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第5話:Infinity Frontier Online


── Infinity Frontier Online ──


それは発表以来世間を騒がせている最新作のVRMMORPGのタイトルだ。

ゲームの内容もさることながら、それ以上に法整備のみならず犯罪者の確保への凄まじいまでの意欲と徹底ぶりが話題になっているのだ。

何故ならゲーム内で犯罪を行うと、その時点で警察に通報され身柄の確保に動き、その間に証拠としてゲーム内のログや動画や脳波データなどが提出されて裁判の準備がなされ、迅速に開廷されることになっている。

その犯罪とされる内容も殺人やテロだけでなく、恐喝や詐欺、痴漢や盗撮、悪意や害意のある言動も含まれるため、他者を踏み台にするような言動をした時点で現実世界でもその悪行や思想が公表され、多くのものを失うこととなる。


またプロモーションではメインテーマが「努力」である事、それに基づく独特なスキル取得システムと世界の概要を発表し、”コツコツと努力し続けられる善人”にとっては非常に住みやすい世界ではあるが、すぐに結果を求める人や自分が他者より上に居ないと気が済まない人にとっては生き地獄と感じられるだろうと締めくくられていた。

プロモーションと共に犯罪者対策も発表されたために、ゲーマーのみならず世間一般でも話題に上るようになり、また一部の目聡い企業などでは「このゲームを社内で普及させれば”膿出し”になるのではないか?」などと画策する者も居たとか…




『さて…こちらではこれくらいでいいじゃろ。あやつが気ままに暮らすためにも、邪魔者は少ないに越したことはからのぉ…』






サービス開始当日、ついに解禁されたログインにより、最初の街であるイチハの中心部からやや南にある大広場に大勢の渡来人が続々と現れ、驚いたり喜んだりしているその頃…


小柄で細身なその体躯は、見ようによっては15歳以下に見えなくもないと言ったところだろうか。ややたれ目で優し気な面差しは、ともすれば頼りなさげにも見えなくもないが、その黒に近い深く澄んだ紫の瞳は少しでも多く情報を得ようと忙しなく動いている。

髪色は黒主体だが、所々暗色系の濃い緑や青や紫色の部分が混じっており、その腰まで届きそうな長さと相まって、深い森の茂みであれば身を屈めるだけで隠れられそうな色合いであるが、その艶やかさと整った顔立ちのおかげで街中では少女と間違える者も居そうだ。

そしてその少年は、周囲の建物より遥かに大きな建物の正面にある重厚な扉の前に居た。


ふぅ、結構掛ったなぁ……建物は大きいのに意外と目立たないし、かなりわかりにくい立地してたが……なんでこんな所に図書館建てたし……


「よし、入るか」


扉を開けると少しひんやりした空気と図書館特有の匂いが内側から漏れ出てくる。

中に入ると少し開けた空間があり、右側に少し行ったところにあるカウンターの内側には司書であろう女性が2人、左側に少し行ったところに上階へ続く階段が見える。

書架と本の数は「ほんとにここ最初の街か?」と言いたくなる程の量である。

さて、まずは司書に話を…


「すみません、渡来人のカヅキと申します。初めまして」


「っ!?………初めまして、当図書館で司書を努めておりますマイアと申します。渡来人と言うことは当館のご利用についての説明でしょうか?」


「はい、まだこちらに来たばかりなので何も知らないため、まずは本で知識を得ようと思いまして真っ先にこちらに来ました」


「真っ先に…もしかしてギルド等に登録せずにこちらへ来られましたか?」


「はい、そうですが…何かまずかったですか?」


ヤベェ…やらかしたか……?


「各ギルドで発行されるギルドカードは身分証でもあるため、街の出入りや各種施設の利用の際に提示を求められることがほとんどです。当館も身分証の提示と入館料を頂くことによって利用が可能となります。」


「つまり、今の私では施設を利用出来ないということですね…」


「……本来であればそうなります。ですが渡来人であること、そして知識を重要視すること、そして入館以後の言動を考慮しまして、”司書のお手伝い”という形でなら入館を許可します。いかがでしょうか?」


「………答える前に、その”お手伝い”の内容を教えていただけますか?」


内容も知らずに安請け合いはさすがに…いきなり本の修繕とか言われても困るしな…


「はい、もちろんです。まずは返却された本を書架に戻して頂きます。そうする事によってどこにどんな本があるのか、おおよそ分かる様になるかと」


「他にもありますか?」


「あとは掃除ですね。何分広いので手間が掛かるんです。それだけして頂ければあとは自由に読書をされて構いませんよ」


「わかりました。それではよろしくお願いします」


「はい、では用意しますので少々お待ちください」


そうして簡単な説明を受けたら、戻すべき書架の場所を教えて貰いつつ本を戻していると、気が付けば2時間程経過しており、その後掃除をしてから休憩に入ることに。


「お疲れ様でした。この後は閉館時間まで自由になさって結構ですよ」


「マイアさんこそお疲れ様でした。もしよければお勧めの本や知っておくべき知識があれば教えて貰えますか?」


「そうですね…まずは周辺の地理と動植物の知識でしょうか。それらの知識を求めているうちに次が見つかると思いますよ」


「ありがとうございます。まずはそれらを読破してみます」


「ええ、それではまた何かありましたらカウンターまでいらしてください」


「はい。いろいろとありがとうございました。失礼します」


さて、これで漸く本を読めるようになったわけだが……とりあえずお勧めに従って周辺地理を把握してから、植物>動物の順かな?

おそらく薬草とかあるだろうし、他にも食材になるやつとか木材についても知りたいし、動物は後回しだな。


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