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第48話:称号の効果


「生産の才能、ですか……そんなものが私にあるとは、とても思えませんが…?」


さすがにねぇ……

そこまで露骨なチートはないだろう。名前の通りなら生産に関わる全てにバフが掛かるような感じだし、いくら何でもやり過ぎだろう。

前に見たステータスにもそんなものはなかったし、生産の補助スキルのようなものではなく、生産に対する考え方や心構え的なものなのかもしれない。


「そうでしょうね。それは生産活動をしている時に自然と発揮されるものですから、自覚は難しいでしょう」


「……生産に向いてないと言われるよりずっとマシですし、実感はありませんが喜んでおくことにします」


「ふふ……そうね。それにしても、まさか今頃になって、こんな才能の持ち主と出会うなんて思ってもみなかったわ。モームにも感謝しないといけませんね。カヅキをここに連れて来てくれて、ありがとう」


「メリル婆、あたしはお礼を言われるようなことは何もしてないよ。カヅキが裁縫をしたいと言ったから、教えてくれそうな人のところに連れて来ただけさね。それでカヅキは引き受けてくれるのかい?」


「ええ、喜んで。これだけの才能を見せられたのだもの、やはりなかったことにして欲しいと言われても「はい、そうですか」と引き下がるつもりはないわ」


「そうかい。カヅキ、よかったじゃないか。メリル婆が師匠をしてくれるってさ」


「ええ、そうね。カヅキ、これからはこのメリル婆が師となってあなたに裁縫を教えます。それでいいですか?」


「はい、ありがとうございます。これからよろしくお願いします。メリル…さん?」


「おや、メリル婆とは呼んでくれないの?」


「いや、さすがに実の祖母でもないのに、その…お婆ちゃん呼びするのには抵抗がありまして……」


ただでさえ初対面の女性なのだ。それに加えて貴族かそれに近い家柄の女性に対して、その呼び方をするのはさすがに怖すぎる。


「あら、いいわねぇ。それにしましょう」


「え?何がです?」


「これからわたしのことは”お婆ちゃん”と呼んでちょうだいね」


「……え、えっと………ですから、それは抵抗があると……」


「でも呼べないわけではないでしょう?」


あ、圧が凄い。ど、どうすれば……思わず助けを求めてモームさんの方を見るのだが…

微笑ましいものを見ているような顔で


「諦めな。そうなったメリル婆を止めるのは至難の業だからねぇ……別に呼んだところで何か問題があるわけでもなし、気にせず呼べばいいさ」


「え?いや、でも、相応の家格のある人物に対して、家族ですらない一般人が使っていい呼称ではないでしょう?」


「あら、そんなことを気にしていたのね。大丈夫よ。私が望んでいるのだから誰にも文句は言わせないわ。それにカヅキはもうわたしの弟子なのですから、家族も同然。だから何も気にせずお婆ちゃんと呼んでみて」


うおぉぉぉい、ヤバい!退路を塞がれてしまった……

モームさんを見るも、面白い物でも見てるかのように(実際そう思ってるんだろうけど)めっちゃ笑顔になってるし、メリルさんはメリルさんで、めっちゃ期待した目でこっちを見てるし……

えーい、ちくしょう!何かすげー言いにくいけど、言ってやるよ!


「………お、お婆ちゃん」


「うんうん、いいわねぇ……もう一回、もう一回言ってちょうだい!」


「えっと…お婆ちゃん」


「はい、お婆ちゃんですよ~」


そう言って、正面からギュウっと抱きしめてくるメリルさん。

えっと……これはどうすればいいの?どうしたらこの状況を抜け出せるの?


そもそも、どうしてこうなった?

初対面の、それも相応の地位を持つ老婦人に、こうまで気に入られるなんてはっきり言って異常事態だろう。同じ年頃の亡くなった息子がいて、その子にそっくりというわけでもあるまいに、ここまで好感度が高い理由なんてな……い………ない、けど……そういえば、私には非常に厄介な称号がいくつもあったなぁ……


あれは確か、気品と教養が高い女性が対象だったはず。さらに、もしもメリルさんがかつて令嬢と呼ばれる立場であったなら…?

それはあの第4王女と近い状態になっているのでは?触れこそしなかったが、初対面であるにも関わらず、隣に座り身を寄せてくるほどの異様な好感度。そしておそらく、今も下がっていないであろう好感度(思い出すたびに何かちょっと嫌な予感がするんだよね…あの王女)。


今回は相手が老婦人だったために、目に入れても痛くないほど溺愛している孫息子状態になっているのではなかろうか?

そして王女と同様であるならば、その好感度が下がることはなく、このダダ甘な溺愛っぷりが継続されるということでもある。それが何を意味するかといえば、それほどまでに可愛がる孫息子を手放すはずがないということだ……


街周辺で冒険者の真似事をしてる分には何も言わないだろう。だが遠く離れた街や国へ行くとなれば、行かないように引き留めるだろう。危険度の高いダンジョンなども同様かもしれない。

何故だろうか?場合によっては、引き留めるためにとんでもないことをやりかねないとさえ思ってしまう。


それこそ、独り立ちしたいから良さそうな所を探してくると言えば、工房やそこで作った物を売るための店を従業員ごと用意したり、モンスターの素材が欲しいから狩りに行ってくると言えば、求めている以上のものまで大量に買い付けたり、出会いを求めてとか言おうものなら、厳選した嫁候補を5人も10人も用意しそうな気がするのはどうしてだろう……?


場所こそ最初の街ではあるものの、これはもう実質的に、国に囚われかかっているのではなかろうか…?

やめて欲しい。私は何物にも囚われず、自由気ままにのんびりと生きたいんだ。


どこからか「オイオイオイ、終わったわアイツ」と言う声が聞こえた気がするが、幻聴であってほしい……


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