第63話:貴族の血筋とは?
「ですが、貴族としての能力を有さない者は、貴族として認められないのでしょう?」
「なるほど、だから”生まれてすらいない”と考えたのですね」
「はい。生まれてすらいないのであれば、失敗することもありませんから」
「確かに。しかし違います。貴族の子として生まれても、その子は貴族ではなく人間として生まれてくるのです。血筋は重要ですが、それだけでは貴族になり得る可能性が高いというだけで、普通の人間の赤子と何ら変わりありません」
「つまり貴族からも貴族は生まれないと?しかし貴族となり得る人間として生まれる……ということは、条件次第で貴族に種族が変更される?条件としては血筋と記憶と実務及び戦闘能力でしょうか?ですが、条件を満たせなかった者の処遇は?普通の人間の赤子として生まれたとはいえ、貴族の血筋を野に放つとは思えませんし……」
そんなことをすれば、管理できない貴族の血筋がどれだけ増えるかわかったもんじゃない。
「本当によく考えるものです。概ね正解と言っていいでしょう。貴族となれるのは、条件を全て満たした貴族の血筋のものだけです。そして、その条件達成は言うまでもなく困難です。それ故に貴族の血筋の子供たちは幼い頃から、貴族となるための教育を望むかどうかの決断を求められます」
「え?幼子に貴族となるかを選択させるのですか?」
「そうです。貴族の子だから貴族にならなければいけないわけではありません。その子の人生はその子のものです。親だからといって子供の将来を勝手に決めていいはずがありません。故に本人に決めてもらうのです。そして貴族なると決めたからといって、その時点で人生が決定するわけでもありません。いつでもやめて構わないのです。条件を満たすための勉強も訓練も過酷です。道半ばで挫折する者も多いのです。挫折し、やる気がなくなったことを続けていても身に付きません。それならば行く道を変え、やりたい事を探した方が良いでしょう」
「それだと、貴族になるものが居なくなってしまうのではありませんか?」
挫折したり、やる気をなくしたらやめていいし、そもそも貴族になりたくなかったり、勉強や訓練が嫌なら最初から断ることもできる。
それって、貴族となることに相当固執してないと続かないってことなのでは?
そのまるで篩にかけるような状況下で、過酷と言われるほどの勉強と訓練を、進んでしたがる者がどれだけいるというのか……
「それがどういうわけか、貴族の子供たちの中でも貴族になろうとしない子は極少数なのです。おそらく血筋が関係していると思われますが、生まれた時からある程度知性があり、非常に好奇心が旺盛な子がほとんどです。特に知識に貪欲で1年もすれば自ら本を求めるようになります」
「それは……本当に人間の赤ん坊なのですか?その時点でもう完全に普通の人間の赤ん坊とは別種ですよね?」
「種族自体は人間なのですよ?ですので血筋が関係していると思われていますが、実際に何が原因でどういった理屈で差が出るのかは、未だに判明しておりません」
えー……こんな超人みたいな人たちでも原因特定できてないのか……
「血筋が関係するのであれば、両親の能力や性質が遺伝すると思われますが、これがまるで関係のない能力や性質が発言することも珍しくありません。むしろ完全に一致する方が稀です。例えば、水魔法を使う軽戦士と土魔法を使う重戦士の両親から、闇魔法と木工に適性のある体力の低い子供が生まれたりもします」
これは酷い、何一つとして両親の特徴を受け継いでいない……両親もさぞ困惑することだろう。
「そのような例が珍しくないと?」
「大抵は1つ、多くて2つ両親と同じものが混じる程度で、どのような子が生まれるかはまるでわかりません。それに対し、普通の人間の赤子は割と普通に遺伝します。両親をよく知る者たちなら、親子だと判断できる程度には」
「でも両親が貴族がだと、その遺伝が起こらない……まるで……っ?!」
それって、まるでキャラクリで全能力をランダムにしてるような……?
ステータスもスキルもスキルの取得数も全部、ランダムガチャで決定しているとしたら?運営側のゲーム的視点で見るなら、貴族の夫婦の間に子供ができるということは、新規キャラを作成するのと何も変わらない。
だが、いくら貴族限定とはいえ全世界、全種族規模なのだ。毎回個別に設定などしてられないだろうから、自動的にキャラ作成できるようにしたのではないか?
そしてもう一つの懸念事項、それはこの運営の頭のおかしい開発陣だ。
種族関係の設定だけでも、頭のおかしいことをやらかしてるここの開発陣が、面倒だからと単なる子供キャラの自動作成機能だけで済ますだろうか?いや、まさかね?奴らに限って、そんなはずはないだろう。確実に何か仕込んでるだろうなー……
その一つが貴族の子供の初期値完全ランダム化なのではないか?両親の遺伝だけのコピーではなく、ランダム故の個性的で面白いオリジナリティ溢れるキャラを作れるように隠し機能とかを実装してても私は驚かんぞ!
「カヅキ?どうかしましたか?」
「ああ、いえ……少し余計なことを考えてしまったようです。お気になさらず」
「………その余計なこととは何か、良ければ教えていただけませんか?」
「え?」
「あなたはとても賢くて頭の回転も速い。ほんの僅かな言葉からでも答えを導き出すことができる。そんなあなたが何かに気付き、考え事をした。私は私の知っていることしか話していないのにも関わらず。私は自分の語った言葉からは何も気付けません。ですがあなたは気付いた。それは一体何なのでしょうか?そして余計なことを考えたということは、考える余地があったということ。あなたが気付いたことと考えたこと、それはきっと私では気付くことも知ることもできないことなのでしょう。それをどうか私に教えていただけないでしょうか」
待ってぇぇぇぇぇ!私が考えたのはシステム的なことだから!運営というか開発陣に関する、所謂この世界の外側のことだから、説明できないんだよぉぉぉぉぉ!
ええー……どうすりゃいいんだ、これぇ……この状況だと何も言わないわけにもいかんし、話の流れ的におかしくならないように、さらに矛盾が出ないように気を付けたうえで、適当な話をでっちあげるしかないな……
難易度高すぎね……?




