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第30話:投げるな危険


それにしても、今の私はほんとにのんびりしてるなぁ…


森の内側まで入らなければアクティブモンスターにはほぼ出会わないとなっていたが、ほんとに動くものが見当たらない。

そこら辺にいるうさぎたちも、たまに移動したりはするが基本的に草を食んでいるため、ほとんど動かないので物音もしないという……


私の場合はゲームであってゲームじゃないので、フィールドBGMとかもないからほんとに静かである。耳に入るのは風に草が揺れる音かうさぎの動く音くらい。

それ以外だと自分の呼吸音くらいのものだろう。戯れにその呼吸音も意識して小さくしてみる。呼吸を細く、長く、静かにしていく。ゆっくりと目を閉じ視覚を閉ざす。


すると閉ざされた視覚の分、触覚と聴覚に集中できるようになり、それらの感覚がより鋭敏になっていく。それにより、それまで漠然と聞こえていた音が立体感を増していく。どこからか聞こえていた音が、前後左右どの方向からどの音が聞こえているのかがわかってくる。


緩やかな風が吹く。その風がどこから来てどの様に触れ、どの様に過ぎ去って行くのかがわかる。自分の周囲の状態が徐々に鮮明になっていく。視覚は閉ざされたままなのに、草が揺れているのがわかる。どの様に揺れているのかまで次第にわかってくる。そしてその範囲もまた徐々に広がっていってるのがわかる。


なんだこの感覚は?


肌がピリピリする。特に露出してる部分、顔や耳、後頭部の下部から首筋、そして手首から先。露出していない部分も僅かだがピリついている。

何かがおかしいと思いつつも、まだ先があることがわかる。それがどこまでいくのか知りたいと思ってしまう。より広く、より鮮明にと、ピリつきの大きい耳と首筋と手首から先に感覚を集中していく。

その感覚は耳を澄ますのとよく似ている。それまで漠然と聞こえていたものの中から、聞きたいことだけに意識を集中してよりはっきり聞こうとする状態に。


今までも、それこそこの世界に来た時から気配察知で周囲の生物を捉え、魔力察知で魔力を捉え、気配遮断と魔力遮断で自分を隠してきた。

そう”漠然”と。

意識を向けていない時はなんとなく、意識を向けている時は「あちらに何かいる」程度の漠然とした感覚で捉えていた。

それはきっとスキルによって与えられた”当たり前となった感覚”なのだろう。


この1か月でスキルの獲得に至る条件は凡そ掴めた。

私がこの世界に来てから、後天的に身に付けたスキルはほぼパッシブスキルだ。それは肉体的、感覚的なものばかりで、それぞれ体の動かし方やどの様に動かせばいいのかを当たり前になるまで繰り返して、体が完全に覚えるまでその身に沁み込ませることが条件だと思われる。


そしてスキルとは、その当たり前となった状態をスキルとして保存するのだろう。既に保存されてるから、それを維持するための修練をしなくてもその効果は常に発揮される。より修練を重ねることで、次の保存するに値する状態に達するとスキルレベルが上がり、その時点での当たり前に上書きされる、という感じではなかろうか?


元々自分自身で当たり前になるまで修練したものだが、一度スキルとして獲得すると、その状態を自分自身ではない、どこか別のところにバックアップされ、常にフィードバックを受けることによって劣化することなく維持出来るようになるのではないか?


使わない物は廃れる、それは当然のことだ。肉体も動かさなければ衰えるし、感覚も使わなければ鈍っていく。そして、一度そうなってしまったら元に戻すだけでも一苦労だ。しかしスキル化はそれを完全に防ぐ。だがそれは甘えではないのか?

ゲームとしてなら何も問題はない。ただの遊びなのだから。仕事や生活の合間にする息抜きだ、余計なことを考えずに甘やかされてもいいだろう。


だが、私にとってこの世界は、ゲームであると同時に現実でもある。

ただでさえ大量の耐性にアイテム、さらには称号まで与えられて甘やかされているのだ。この上さらに一度スキルとして獲得してしまえば、一切の努力なしで完全な現状維持、鍛えれば向上するが放置しても決して劣化しないというのは、さすがに甘えすぎだろう。


そんな状況が続けば、いつかだらけ始めるのは目に見えている。

何しろ、どんなにだらけきった生活を送っていたとしても、その気になれば今まで培った全ての技能を一切の劣化なしに完全に使いこなせるのだ。維持努力など無意味だと、だらけるダメ人間の出来上がりである。それはさすがに御免被る!


