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第50話:過保護女神の謀


では、それは一体何者なのか。

そもそも、それが可能な者がどれだけいるというのか。

それを可能とするのは、おそらく女神を除けば運営くらいのものだろう。

だが、運営がこんなことをするだろうか?


運営がこれをするためには、私の動きを常に把握し続けなければならない。そのためには24時間体制、しかも一瞬たりとも見逃すことなく監視、対応するために、最低でも常時2人体制にしなければならないだろう。

それも緊急時、即座に判断や対処ができる有能な人材を、3交代だったとしても合計6人も張り付かせることになるのだ。そこまでのリソースをたった一人のために消費させられるものなのか?

答えは否だろう。余りにも割に合わなさすぎる。


何しろ、私は運営から見て、特にこれと言って利になる行為をしてないからなぁ。

むしろ、クレーム入れて面倒な対処させた側だから、別の意味で要注意対象としてチェックはされてるかもしれんが、それだけに重要キャラを何人も集中して接触させるとは思えないんだよなぁ。


それに引き換え、あの過保護女神なら十分やりかねないんだよなー。

とにかくスキルや称号を与えて、より強く、より安全にしようと虎視眈々と狙っているからな……

今頃、直接与えるのがダメなら、住人を使って覚えさせればいいじゃない!とか思ってそうで困る。


それに加えて、前に卵を投げてきた時のあの言葉があるからなぁ…

”不安や苦労を解消するための人員を送り込みますから”って言うからには、おそらく準備されてるってことなんだろう。


不安の解消ってことは、例え誰がどんな陰謀を張り巡らしたとしても、私を利用したり害そうとしたりできないようにすることが可能な人物、もしくは部隊ってことだろう。

これって多分、単なる腕利きの護衛ってだけじゃなくて、仮に陰謀があった場合、その主謀者や実行犯を含め、陰謀ごとなかったことにできる手合いなのでは?


苦労の解消の方はおそらく、お金や物資、あるいは人材の調達などだろう。

だが、どれもそれなりの人数が必要となるため、自分の領地でもあれば別だが、それだけの人数を送り込むことは難しいだろう。

となれば、”送り込まれる人員”として考えられるのは、状況を的確に読み、それら全てを把握し、完璧に使いこなせる指導者的な人物を1人から数名といったところだろう。


だが、ここで冷静になって考えてみよう。

それだけのことができる指導者って、普通に国を動かせるレベルだと思うんだ。それこそ国王とか宰相になれる人物なのでは?


そして困ったことに、その指導者に当て嵌まりそうな人物に思い当たりがあるんだよね…

それも既に一度会っていて、しかも目を付けられていそうな人物に……

そうだよ!あのやたら頭の切れるおっかないお姫様だよっ!!

王都で手ぐすね引いて待ち構えているようだが、王都に近づかなければ、名が売れなければ、王女ルートには入らずに済むと思ったのに!何処かの誰かが私の代わりに入ってくれると思ったのに!

正規ルートが使い物にならないと判断したら、迂回ルート作って繋ごうとしてくるし、勘弁してくれぇぇぇぇぇっ!!




エミーリア・フォン・エルメキアは第4王女だ。

王位継承権は低いとはいえ王族である以上、繋がりを持つためには相応の条件を満たさなければならない。

その条件というのが、爵位をはじめとする地位や名声などである。

それらを持たぬただの平民では、声を掛けるどころか姿を見ることすらままならない。


故に私はそれを逆手にとって、日々の活動が口の端にも上らぬような地味な成果しか出ないことばかりをしている。

単に戦闘に至る準備ができておらず、未だに準備中ということもあるのだが……所謂、攻略組と呼ばれるプレイヤーたちが目覚ましい活躍をして、目立ち、慕われ、王女やギルマス連中がそっちに注目するのを待っているのもまた事実。

このままいけば、いずれ王女も他に目移りするだろう、もしくはさせられるだろうと思っていたのだが……そうは問屋が卸してくれないようだ。

まさか最初の街に、元辺境伯爵夫人などというアンカーが打ち込まれてるとは、想定外にも程がある。


元辺境伯爵夫人が最初の街に居ること自体は、それほどおかしなことではない。最初の街を含む周辺一帯が辺境伯領だとすれば、領内全ての街に本館や別館があったとしても、驚くほどのことではない。


では何が問題なのか。それは裁縫の師匠として出会ったことだろう。

ただ単に師匠となっただけなら、これほど悩んだりしない。

厄介なのは、師匠となった直後からだ。師弟になると口にするまでは、裁縫好きの老婦人だった。生産の才能について話している時も変化はなかった。けれど、メリルさんが自分が師匠として裁縫を教えると言い、それに答えた途端に、態度が豹変したのだ。


そう。まるでその返答がスイッチであったかのように、急に自分を祖母として扱うようにと接し始めた。

それこそ、弟子にするという条件をクリアしたのだから、もう遠慮はしないとばかりにお婆ちゃんと呼ぶことを求めた。

その問答中で既に孫呼ばわりしていることも考えれば、いずれ正式に孫にしようと動き出すのは想像に難くない。

そして、その”元辺境伯爵夫人の孫”という立場こそがアンカーなのだ。


爵位は通常であれば、上から順に侯爵、辺境伯爵、伯爵、子爵、男爵になる。このうち侯爵は王族の血筋を受け入れた王族に連なる一族という括りになる。

そのため、王族以外では辺境伯爵が最上位となり、王族と婚姻可能なのは辺境伯爵もしくは伯爵までと言うことが多い。それは別な言い方をすれば伯爵以上であれば、王族を娶ることができるということでもある。


それはつまり、王位継承権の低い第4王女であれば、辺境伯爵家に嫁ぐことが可能ということになる。

これならば、わざわざ私が王都に行くのを待つまでもない。元辺境伯爵夫人の孫というアンカーを辿って自分から嫁ぎに来ればいいのだから。


本来の予定としては、私が王都に到着するまでの功績を利用して爵位を与え、それから婚約、婚姻という流れだったのかもしれない。だが私が意図的にそうならないように動いたため、その案は使えなくなってしまった。

だから、次は気付かれないように布石を敷いたのだろう。おそらく、他の生産や戦闘の師匠となるべく用意された人たちもいたのだろう。誰の所に行っても爵位を持つようになっていたのではなかろうか?


女神によって、案内役と王女に繋がるアンカーが用意され、その案内役がアンカーまで私を誘導する。予めアンカー以外の人たちへ案内しておくことによって、私の警戒を薄れさせた。今思えば、卵も意識を分散させるための策の一つだったのかもしれないが、今更気付いても後の祭りである。


今回は女神にしてやられたな……まさかこんな迂遠な事をしてまで、王女との繋がりを持たせようとするとは思わなかった。

くっそ。おのれ女神。このまま黙って王女を受け入れると思うなよ?私は一人気ままに生きるんだよ!



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