第28話:南門
少し短めですが、ここで一区切りなので…
それはともかく、門である。
結局、南門までに露店はなし、プレイヤーは疎らという状態で、サービス終了間近な過疎ゲーかな?と疑問視しそうなほど人がいなかった。
まぁ、面倒なプレイヤーに絡まれるよりはずっとマシだけどね…
門の傍まで来ると、門番と思われる人が居るので一応挨拶しておく。
「こんばんは、お疲れ様です。渡来人のカヅキと申します。これを」
そう言ってギルドカードならぬ司書カードを見せる。
「あ、ああ…こんばんは。渡来人の方から挨拶をされたのは初めてで少し驚いてしまった。俺はアランだ、よろしく。ん?これは……司書見習い?え?」
アランと名乗った門番は、カードに記載された役職名を見て驚き、私とカードを交互に見比べる。
「えっと……渡来人なのに司書見習いになった、ということで合ってるか?」
「はい、それで合っています。尤も1か月前になってからずっと図書館に籠って居たので、門まで来たのは初めてなのですが」
「1か月前って、初めて渡来人が現れた頃だよな?あっ!もしかして、自分勝手な渡来人たちを退治するのに協力してくれた渡来人って……」
「え~っと……あまり目立つのは好きじゃないので、声を小さくしていただけますか?それと出来れば、そのことも内緒にして貰いたいのですが…」
まさか門番にまで知られているとは。
しかもこの様子だと情報提供者の概要が結構な人数に把握されてるのでは?
思い返すと口止めしてなかった気がする……スキル獲得の時はちゃんとしておいたのに、初っ端にやらかしてたのか……
「え?そうなのか?そりゃすまなかった。わかった、この事は誰にも言わないと約束しよう。えっと…カヅキだったか、カヅキは恩人みたいなものだからな。恩を仇で返すような真似はせん!」
だから声が大きいです…
最初は気を付けていたようだが、徐々に声が大きくなって来るのは職業病か?
「そうですか、それは助かります。ですがそれは、たまたま私が同郷の者が犯した愚行の尻拭いをする羽目になっただけで、誰かに感謝される謂れはありません」
そんな下種なマッチポンプなど願い下げである。
あれは単に、自分にとって不要な連中を追放するように働きかけただけなのだ。通報したのは受付嬢で、追放したのはGMと運営だ。私は自分の近くにあるゴミを、他人を誘導して勝手に掃除するように仕向けただけだというのに、それで感謝などされても心苦しいだけだ。勘弁してほしい。
「いや、それでも俺の知り合いが助けられたことには変わりない。だから何か困ったことがあればいつでも言ってくれ。出来る限りのことはするからな!」
ああ、ダメだ…。この人も人の話を聞かずに突っ走るタイプか。いや、人の話は聞くには聞くが、自分で一度決めたことを意地でも曲げようとしないって感じか?何と言うか…一度恩を受けたら一生忠義を尽くす、忠犬みたいなイメージが湧いたわ…
「そうですか……わかりました、ではその時はよろしくお願いします」
「ああ、任せてくれ。それはそうとカヅキは門の外に出るつもりだったのか?日が完全に沈むと門を閉じるから朝まで戻れなくなるぞ」
「まぁ、そうですね。いろいろと採取する必要がありますので」
「ふむ…わざわざ夜に行くってことは月光花や月下草が目当てか?」
「それも込みですね。図書館である程度分布も調べましたが、一度も外に出たことがありませんから、きちんと辿り着いて採取出来るか試してみるんですよ」
実際に自分で歩いてみないと、脳内地図が完成しないんだよね。
地図だけだと正確な距離もわかんないし、体感的な移動時間とかも計りたいし、薬草類の実際の分布と数の把握もしなくちゃいけないからね。
「初めてなのに一人でか?」
「これでも逃げ隠れには割と自身あるんですよ?」
「………朝には戻って来るんだよな?」
これはかなり心配されてますね。ノンアクエリアに行くだけなんだけどな。
門番なら知ってそうなもんだけど…もしかして森に入ると思われてるのかな?
「ええ、もちろんです。ちゃんと宿にも伝えてありますし、しばらくは夜に出歩く生活になります」
「ということは明日も夕方にここに来るのか?」
「予定ではそうなります。」
「そうか。あまり森の奥にはいくんじゃないぞ。決して無理はしないようにな」
ああ、やっぱりかー…でも森に行くのは相当後なので、その心配はまだしばらく取っておいてください。
「わかりました、いってきます」
そう言って私は初めてこの世界のフィールドに足を踏み入れた。
次回、初フィールドです。




