第43話:謎だったスキル
「うんうん、大分うまくなってきたし、そろそろ目を離して一人だけで作業してもらおうかな?」
「それは所謂、試験的なやつですか?」
「そうだね~。薬草から月光花までの6種を使って、今まで作った回復薬を一つずつでいいから全種作ってみてね~」
「わかりました。時間制限とかありますか?」
「時間は気にしなくていいよ~。薬師の場合は、如何に優れた効果を持たせられるかが重要だからね~」
「では教わったものを一通り作ればいいわけですね」
「うんうん、そうだね~。でもそれとは別にやってみたい事があるならやってみてもいいよ?カヅ坊がどんな効果を生み出すか興味もあるしね~」
「そんな楽しそうに言われましても……まずは一通り作り終わってから、余裕があったら試してみるということでいいですか?」
「じゃあ、それで~。店に行ってくるね~」
「はい、いってらっしゃい」
さてと……それじゃあ、まずは薬草から始めるとしますか。
…………………………
……………
ふぅ……これで後残ってるのは、月光花だけだな。
これがまた結構デリケートなんだよなー……まぁ、元々特殊な条件下でしか発生しない花だから、その扱い方が特殊になっていても不思議はないんだけどね。
月光花、か………
ファンタジーなゲーム世界だからこそ、存在できる花だよなー。
月の光がなければ発生することすらない、不思議な花。
その白い花弁には魔力が宿っており、MP回復薬の作成には欠かせない貴重な素材であり、その他の魔力に関わる薬にも有用な使用用途の多い花だが、採取者が案外少なく、結構いいお値段で売れるらしい。
マールさんは私が採取してきたものは、どれもありえないほど高品質だと言っていたし、その理由も説明してもらったから一応理解はしているつもりだが……
これが、ねぇ………
そう言いつつ、インベントリから月光花を出してマジマジと見つめる。
花弁を見つめながら、こんな小さな花弁に人の魔力を回復させるほど、大量の魔力が宿っていると思うと感心してしまう。
ここでふと、花弁以外の部分の魔力量はどれくらいなのだろうか?という疑問が頭をよぎる。
私が最適と思われる採取法として選んだ方法は、茎の中ほどから切って採取することで花弁に一切触れずに採取する、というものだ。
そのため、ここにあるものは花弁以外にも少ないが茎もある。この茎にも使い道はあるのではないだろうか?
当然、今まで多数の薬師、錬金術師が花弁以外にも興味を持って調べた事はあっただろう。
だが、現状で花弁以外が使われていないところを見るに、おそらく薬効なしと判断され、利用価値がないとされたのだろうが、本当にそうなのだろうか?
月光花はそもそも出自不明の特殊な花なのだ。花弁はもとより、茎にも葉にも根にさえも、何らかの使用用途があるのではないか?
ただ、まだ誰もそれに気付いていないだけという可能性もある。
実は研究用として、どの薬草類も少しだけだが、周りの土ごと掘り返して根も含め丸ごと採取してあるのだ。いや、だって、ねぇ……やっぱり何がどう役に立つかわからんから、とりあえず一式持っておきたいでしょ?できれば予備も含めて。
まぁ、今はまだそれどころじゃないので、それらの研究はいつかやるとして、とりあえず課題をこなしてしまおう。
よし!と気合を入れて月光花を手に取ると、花弁を採取するために集中する。
手順はしっかり覚えているけど、いざとなればフォローしてくれる人が、そばに居るのと居ないのとでは精神的な余裕に差が出るために、若干ではあるがやはり緊張してしまう。
その緊張を和らげるために、目を閉じゆっくりと深呼吸をする。
落ち着いたところで目を開けて月光花を見て集中し始めると……
月光花:
月光が花弁に当たることによって光合成をし、光合成によって発生した魔力が一定値を超えると実体化する夜間植物。
・花弁:
月光によって光合成を行い、魔力を生み出す機能を持つ。若干の魔力蓄積機能も備えている。
・茎:
花弁が生み出した魔力を葉と根へと送る機能を持つ。
外気に触れる表面部分は、魔力の漏出を防ぐために魔力伝達力が非常に低く、魔力遮断に近い能力を持つ。
内側は逆に魔力伝達力が非常に高く、魔力を保持したまま加工する事で魔力繊維の原料となる。
はい…?
何これ?何この情報?どういうことなの?!
こんな詳細情報どっから出てきたよ?!特に茎!お前の情報は、多分世界初だぞ!!
何でだ?何が起こった?
システムメッセージは来ていない。つまり女神が何かスキルを投げたわけではないな、多分…
同時に植物系のスキルが生えたわけでもなさそうだ…
あとは……こんな、まるで鑑定スキル(あるかわからんけど)みたいな詳細情報を知られるスキ…ル…
まさか”詳細知覚”か?!
あの謎の特殊スキルって、こういう効果だったの?
確かにその字面からは”詳細な情報を知識として覚える”と読み取れるけども!!
対象を持った状態で鋭敏感覚でそれに集中するとか、そんな発動条件わかるわけねーだろっ!
さすがにこの爆弾情報は公開できんな……
面倒事と厄介事がダース単位で突進してくるのが、目に見えている。
ここは何事もなかったかのように、教えてもらった回復薬を作ろう。余計な事はしない。
マールさんは私が作る新薬を楽しみにしているようだが、諦めてもらうことにしよう。
だって絶対に碌なことにならないもの。他者の期待に応えることより、自身の平穏の方が大事だからね!
落ち着いて普通の回復薬を作って、及第点取れればそれでいいじゃないか。
今日はもう採取に解体と、2つもスキルを獲得したんだ。もういいよ、十分だよ。お腹いっぱいだよ。
おまけに明日はご馳走が確定していて、本来の意味でお腹いっぱいになるのだ。
私に落ち着きと平穏をください。
自由気ままなのんびりライフさ~ん、あなたのお家はここですよー。集合時間過ぎてますよ~。早く来てくださーい!
来ない…悲しい………
とりあえず、これで全種完成したから、あとはマールさんが来るのを待てばいいかぁ……




