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第6話:司書見習い


え~と、なになに……最初の街であるイチハには東西南北にそれぞれ門があり、外と行き来出来る様になっているようだ。

街の南南東から南西までが平原で、それ以外はほぼ森に覆われていると…

付近の街は南南東にある森の端付近を通る街道の先と、西の森の中を通る街道の先にあるようだ。MMOの最序盤なのに分岐してるのね。森は西が一番危険度が低く北と南東がその次で、そして北東から東辺りが一番高いらしい。


最寄りの街までは……え?徒歩で約6時間もかかるの?!遠くね?

あ~、でも午前8時から14時までハイキングすると考えれば、そこまでではないのか?まぁ、狩場が広い方が渋滞が少なくて済むと考えよう。頻繁に移動するとなったら結構辛そうだけど……


気を取り直して、次は植物に行こう。MMOなら薬草採取とかお約束だしね。序盤のついでに出来るクエストの定番だし、すぐに見分けられるようになれば資金稼ぎにもなるだろうし、多分調薬とか錬金術とかでポーションを作れるようになるはず。

それにしても、植物系だけで6冊もあるとは。しかもどれも読み応えばっちりな厚みを誇るため、これだけで結構な日数掛かるんじゃなかろうか…


何かチラチラとこっちを見られてるっぽいけど悪意は感じないし、そもそも珍しすぎる来館者だからね。そりゃそうなるよねぇ……

漸く1冊読み終わり伸びをしていると、おそらくこちらが読み終わるのを待っていてくれたのだろうマイアさんに声を掛けられる。


「カヅキさん、少しお時間よろしいでしょうか?」


「はい、丁度1冊読み終わった所なので大丈夫ですよ」


「ありがとうございます。ではこちらに」


そう促されマイアさんに付いて行くと、カウンターではなく別室に通される。


はて?呼び出しを受けるような事はしてないはずだが…


「そんなに身構えなくても結構ですよ。カヅキさんの今後の身の振り方についてお聞きしたかっただけですので」


「身の振り方ですか?」


まぁ、確かにどこのギルドにも寄らずに身分証も持たずに図書館を探し出し、手伝いまでして本を読もうとする変人の動向は気になるよね~。


「ええ、今日一日カヅキさんの様子を見させていただきましたが、おそらく今後も当館に通いそうだと思いまして」


「はい、そうですね。まだ1冊しか読めてませんので」


「この後、どこかのギルドに行って登録なさいますか?」


「あぁ~…まだいいかな?どうせどこも混んでるだろうし、ここでいろいろ情報を仕入れてからでも遅くないと思いますし…」


スタートダッシュしようとしてる連中が集中してるに決まってるし。


「そうですか。ではどのように生活、金銭の取得や宿などはどの様に考えてらっしゃいますか?」


あ、何にも考えてなかった……どうするかな~?


「とりあえず、ある程度の手持ちはあるのでしばらくは大丈夫かと。それと宿はまだ決めてません。お金稼ぎは情報収集しつつ考えることにします」


何しろその辺全部すっぽ抜けてたからね……


「他の渡来人の方々は既にいずれかのギルドに登録し、大半の方々は我先にと街の外へと狩りに出かけたようですが、カヅキさんはそちらにご興味はないのですか?」


「う~ん、興味がないわけじゃありませんが、どうせ狩りをするならより安全に、より簡単に、より効率的に動きたいじゃないですか。そうなると事前に狩る相手の情報と狩場になる場所の情報、それとどの様に動いてどの様に狩るのが最適かを考えておく必要があると思うんです。なので私が狩りに行くとしたら、それらの情報を可能な限り集めてからですね」


ノーダメージ・最少行動・高効率っていいよね~


「なるほど…と言うことは、必要な情報を集め終わるか、あるいは手持ちが寂しくなるまで当館へ通い続けると?」


「そうなりますね。」


となるとこの後は安めの宿を探しに…いや、その前に身分証を手に入れる方が先か?


「それでは明日以降も当館に通うようですが、身分証はどう致しますか?」


「となるとギルドかぁ、まだどんなものかもわからないのに飛び込む気にはならないんですよね…」


面倒なノルマとかあったら困るしね


「でしたら、図書館に所属しますか?」


「え…?」


「カヅキさんは渡来人ですが、今までの観察結果から”司書見習い”として採用可能と判断致しました。」


「もしかして、その役職で身分証を?」


「はい、もちろんお仕事はして頂きますが、多少なりとも給金も出ますよ」


「申し出はとてもありがたいですし、助かるのですが……それは貴女の一存で決めていい事なのですか?」


実は図書館長でしたとかいうオチじゃなかろうな…?


「ふふ…実は他の職員とも既に話し合いは終わって承認済みなんですよ。ですのでそのような心配はご無用です」


「私は渡来人ですので、ここに定住するわけではありませんし、司書という役職に縛られるつもりもありませんよ?」


やりたい事もいっぱいあるしね~


「ええ、それは承知しています。その役職はあくまで図書館へ入館するためのものです。あなたはいずれこの街を離れるのでしょうが、別の街へ行っても知識を求めるのでしょう?」


「そうですね。もっとも知識だけを求める訳ではありませんが」


「だからこそ、その役職は必要でしょう?”どこの図書館であろうとも”挨拶一つで入館・閲覧出来るのですから」


これは……どこかで何かのフラグ踏んだか?話が出来過ぎてるし、確実に退路を潰しに来てるのが、またなんとも…


「……はぁ~~、参りました。ご厚意、ありがたく頂戴致します」


まぁ、ここまで来たら突き進むしかないかぁ……

こういう話の流れになる理由は不明だが、得難い有用な役職を得られるのだ。

向こうにどんな思惑があるにせよ、ありがたい事には変わりはない。提案に感謝しつつ、飲み込まれない様に気を付けて話を進めよう。


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