第27話:プレイヤー露店がない?
あの後、モームさんにこれからは夜間に採取する事を伝え、図書館でマイアさんにも夜間採取の件を伝え、雑貨屋のマールさんの所で採取や調薬関連の道具を纏めて購入し、スゥ婆さんの所で食材と調味料を(インベントリにまだ前回のが丸々残ってるけど)念のため買い足しておく。
それから夕方まで眠り料理修行をしてから持ち物を確認する。
「準備よし。それじゃいってきます」
「ああ、気を付けて行くんだよ。それと腹が減ったら、ちゃんと料理して食べること、いいね!」
「はい、わかりました」
モームさんに見送られ、宿を出て南門に向かう。
やはりそれなりに期間が経過したこともあり、一番弱い敵しか居ないノンアクエリア方面に向かう通りにいるプレイヤーは少ない。というか、予想を遥かに超えて誰も居ないという…
え?大丈夫?ちゃんとサービス続行してる?もしくはメンテ中だったりする?などと妙なことを考えてしまう程である。
まぁ、そうなるに足る理由があるにはあるのだが……
ゲーム内でほぼ1か月経過したとは言っても、リアルでは1週間である。
だが、このゲームの第1陣は週末の時点でもう既にほぼ全員がログインしており、大半がこの街を離れたようだ(何故かマイアさんがちょいちょい情報をくれる。GMコールの経過報告も兼ねてるのかな?)
実はレベル1でもお金さえ払えば馬車で森の西の町まで行けるらしく、パーティを組めるなら西の町の周辺でも大丈夫だと判明した途端に、大半のプレイヤーが一斉に馬車で移動を始めたために、こちらでも問題が起きていたようだ……
なんでこいつらは学ばないんだ?人に迷惑をかけてはいけませんって習わなかったのか?
そんな訳で、迷惑な連中はこの世界から出て行き、効率を求める連中はこの街を出て行った。
そのため始まりの街イチハからプレイヤーがごっそり減ったのである。
願わくば、西の町へと移動した連中が再びバカな真似をしませんように…
地球では第1陣の実に4割弱が既にアカウント停止となっており、しかも半数以上が永久凍結されているという有様だった。
運営としても、どれだけ警告しても多少は凍結案件もあると思っていたが、予想を遥かに超える人数に呆れつつも、対処に奔走する羽目に陥る。何しろたった1週間で立件すべき犯罪者が2千人以上も出たのだ。対象を捕縛する警察も判決を下す裁判所も大忙しである。
事態を重く見た運営は、本来1か月後に第2陣をログインさせる予定だったがこれを3か月後に延期、その間に今回起きた事件を動画付きで多数露出させると共に、更なる法整備をした上で警告と犯罪者となった者の情報開示を行う事となる。
また同時に善良プレイヤー達によるプレイ動画もいくつか作成・公開された。
戦闘や生産で一喜一憂する様や食事風景、草原や森の中を馬車で進むパーティの動画などは非常に魅力的で、第2陣・第3陣となる予定のプレイヤーと、中止になってしまった第4陣に応募していた者たちを興奮させた。
その一方で、その魅力的な世界へ行く事を延期させられた不満は、全て件のアカウント停止者たちに向けられた。第4陣への応募希望者も含めれば50万以上となった大群が、ヘイトを向けるべき標的を探しているのだ。
既に犯罪者となった凍結者たちはまだ開き直ることも出来たが、停止処分で済んだ者たちはそれどころではなかった。
何しろ自分が停止処分になったことが知られれば、周囲から犯罪者同様の扱いを受けるのがわかりきっている以上、決して知られる訳にはいかない。たった一人にでも知られれば、たちまち拡散されて身の破滅に至るのは間違いないのだ。
ただでさえ連日の報道で世間がこの話題に敏感になっている今、少しでもおかしな反応をすれば疑われかねないため、常に言動に細心の注意を払いながら、かつ挙動不審にならぬようにしなければならないという、針の筵すら生温いと言える状況に陥り精神をすり減らしていった。
たかがゲームと侮り、運営の告発云々もただのポーズと気にも留めなかった結果がこの惨状である。その惨状を停止処分が明けるまで嫌と言う程思い知らされた者たちは、その後2度とログインする事はなかった。
中にはバレてしまい職や学籍を失った者たちも当然居た。本人はもちろん、その周囲の者たちもたかがゲームと笑えなくなっていった。
また余談だが、数年後にはIFOを長期間楽しめる者は善良な努力家として優遇され、またIFOを避ける者は自己中心的な犯罪者予備軍として冷遇されるようになっていく。これは後にIFO効果と呼ばれ、受験や企業の面接等で重要視されることとなり、自己中心的な人物は次第に淘汰されて行くことになる。
普通こういったMMOだと、門の内側付近には露店をする商人プレイヤーがいるものだと思っていたが、露店自体が門の通りに存在しないのは予想外だった。
いくらバカ共が大量に居なくなったとはいえ、この街から開始したプレイヤーは2千人弱くらい居るはず…
なのに、開始1週間後で露店が全くないと言うのはおかしい気がする。まさか全てのプレイヤーが西の町へ行ったというわけでもあるまいし……
可能性があるとすれば、露店を開設するための条件が結構厳しく、未だにクリア出来ていないとかだが、ゲーム内で1か月も経つのに一人もその域に達する事が出来ないというのも変だろう。あるいは露店の開設可能な区画が決められている可能性の方が高いか……
一応、プレイヤー自体はここまでに見掛けたしね。(遠目にだけど)




