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第64話:オーラ怖い・・・


「先にいっておきますが、これから語るのは単なる思い付き、妄想の類だということです。何の根拠もないデタラメです。それを承知の上で、それでも聞きたいですか?」


「ええ、妄想虚言であったとしても、私はあなたの考えたことを知りたいのです」


「……先程の話を聞いて気になったのは、貴族だけが特殊な生まれをしているということです。特に生まれ持った能力についてです。両親の能力に関わらず、どんな能力になるか、まるで不明。これに関する法則が見つからないという点です」


「貴族の子に限るため、血筋が関係しているはずなのに、血を与えた両親の影響がまるでないのはおかしいでしょう?」


「そこで考え方を逆転させます。法則があるのに見つからないのではなく、はじめから法則など存在しなかったのではないか、と……」


「……それでは、血はそもそも関係なかったということでしょうか?」


「いえ、関係はあります。普通の人間の子と貴族の子の選別材料としてですが」


「選別材料ですか?貴族の子だけに何かをすると?」


「はい。その内容は生まれてくる貴族の子を形作るための情報の消去。そして無作為による能力の変化ではないかと考えました」


「……それはどういうことでしょうか?」


「普通の人間の赤子は両親の情報を使って形作られます、容姿・性格・能力などです。この情報があるからこそ、父親似、母親似などの特徴が出るわけです。そして成長すると年の若い似ている人物になるわけですが、貴族に対してはこの方法は適さないと判断し、別の手段を取ることにしました。それが今の情報を引き継がない赤子です」


「情報を引き継がない……赤子」


「両親の情報を消去してまっさらになった状態で、無作為に掴み取った情報を何も考えずに当て嵌める。人間の赤子として必要な項目が埋まるまでそれを繰り返す。最後に僅かな知性と知識への渇望を埋め込む。そうして出来上がったのが、両親の特徴を全く受け継いでいない貴族の赤子」


メリルさんの体が微かに震えている、拳を作り握りしめている。かつて、彼女も母となったことがあるからだろう。子供の”中身”が作り変えられた可能性があると言われて、心穏やかでいられるはずもない、か……


「………して。……どうしてそのようなことをする必要があるのですか?」


湧き上がる激情を抑えながらメリルさんが問うてくる。


「おそらく停滞を嫌っているからでしょう。既に確立された対処法と、それに最適化された領主。それでは何をしても変わらない。”だから”毎回領主の中身を変えることにした。同じ対処法が使えないように。といったところでしょうか」




運営にとって停滞は、客離れを引き起こす大きな要因だからな……

MMORPGにおいて停滞とは、言わばマンネリであり、現状に飽きている状態だ。その状態が続けばプレイヤーはこのゲームをつまらないと感じ、やめてしまうだろう。

そうしてプレイヤーが減って行けば、運営資金がなくなりサービス終了となってしまう。運営としては、それだけは何としてでも避けなければならない。


その回避策とは唯一つ、興味を引き続けること。面白い・楽しいと、そう思っている間はプレイヤーはいなくなったりしない。それ故にサービスインしたゲームの最大の命題は、如何にプレイヤーに楽しいと思わせ続けることができるかである。

そのためのイベントであり、マップ解放であり、新システム拡張だったりする。それらをタイミングを見計らい適度に行うことで、興味を引き続け、ゲーム内に居座らせ続けるのだ。


”だから”毎回同じでは困るのだ。刺激が減りマンネリと化し、飽きられてしまうから。

似た様なイベントでも、状況と登場人物と報酬が変わっていれば、大抵のプレイヤーは文句を言わない。

各領地を1周する間に領主が交代して別物となっていれば、それだけでもう1周分イベントが用意されるのだから、運営としてはやらない手はないだろう。

そのためには、同じような2代目では餌として不十分なのだ。だから変える。自分たちの首がまらぬように他者の首を絞める。それだけのことだ。




「そんなことで……たかがそんなことで、赤子たちの中身を消したというのですか?一体どこの……誰がやったと言うのですか?」


メリルさーん、怒気が抑えきれずに漏れてますよー……落ち着いてくださーい。既にやべーのが漏れ出してるけど、まだ声が届いてくれることを祈ろう……

確かこういう場合って、落ち着けって言うと逆効果になるんだったよな…?


「メリルさん、忘れていることがありますよ?」


「忘れていること?何でしょう?何かありましたか?」


少なくとも怒りに我を忘れかけてますね……


「これは妄想です。私の頭の中で描かれた絵空事です」


「っ!!妄想……絵空事……?」


「ええ、そうです。メリルさんが言ったのですよ?妄想虚言であっても聞かせて欲しいと」


そう言うと、急激に怒気が萎んでいく。はあぁぁぁぁぁぁ………何とかなったぁぁぁ……

あ、メリルさんも落ち着くためか、深呼吸してる。


「落ち着きましたか?」


「ええ、大変お見苦しいものをお見せしました。申し訳ございません」


「いえ、こちらこそ面白くもない話をしてしまいましたので、お互い様でしょう」


「お心遣いありがとうございます」


「どういたしまして」




…………う、うーむ………気まずい……こんな時どんな顔して、どんなこと言って、どんな行動したらいいかわからないの。


「ふふ……まさかカヅキに落ち着くように諭されるとは思いませんでした」


「そうですね。私もこんな事態になるとは思いませんでした」


妄想をたれ流したら絶望のオーラを喰らいかけたとか、笑い話にもならんわ……


「それにしても……先程の話は、本当にただの妄想なのですか?」


「ええ、そうですよ。話を聞きながら、ふと思い付いただけのただの妄想です」


「それにしては真に迫っていたというか、今思い返せば、まるで既に知っていたことを、私の話に合わせて改変したかのように思えますね……」


「知っていたことなどありませんよ?」


「それにしては、全く淀みなく話していましたね。それこそ何度も読んだ物語を朗読するように」


ぐぬぬ……あっさり見透かされてる……くっそぅ、なんでこの街には、やたら察しのいい人ばっかりいるんだ。ここは最初の街なのに、住人がいろんな意味で高ランク過ぎませんかねぇ!

あー……さらに見透かそうと、メリルさんがジッと見てくるぅぅぅぅ……


はっきり言って自分の内情とか、人に言いたくないんだけどなー………ドツボに嵌った挙句、女神に泣き顔を見られるという失態を演じたばっかりだし、とりあえず復活はしたものの、まだ若干情緒不安定な気がするから、また涙があふれる可能性が否定できないのが困る!精神耐性仕事して!!


し、視線が外れねぇ……うーむ、少しだけ話して、方向転換させるしかないな、これ………


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