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第62話:貴族とは?


「ありがとうございます。おかげで随分楽になりました」


「いいえ、これはこちらの失態です。客人に対して、使用人が不快感を与えるなどあってはなりません。ましてや、主人もそれを指摘されるまで気付かないなど、貴族として恥以外の何物でもありません」


「今回はさすがに例外でしょう。ただでさえ相手が渡来人なのです。それに加え、非常に特殊な事態により能力に急激な変化があり、本来知覚されるはずのないことまで知覚されるなど、想定外でしょう?」


「確かにそういう考え方もあるでしょう。ですが貴族は別です。貴族に例外はありません。何故なら一度例外を作れば、そこに付け込まれるからです。さらに言えば、貴族にとって失態そのものがあってはならないものなのです。貴族の失態はすぐに広まります。そして決して消えることはないのです。失態を招いた本人が死のうと、家名がある限りその汚名が消えることはありません。例え没落しようと、一族が死に絶えようと消えることはなく、そのことを知る者たちが全て死に絶え、この世界からその情報がなくなるその時まで、貴族の失態が消えることはありません」


ええー……何それ、いくら何でも厳しすぎない?たった1回ミスするだけで、人類もしくは文明が滅亡するまで語り継がれるとか嫌すぎる!


「それは……さすがにやり過ぎでは?そこまで執拗に失態を広めなくてもいいではありませんか。貴族だって人間なのですから失敗くらいするでしょう?」


「あなた方、渡来人の故郷のことは知りませんが、この世界では、貴族は貴族という別種族としてみなされるのです。私たちのような2足2腕5指を持つ人型生物を人類種と呼び、その中に人間族や獣人族や魚人族などがおり、それぞれの優性種が貴族となるのです。これが人間の場合、人間貴族と呼ばれ”失敗しない統括種族”として認識されるのです」


「失敗しない統括種族、ですか?」


「ええ、そうです。では何故そう呼ばれるのか?その答えが失態の語り継ぎなのです」


………え?ちょっと待って……それって、もしかして……


「まさかとは思いますが……過去の失態を語り継ぐことで、同じ過ちを繰り返さないようにしている?」


「ふふ……カヅキは理解が早いですね。ええ、正解です。私たち貴族は、失態を全て記憶しています。そして、それぞれの失態に対する対処法と予防策も全て記憶しています」


はい?いやいや、待って?それはおかしい!失態全てって一体いくつあるのさ?

失敗しない統括種族なんて二つ名がつくくらいだ。ほんとにありとあらゆる失態と、その対処法を語り継いでいるのかもしれない。だが、それら全てを記憶できるものなのか?


もし私の予想が正しければ、その失態の範囲は政治、経済はもちろん、戦闘、戦略、生産、私生活に自然災害なども含まれるはず……ありとあらゆる状況下で失敗と成功を繰り返し、対処法と予防策を確立して語り継がせてきたとする。おそらく文献としても残してあるのだろう。

だがしかし、その文献に収められている情報量は一体どれほどあるのだろう?まさに膨大としか言いようのない量になっているはずだ。それを全て記憶している?そんなバカげた記憶力を貴族全員が持っているとでも?さすがに信じ難いが、メリルさんが嘘や冗談を言っているとも思えない……


それに話の規模からして、これは貴族全体のことのはずだ。それはつまり、貴族として活動している全員、それも貴族を有する全種族規模で、失態に関する全ての情報を記憶しているということになるのでは?

いや待て……貴族って統括種族だよな?それは単に記憶しているだけではなく、その膨大な情報を利用して統括、つまり人間の場合、街や国を運営しているってことだろ……?

ということは、記憶力・実務能力に加え、非常時には戦闘もできなきゃいけないのでは?防衛戦とかになった場合は、おそらく総大将をすることになるだろうから、戦略に指揮能力まで求められるのではなかろうか?

それもう、普通に万能キャラじゃねーか……


「……記憶だけですか?私の予想が正しければ、その記憶している情報量はかなり膨大なのではありませんか?その記憶力だけでも驚異的ですが、おそらくその対処法や予防策を実行するための実務能力も持っていると思うのですが、どうでしょうか?」


「本当に察しがいいのですね。たったあれだけの情報からそこまで導き出すとは……実に見事です。きっと今この瞬間も、あなたは様々なことに思考を巡らせているのでしょうね。

それから、その予想も正解です。ただ記憶しているだけでは、それを活かしきることはできないため、戦闘を含めた実務能力を求められます」


「そこまでいけば、もはや万能と言ってもいいくらいですね。そこまでの能力がなければ領地は守れませんか?」


「それも重要ですが、第一義として模範となることが求められるのです。私の場合ですと、人間かくあるべし、といったところでしょうか?」


「なるほど……ですが人、いえ生物には個体差があります。模範となるレベルまで能力を磨き上げられる者ばかりではないでしょう?それに何一つ失敗することなく成長できるとは思えませんが、貴族は幼少時から失敗することはないのでしょうか?」


「確かに、そういった疑問も出るでしょう。まず個体差はもちろんありますし、貴族の子が全て貴族になれるわけではありません。貴族とは失敗することがなくなった者たちの総称ですから」


うん?失敗することがなくなった…?ということは失敗自体はしているのか?

しかし………貴族が既に失敗しなくなった完成体だとするなら、未だ失敗を免れない子供は未完成体となるが……貴族の子供であっても貴族ではないのか?であれば貴族は生まれてこないということになる。


となればどうやって貴族は増えている?代替わりしている以上、血の繋がった子孫に受け継がせているはず……先の言葉からも子供自体はいるのだ、決して大人として貴族として完成された状態で生まれてくるわけではない。……ん?今何か…?私は今、何を考えた?

……子供はいる。違う。大人として生まれてこない、でもない。完成された状態で……それか!完成された状態で生まれるのではなく、未完成、いや不確定な状態で生まれる。それも違うな……不確定な状態にすることで、生まれはしたが何が生まれるかわからないことにしたのか?!


言わば卵。貴族としての能力を全て備え、完全体になれたなら殻を割って貴族として生まれてくる。それができなければ、殻を割ることなく中で息絶え、そもそも生まれてこなかったことにされるのではないか?


「事後承諾……貴族として完成すればよし。後継ぎが生まれたと公表し、完成しなかった場合は、そもそも生まれてすらいないことにしているのですか?」


「そういう受け止め方をされてしまいましたか。ですが違いますよ。例えどのような理由があろうと、生まれた命をなかったことにするような非道な真似は決して致しません。断言します」


うーむ、間違ったか……?あと考えられるのは、生まれてすぐに里子に出し、貴族として完成しない限りそのまま暮らし、完成した場合のみ貴族として戻る、だろうか…?


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