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第32話:月光花


ま、まぁ…これも修行の一環と思えばどうと言う事はない。かなり気を遣うが…

なにはともあれ、これで両手が使えるようになったので、改めて採取に取り掛かろう。


そうしてしばらく採取に励んでいたのだが、結局一息つくまで月光花は見つけられなかった。

うーむ、生息域はあってるはずだし、月夜という条件もあってるはずなんだけどなー…なんで見つからないんだ?

卵を抱っこしたまま、地面に横になって休みながら考えているが、調べた条件は全て満たしているはずなのに見つからない以上、何かが間違っているのだろう。

あるいはタイミング悪く、昨夜採りつくされた可能性も無きにしも非ず。


まぁ、何も今日中に月光花を採取しなければならないわけでもないのだから、そこまで気にする必要もないだろう。

月光花こそ入手出来なかったが、それ以外は結構豊作だったのだ。

月下草に微毒草に解毒草、痺れ草も少しだが入手出来たのは、かなり幸運ではなかろうか?これで月光花が入手出来ていれば、このエリアでの採取可能な薬草類は全種類集めたことになるのだから。


そんなことを考えながらお腹に乗せた卵を撫でていると、いつの間にか月がほぼ真上に来ていた。

街までの移動時間を考えると、ここに居られるのはあと1~2時間くらいか。

妙に心配されてたからな~…朝の時間帯に戻ってないと面倒事になりそうな気がするから、それまでには戻らないとな。


さて、もう少しだけこの周辺で採取したら移動するか…

そう思って体を起こすと、少し離れたところに月の光を浴びて淡く輝く花が咲いているのが見える。


うん?あの辺はさっき粗方採取し終わった場所なのに…なんでだ?

この周辺には花弁を持つ花の類は他にない。それ故に花があれば見逃すはずはないのに、今、目の前には確かに咲いている花がある。

周囲を見渡せば、他の場所でも同じように月光に煌めく花弁がそれなりの数を咲かせている。これはつまり、たった今条件が揃ったということなのだろう。


試しに一番近くで咲いている花に近づきよく観察してみると、やはり月光花で間違いないようだ。

おそらく時間帯、もしくは月の位置が関係してるのだろう。なぜこの情報が抜けていたのかは謎だが、それは後で考えればいいだろう。

今は採取が優先である。多分採取可能な時間はそう長くないだろうから、急ぎつつも丁寧に採取しなければ……


卵を頭に乗せ直し、月光花を採取していく。他の草も見受けられるが、時間制限があると思われる今は月光花のみを優先させることにする。

水場周辺の半分くらいは採取しただろうか。次の花に向かおうとしたところで、不意に月光花の姿が消えていく。

花弁が閉じるのではなく、茎も含めて初めからそこには何も生えてなかったかのように消え去ってしまった。


なるほど……

夜間、月光の当たる場所に一定時間だけ発生する、という感じなのか…

条件はまだこれから詰める必要があるが、とりあえず採取可能だと分かっただけでも十分だろう。

あと1時間ほど採取をしてから街へ戻るか。




なんとか夜明け前に戻ってこれたな。

とは言え、まだ街の壁が見えただけで到着はしていないので、その頃にはもう夜が明けてそうではあるが…


門が開いたら、さっさと中に入って宿に向かって飯食って寝よう。

結局、料理をするどころか食事自体しなかったという…

これでは、何のために食材やスキルを用意したのかわからんじゃないか。

ノンアクエリアでまったり薬草採取の予定が、いろいろ驚きの事態が発生したからなー…

一度寝て、頭の中すっきりさせたい。あとお腹すいた。


ああ、あと卵…卵かぁ………

ほんと、この子はどうすればいいんだろうね?抱っこしていれば孵化するの?世話をしろってことは、生まれるってことなんだろうけど…

いつ生まれるのか、何が生まれるのかもわからんから、餌や寝床の準備のしようもないんだよなぁ。

一応、肉も野菜も草もあるから大丈夫だとは思うが、はてさてどうなるやら…?




門に着く頃には既に日も登り、開門して門番が詰めていた。

早朝出勤大変だなぁ…などと思いながらも表には出さず、門番に挨拶をしつつ身分証を見せて通過する。


うん、特にこれといった会話もなくすんなり通れるのは、ストレスフリーで大変よろしい。

卵について、もっといろいろ聞かれるかと思ったが、意外にもそんなことはなかったのは嬉しい誤算だったな。

街中で卵を抱いて歩いているのも変だと思うので、フード付きのコートでも買おうかと思ったが、まだ早朝と言うこともあり住人の店が開いてないので、夕方買う事にして宿へと戻る。


「ただいま帰りました」


「おかえり、思ってたより早かったね」


「昨日、街を出ようとしたら門番さんにやたら心配されまして…朝には戻ると言ったら念押しされたので、遅くならないうちに戻ってきました」


「まぁ、カヅキのその見た目だと、夜に出歩かせるのは止めたくなるだろうさ。心配されたくなかったら、もっといっぱい食べて大きくなりな。そうすりゃ誰も外に出るのを止めたりしなくなるさ」


「これでも成人してるので、もう早々体形が変わったりしませんよ…」


などと話しながら厨房に行き、練習がてら手伝いをしながら昨夜何をしてきたのかを話すと


「なるほどねぇ…それでその卵をずっと抱いてるのかい?」


「まぁ、これも何かの縁ですし。とりあえず孵化するまで抱いてようかと…何が生まれるか興味もありますしね」


「そうかい、好きにするといいさ。生まれたらあたしにも見せとくれよ?」


「ええ、その時はもちろん」


そんな事を話してるうちに私の分の食事の準備も終わったようで、それを食べてから部屋に戻った。


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