第22話:これはうさぎ、ですか?
「ただいま戻りました」
「おかえり。今日は早かったね」
「ええ、切りのいいところで引き上げて来ました」
あれ以上やると、中途半端なところでまた追い出される事になっただろうし…
「それじゃ今日は時間もあるし、皮剝きしてから肉を捌いて貰おうかね」
「わかりました。皮剝きが終わったら呼びますね」
さすがに昨日今日とこれだけ連続でやってると、手慣れて来て作業速度も上がってくる。さくさく進むし、自分の上達が目に見えてわかるため結構楽しいので、体感的には割とすぐに終わった感じだ。
「モームさん、皮剝き終わりました」
「あいよ。それじゃぁこれを捌いて貰おうかね!」
その声と共に目の前にドンッ!と置かれたのは、頭と皮と内臓のないおそらくうさぎであったであろう物。
「えっと……これは…うさぎ、ですか?」
「ああ、そうだよ。こういうのは見た事ないかい?」
「ええ、お店で売ってるお肉は、こういうのを解体した物だと言う事は知っていましたが、解体前の物を見たのは初めてですね」
むしろ見た事がある人がどれだけいると言うのか…
少なくともプレイヤーで見た事ある人は極少数だと思う。
「まぁ、そうだろうね。そういう顔をしてるからね。それじゃぁこれからこれを捌いていくから、ちゃんと見て覚えるんだよ。この後、実際に1羽捌いて貰うからね」
「わかりました」
そうして置き方からどの順番でどこから包丁を入れるのか、どうやって骨を外すのかなどを捌きながら教えて貰う。
一通り捌き終わると、解体で出た骨をまとめて捨てたり、台の上を綺麗にしたりした後で、遂に実習である。
さっき見た事を思い出しつつ、確認しながら少しずつ捌いていく。包丁の角度とか部位を取り外す際の力の掛け方とか、その都度注意されながらも何とか捌き終わる。
「ふむ。初めてにしちゃ上出来じゃないか。これなら回数さえこなせば結構上手く捌けるようになるだろうね。お疲れさん」
「予想よりずっと大変でした…」
「そりゃ、初めてならそんなもんさ。こいつを手早くきれいに捌けるようになれば、4つ足の獣なら大体捌けるようになるはずだから頑張りな」
「そうですか、それはありがたいですね。今日もありがとうございました」
「さ、手を洗って席に着いてな。夕飯持って行くから少し休んでるといいさ」
「わかりました、それでは」
そう言って手を洗ってから席に着き、夕飯を食べてから部屋に戻った。
大盛りだったのは言うまでもない。
さて、今日調べて来た情報を整理して行動予定を立てようか。
ただ書き出すよりもこっちの方が遥かに時間掛かりそうなんだよな…
何しろ判明したのはスキル名とその概要くらいで、獲得方法までわかったのは極一部だけだったからだ。つまり獲得方法は自分で推測するしかなく、どうにもならない物はそれこそ各ギルドに行って聞くしかない。
とは言え、聞きに行ったとしてもすんなり教えて貰えるとは思っていない。
何しろ自分達の飯のタネである。それを他のギルドメンバーが普通に使える様になってしまったら、ギルドの存続に関わりかねない。いくら初級の基礎スキルとは言っても、教えてくれる見込みはかなり低いのではなかろうか?
つまり場合によっては、それらを教えて欲しいと言うだけでも顰蹙を買う可能性があることを覚悟しないといけないため、余程の事がない限りこの案は封印である。
そうして暫く整理していたのだが、思ったよりも獲得出来そうなスキルが少ない。しかも図書館内でも鍛えられそうなものとなると更に減る。
忍び足、登攀、跳躍、体幹、姿勢制御、平衡感覚、足捌き、体捌き、舞踏、遠視、暗視辺りが一応屋内でも獲得出来なくもないと言ったところだろうが…、どれも図書館内では非常に不向きと言う事がリストアップして判明した。
舞踏と遠視以外なら、夜の森で縦横無尽に駆けずり回っているだけで獲得出来そうだけどね!
まぁ考えてみれば、夜の森とかでも平然と先手を取って無傷で蹂躙出来るくらいになれば、痛い思いをせずに済むだろうと思って選んだスキル群だしね。そりゃぁ獲得・修練するためには、そこに行かなきゃ出来ないよなぁ…
とは言え、この他にも有用なスキルはかなりピックアップ出来たし、やり方次第では10以上のスキルを一度に鍛えられる可能性が出てきたので、この思索も決して無駄ではなかったので良しとしよう、うん!
明日からは丁度良さそうな木材の上などに乗って、平衡感覚と姿勢制御を鍛えながら、周辺地理や植物と動物とその生態系について調べる事にしよう。
それが終わったら調薬や調合を調べて、その後に採取だな。
フィールドへ行ける様になるのは、まだ大分先になりそうだ…
「はぁ……もういいや、寝よ。おやすみなさい」
「おはようございます」
「おはよう。準備は出来てるよ。ああ、それと今日から暫くはうさぎの解体も追加だからね。何、一度手が覚えちまえばそうそう忘れないからね。それまで頑張りな」
「わかりました。でもそんなに早く手に癖付きますかね?」
「毎日1羽ずつだと時間掛かるだろうけど、まとめてやらせるから、その分覚えも早かろうさ」
「そう、ですか…頑張ります」
野菜の皮剝きをこなした後で待ち構えていたのは、10羽のうさぎだった。はい、全部解体してから大盛り朝食を食べましたとさ。
「あ、そうだ…モームさん、長さ1m・幅10cmくらいの丸い棒ってありますか?手摺に使う様な感じのやつです」
「うん?どうだろうね?あるとしたら倉庫だろうけど…ちょっと待ってな」
「はい、お手数をお掛けします」
ここで手に入れば、かなり手間が省けるんだけど…
「はいよ、これでいいかい?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。急にすみませんでした」
「いいよ、これくらいどうってことないさ。それじゃ、いっといで」
「いってきます」




