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第60話:事情説明


「おはようございます。マールさん」


「おはよう、カヅ坊…って、その肩にいるのはもしかして?」


「ええ、昨夜生まれました。名前はフィアです」


「おお!おめでと~。そっかそっか、無事に生まれたようで何よりだよ~」


「ありがとうございます。元気な子が生まれてくれて、ホッとしました。」


「うんうん、頑張った甲斐があったね。それにしても……生まれたばかりの雛でこの大きさかぁ。将来、かなり大きくなりそうだね~」


何しろ進化先不明だからねぇ……どこまで大きくなるか見当も付かないという。


「そうですね。それでもしばらくは雛だと思うので、小型リュックをフィアの寝床として使えるようにしたいと思いまして、相談に来ました」


「あ~、なるほどね。でも卵が入っていたから、普通に入るでしょ?」


「大きさ的にはそうですが、そのためには私がリュックを開閉しないといけないので、フィアが自分だけで肩とリュックを行き来できるようにしたいんですよね。まだしばらく戦闘する予定はありませんが、今後、戦闘になる際はリュックの中に避難しておいてもらおうかと思いまして……」


フィアも私と同じく、耐性はあるけど戦闘スキル全く持ってないからねぇ……いずれ、私がノーダメで敵を保持できるようになったら、レベリングさせようかと考えていたり。


「うーん…確かにフィアちゃんが自分で開閉できれば、それに越したことはないんだろうけど……さすがに嘴でリュックの口をどうこうってのは無理があるよねぇ……」


「やはりダメですか……」


「戦闘時の避難先としてすぐに入れて、しかも戦闘用ってことは、動き回っても落ちないようにしないとってことでしょう?簡単に出入りできるのに落ちないって矛盾してるよね?余程高度な魔道具ならともかく、普通のリュックに求める機能じゃないね~」


「そうですか。まぁ、ダメ元で聞いただけですので、お気になさらず」


そりゃ、そうなるよね。リュックという形はあるものの、実質的に生物可能なインベントリである。さすがにゲーム的にも認められないだろうな。


「うん、ごめんね~」


「いえいえ、元々そこまで都合のいいものは、さすがにないだろうと思っていましたので。それはそうと、少し話しておきたいことがあるのですが……」


「はいはい、それじゃ中に行こうか」


そして会話の漏れる心配のない作業部屋へ。




「それで、話しておきたいことってなにかな?」


「実は昨日…………」


と、昨日のモームさんとの会話からメリルさんの屋敷を出るまでのことを話す。


「何がどうなったら、そんな事態になるんだろうね~?相変わらずカヅ坊は、おかしなことばっかり起こすね~」


「別に私が起こしているわけじゃありませんよ?単に私の周囲で何かが起きているだけで、巻き込まれてるだけです」


「でも起点はカヅ坊だよね?モームさんに裁縫をやるつもりって言ったから、メリル様を紹介されたわけだしね~」


いや、あれは事故でしょ?宿の女将がアポもなしに貴族と会えるとか思わんて……


「あんな雑談レベルの会話から貴族に繋がるとか、予想の斜め上にも程があると思うんですよ。普通は街中で仕事をしている職人に話を通すくらいが精々でしょう?」


「モームさんを甘く見過ぎた結果だね~。カヅ坊は、もっと自分が息子同然にかわいがられている自覚を持った方がいいんじゃないかな?」


「目を掛けてもらっている自覚はありますし、感謝もしていますが……だからといって貴族の屋敷に直接訪問して、頼み事するのはおかしいでしょう?」


「かわいい息子の為に母親が全力を尽くすのはおかしくないでしょ?多分だけど、戦闘方面もそのうち結構な人を紹介されるんじゃないかな~?(にやにや)」


やべぇ、否定できん……裁縫が元辺境伯爵夫人なら、剣なら元聖騎士団長とかが出てきたかもしれんな?では私が言った短剣と弓は?元暗殺者とか出てこねーよな…?


「………どうにかなりませんかね?」


「あたしには無理だね~……何しろ、ただの雑貨屋だからね~。まぁ、調薬の練習ついでに愚痴くらいはきいてあげるよ?」


「ありがとうございます。その時が来たらお願いします。ああ、それと…裁縫もすることになったので、調薬と錬金術を教わりに来れなくなりそうですが、裁縫が終わってからでもいいですか?」


「そうだね。こっちはいつでも大丈夫だから気にしなくていいよ~」


「助かります。さすがにどれだけ掛かるかわかりませんから、その前にきちんと話して決めておかないと、不和の原因になりますからね」


「律儀だね~。店の方で「用事ができたからしばらく来れない」って言うだけで十分なのにね~」


「さすがに師事している相手に、そういうわけにもいかないでしょう……」


「事情はわかったからこっちのことは気にせず、じっくり裁縫を学んでくるといいよ。せっかく元サブギルマスに教えてもらえるんだから、知識も技術もあるだけ全部、自分のものにしちゃえばいいんじゃないかな~?」


はい?今、何やらおかしな単語が出てきたような……?

確か”元サブギルマス”って言わなかったか?しかも話の流れからすると、メリルさんのことを指すっぽいんだけど……


「えっと……今、元サブギルマスとか言いませんでした……?」


「うん、言ったけど?あれ?もしかしてこっちは知らなかった~?」


「知りませんよ?初耳です。というか、メリルさんは貴族でしょう?高位の役職を掛け持ちとかできるんですか?」


「掛け持ちどころか、冒険者もしてたよ~。しかもかなりの腕前で、確か…B級手前くらいまで行ってたはずだよ~?」


B級って確か、数えるほどしかいない英雄級だったはず……その手前まで上り詰めていたと?

つまりメリルさんは、貴族であり、元裁縫ギルドのサブマスでもあり、英雄手前の冒険者だった……?

いや、どんだけ設定盛ってんのさ!ていうか盛り過ぎだろ!強キャラにも程がある!!

あっ………何だろう、とても嫌な予感がする。しかもどうしてか、その予感が外れる気がしない……


「つかぬことをお聞きしますが……その、メリルさんの使っていた武器というのは……」


「うん、その顔だともう予想できてるっぽいけど、カヅ坊が覚えようとしている弓だよ~」


ああぁぁぁぁぁっ!やっぱり、やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁっ!!

そりゃ、伝手があるならそこに行くよなぁ……何しろ口にした3つのうちの2つ、裁縫と弓をどっちも高レベルで備えており、しかも信頼できる相手だもの。むしろ行かない理由がないよね?


「そう、ですか……は、ははは………」


「さっき聞いた話からすると、多分弓も教える気満々なんじゃないかな~?こっちは当分お預けになりそうだね~?」


「はい、そうですね。おそらく……いえ、ほぼ確実にそうなるんじゃないかと私も思います……」


「まぁ、どれだけ掛かるかわからないけど、頑張れ~。応援してるよ~」


「ありがとうございます。精一杯頑張ってきますね」


その後、行く前から既に疲弊した気がするけど、気を取り直してメリルさんの屋敷に向かった。


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