですね?」


「ええ、そこまでできるようになれば、後は一人でどこにでも行けますし、生きられますからね。好きに生きるのは、それからでも十分です」


「そうですね。基礎能力さえ磨いておけば、応用など後からいくらでも利くでしょう。長期的な視点で見れば、実に有効なやり方です。非常に長期的な上に地味で辛いため、考えても誰もしようと思わないでしょうが……」


「地味な方が目立たなくていいじゃないですか。最終目標はもっとずっと、果てしなく遠いのですし……その方が誰にも邪魔されずに済みそうです」


ほんと、その準備段階で既に、果たしていつになるのかわからないくらい遠大な夢物語だからなー……最低でも10年は掛かりそうな気がする。ゲーム的というか向こうの時間感覚にすると、2年半か……普通にサービス続いてそうだし、問題はなさそうだな。


「最終目標?あなたには、何か明確な目標があるのかしら?」


「目標というか、夢や妄想の類ですかね?到底叶うとは思えない絵空事ですよ。他の誰にも脅かされず、煩わされず、迷惑を掛けず、自由気ままにのんびりと、好きな時に好きな物を食べ、好きな時に眠り、やりたいことだけをして生きること。それが、私の辿り着きたいと願う私だけの理想郷」


「……だからですか?独りで生きられるようになりたいと望むのは。あなたの望みは、他の人がいる場所では決して叶わないでしょう。それがわかっているから、誰もいない、誰も知らない、遥か彼方を目指すつもりなのですね?」


さすが、外の世界が絡まないことについては、理解力が半端ない……貴族怖っ……


「ええ、そうです。最終的には独りで旅立つことになるでしょう。それがいつになるかは、私にもわかりませんが……」


「どうしても独りで行くつもりなのですか?いつの日か、あなたと同じ望みを抱く理解者が現れ、共に歩めるようになるかもしれませんよ?」


「もし、そのような人が現れたとしても、結果は変わらないでしょう。本当に私と同じ考え方と望みを持つものならば、きっとお互いにこう言うのではないでしょうか?「いつかどこかで再び出会うことあったなら、その時はお互いの成果を自慢し合おう。だからその時が来るまで、お互いに健やかでいよう」と……」


「……あなたは人間が、いえ、人類が嫌いなのですか?だから頑なに独りになろうとするのですか?」


別に人嫌いというわけではないんだけどね?中には優しい人も、一緒にいて落ち着く人もいるだろう。それでも、どうしたって煩わしいと思うこともあるし、面倒なしがらみができてしまう。そして何より、人間は何をするかわからない。それも人が増えれば増えるほど、厄介で、理解不能で、抑えが利かなくなる。だから避ける、遠ざかる。私は誰かに悪感情を持たれることも、誰かに対し悪感情を持つ事も嫌いなんだ。


悪感情は目には見えないし実体もないが、簡単に形を作る。その悪感情が強ければ強い程、対象がより鮮明な程、固く鋭い得物となって気配や視線、言葉に宿って対象を傷付ける。それはとても恐ろしいことだ。傷付ける意志などなくとも、悪感情を持っただけで相手を傷付けてしまうのだから。


そして、その得物は常に抜き身なのだ。例え目の前にいる相手が、どれほど大切な人であっても関係なく、容赦なく振るわれる凶刃。そんなものが悪感情を抱くたびに生み出されていく。そして他者と関わり続ける限り、状況に応じて様々な感情を抱くが故に、当然のごとく悪感情も生まれてしまう。私はそれが嫌なんだ。誰かが傷付くのも、誰かを傷付けるのも嫌なんだ。だから逃げる。自分が嫌な思いをしなくて済むように。


「違いますよ。私は別に人が嫌いなわけではありません。若干、苦手であることは否定しませんが……人と会話するのも嫌いではありません。他者同士の会話も、ろくでもない話は嫌ですが、微笑ましい内容であれば好ましいと思いますし」


「それでは、何故あなたは人のいるところへ行こうとしないのですか?何故自ら人から距離を取ろうとするのですか?」


「………私は、臆病で脆弱な小心者なんですよ。だから、外敵のいない安全な巣を探すんです。例え、巣自体は安全でも、外に出たら傷付いてしまうような危険地帯には住めません。食べ物や飲み物が手に入らない場所も同様です。巣も不安なく快適に眠れなければいけません。どの条件も揃っている場所など、そうそう見つかるはずがありません。であれば、自分で探しに行くしかないでしょう?」


「この街は条件に当て嵌まりませんか?街壁と門番たちによって、子供も不安なく出歩けるほど安全で、食べ物にも飲み物にも困りません。巣にしても、モームの宿も私の屋敷もあります。」


そう、この街はたった一つの条件を除けば、全ての条件が揃っている。そのたった一つにしても、大したことではないのだ。私以外の者なら、そもそも条件に含まれないどころか、候補にすら上がることはないだろう些細なこと。


そのたった一つが私を苛む。ここに居続けることを躊躇わせる。頭ではわかっているのだ。もうそれを気にすることはないのだと。どれだけ気にしても杞憂にすぎない無駄な気苦労だと。如何なるものであろうとも、私に悪意を向けられない。向けることは許されない。その可能性のあるものは、私に辿り着くまでに、この世界から排除されるだろう。私を傷付けられるのは、おそらくゲーム的なモンスターだけ。戦闘用にエンカウントしたエネミー以外は、それを禁じられている可能性すらある。(戦闘がどういう風に行われるのか、まだ未体験だからわからないけど)


それがわかっているのに、心の奥底でざわめくものがいるのだ。もしかしたらとずっと怯え続けているものが、確かにそこにいるのだ。

どれほど大丈夫だと言い聞かせても、そいつが納得しない。しようとしない。どうやっても怯えが収まらない。はっきり言ってお手上げである。


「当て嵌まりますよ。当て嵌まるんですが……うう~ん………」


「何か問題があるのですね?あるのでしたら言ってもらえれば、可能な限り速やかに対処します」


「ああ、いえ……これはそちら側に問題があるわけではなく、私の心の問題なので……頭では理解していても心が納得しない。それだけの話です」


ああぁぁぁぁぁもおぉぉぉぉぉぉぉっ!!我ながら面倒くさいなぁ、ほんとにっ!どんだけ重度の人間不信なんだよ?!よくまぁ、対人恐怖症になってないな、これ。普段、1歩多めに距離開けるのも、何かあるとまず遠慮するのも、この不信感が原因だろっ!


それと私、最初から恐怖耐性持ってたよね?さらに今は精神耐性になって、しかもⅧに上がったのに、何でここまで酷いことになってるんですかね……?


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