第39話:弟子入り
「それじゃあ、疑問も解けたことだし、カヅ坊は今日からあたしの弟子ってことでいい?」
「はい、よろしくお願いします。それと調薬が落ち着いてからでいいので、錬金術も教えてもらえますか?」
「え?カヅ坊も錬金術するつもりなの?」
「錬金術だけじゃなく、将来的には生産系全種、身に着けるつもりでいます」
「ええ~…それはさすがに無理じゃない?いくら何でも欲張り過ぎだよ~」
「すぐに結果を求めるから無理って思うんです。ゆっくり時間を掛けて一つずつ覚えていけば、やってやれないことはありませんよ、きっと」
「いや、どの分野の職人も一流になるまでに、最低でも数年は掛かってるんだよ?それも才能があるとされている人でもだよ!例えカヅ坊が全ての才能を持っていたとしても、合計で10年以上掛かるってことだよ?」
「別に一流になる必要はないんですよ?一人前で十分です。何かを作ろうとした際に何か足りない場合、それを作れないと困るでしょう?そういった場合でも全生産職の技能を全て一人前以上で持っていたら、作れない物なんてないでしょう?つまり、いつでもどこでも必要な物を必要なだけ自作できる程度の技術があればいいんです。誰かに見せて認められるような物を作る必要はありません。なので、そこまで時間は掛かりませんよ?」
「うわ~、誰にも認められる必要がないって、見事に自己完結してるね~…」
「知名度なんて、面倒事を呼び込むための餌でしかありませんから。そんな厄介なものは、欲しがっている何処かの誰かにあげればいいんです」
「うん、カヅ坊が絶対に目立ちたくないことはわかったよ。(でも一人前になるたびに別の生産職に乗り換えていたら、嫌でも目立つと思うんだけどね~…)」
「それで調薬の方はどうします?道具の説明とかからですか?」
「そうだね、ちょっと待ってね~…………これで良し、この空いたところに自分の道具を出してくれる?」
「はい………これでいいですか?」
「うん、それじゃ一つずつ詳しく説明していくね~」
「お願いします」
そうして一通り説明が終わった時点で今日はお開きになった。
そろそろ寝ないと寝不足になりかねないからね…
部屋に戻り、卵をリュックから取り出すとちょっと不機嫌そうな感じがしたのは、おそらくリュックに入れっぱなしだったからだろうな……
ごめんな~、今日はもう寝るだけだから機嫌直して~…
そう言いつつ、卵を撫でながらベッドに入り、抱き卵状態で寝る。おやすみなさーい。
微妙に卵が動いて、自身を押し付けるようにしていたように感じたのだが…気のせいだろうか?
そんなこんなで翌日となり、夜間採取を終える。
昨日と同じルートで結果もほぼ同じである(月光花の本数も同じ)
決して成長していないわけでは……
そして門を抜けた後、今日は先に宿へ行ってご飯を食べてから雑貨屋へ。
「おはようございます、今日も早いですね」
「おはよう、カヅ坊。いつものことだからね~」
「ちゃんと寝てるんですか?」
「寝てるよ~?お客さんが来ない時は、お昼寝もしてるよ~」
それはお店として大丈夫なのか?
「まぁ、そんなことはいいから、入って入って~」
「はい、それではお邪魔します」
そう言って店内に入り、マールさんの後について行く。
昨日と同じように隠し通路を抜けて作業部屋に入るわけだが…
「毎回、この順路通るの大変じゃありませんか?」
「う~ん、もう慣れたしね~。それに運動不足の解消にもなるし」
「ああ、確かに。適度な運動は頭の回転も良くすると言いますしね」
そんなことを話しながら、私はリュックから卵を取り出して頭に乗せる。
「え…?何してるの?」
「この子、直接触れてないと嫌がるんですよ。昨日部屋に戻るまでリュックに入れたままだったから、リュックから出して抱っこしたら不機嫌そうな感じがしたので、今日は出しておこうかと思いまして」
「そうなんだ…理由はわかったけど、何で頭に乗せるの?落としたら危ないでしょ?」
「大丈夫ですよ。夜間採取をしてる時はずっとこの状態で作業してますので、揺れもしませんよ」
あれだけ長時間乗せていればさすがに慣れる。
首を傾けさえしなければ、真横を向けるようにもなったのだ。
「確かにピタッとくっついてるみたいに動かないけど…なんで?普通は全く安定せずにすぐ落とすよね?」
「上半身、もしくは首から上の姿勢を固定した状態で、腰や腹筋で揺れを吸収するようにして、下半身だけで動けば安定しますよ」
「え?何?その動き…おかしくない?」
「慣れれば誰でも出来るようになると思いますよ?修練は結構大変でしたが…」
「そう、なのかな?あたしも結構な数の冒険者とか見てるけど、そんな動き出来る人見たことないんだけど…」
「まぁ、わざわざ人前でするような動きではありませんし…」
私も卵を乗せる必要がなければ、こんな事態にはなっていない。(姿勢制御の修練にはなっているかもしれないが…)
「えっと…それで…そのままでも作業出来るってことでいいの?」
「ええ、大丈夫です。問題ありません。」
「そっかー…うん、わかった。それじゃあ、今日は薬草の状態の見分け方をやろうか」
「わかりました。お願いします」
そうして、薬草についての講義が始まった。