いくら自由気ままなのんびり生活を目指しているといっても、グータラなダメ人間になりたいなどとは思わないし、何よりつまらないし楽しくない。


確かに人間は楽をしたいと望む生き物だ。だがその楽の中には快楽も含まれる。

そして私にとっての快楽とは主に達成感なのだ。

能力の成長や技能の習得、レアアイテムの獲得に良品の生産など、知覚できる成果を実感することが何より楽しいし嬉しいのだ。

それこそ既に存在してる事は知っているが、未だに持っていないものを入手出来ればそりゃあ嬉しいだろう。ましてや未知のものを発見したり、あまつさえ入手出来るとなればその期待と興奮はどれほどだろうか?


そして今現在、この身体が感じているのは未知の感覚だ!

当然、これがどのようなものなのか非常に興味があるし、こういう機会を得られたことも嬉しい。

だが、露出している素肌をピリ付かせている謎の感覚も、そこを通して周辺情報を知覚できる能力も、あれだけ図書館の本を調べまわったのに、関係すると思われる記述を何一つ見た覚えがない。

それはつまり公的には存在しないとされているスキルの可能性があることになる。


だが初めて平原に出た素人が、獲得出来ないまでもその片鱗に触れているようなスキルを、戦闘系ギルドのマスターたちが誰も知らないというのは、まずありえないだろう。

ならば何故公開されてない?身体制御系のパッシブスキルだけでも、あれだけ細かくスキルとして設定されているのだ。こういった知覚能力の拡張ともいえる感覚が、スキルとして設定されていない方が不自然だろう。

しかし情報が秘匿されていることもまた事実。ではその理由は?わからない。


もしこれが大規模破壊を引き起こす危険な攻撃スキルであればまだわかる。

未熟な者が扱いきれない大きな力を手に入れて暴走しないように、その資格ありと認められる者以外に対して情報封鎖されることもあるだろう。


だがこれは周囲の状況を知るだけの気配察知にも似た感覚であり、何らかの被害を出せるようなものではない。もしこの感覚を危険視し情報封鎖するのであれば、下位互換と言えなくもない気配察知も同様に秘匿されるべきスキルとなるはず。

だが実際にはそうなっていない。何故?


この二つのスキルの扱いの違いは何?考えられるとすれば下位のスキルだけを公開し、それを習得させることで上位のスキルの存在に気付かせないようにした?

あるい【ガンッッッ!!!】



…………………

………



「ぐっ、うぅ………」


一体、何が……?後頭部に凄まじい痛みと衝撃が……


── コロコロ……コツン…… ── 


ん?なんだこれ?楕円形の石?これが当たったのか……?

よく生きてたなぁ……レベル1じゃなくても即死してそうな威力だった気がするけど。そもそもどこから飛んできた?当たった時のベクトルから考えると、後方斜め上方からなんだけど………

あれ?石に何か付いてるな。手紙?まさかの矢文ならぬ石文ってこと?

まぁ、とりあえず読んでみるか。



『余計な事は考えずに気ままに生きて下さいと言いましたよね?

なのにどうしてうだうだと考え事をしてるんですか。即刻やめるように!

それと無駄にくだらない陰謀論とか考える必要ありませんから。あなたのそれは単に感覚が鋭敏になっただけなので、気にしなくていいのです。

そうやって余計な事を考えるのは、一人きりで時間を持て余しているからです。なのでその子を送りました。その子の世話で忙しくなれば余計な事を考えてる暇もなくなるでしょうから。

その子は様々な因子を多数備えているので、通常の個体よりも進化先が非常に多くなっています。頑張って育てて下さいね。

それと!くれぐれも余計な事を考えない様に!陰謀論とかネガティブな思考もダメです。気楽に、気ままに、のんびりと!楽しむ事だけ考えて、苦労を抱え込まない事!

あまりにも改善されない場合、不安や苦労を解消するための人員を送り込みますから。いいですね!!』



ええぇ~……何これ、めっちゃダメ出しされてる……

しかも余計な事考えるなって4回も書かれてるし、おまけに人員送るとかさすがに干渉し過ぎじゃね?あと、こっちの思考読みすぎ。やめて?


それと、ぶつけたのは石じゃなくて卵だったのね。それも分岐多めの子。

でも私、テイムの類持ってないんだけど?あと孵化させるも方法しらないよ?これ大丈夫?


とはいえ、今までペットとか飼ったこともなかったから楽しみではある。はてさて一体どんな子が生まれてくるんだろうね?あんまりやんちゃな子だと困るから大人しい子が生まれて欲しいな。


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