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第189話:街への帰還

予約ミスってました。

申し訳ありません・・・


ふたりの育成を兼ねた狩りと採取は相変わらずだが、特にまとまった数が欲しいと思えるものもなかったので、街までの最短距離を一直線に進んで行く。

日数こそ掛かるものの特に目立ったこともなく、森の終わりを示す光が見えてくる。こうして徐々に明るくなってくれるのは、目に負担を掛けずに慣れさせることができるので、とても助かると思う。


私は工房の中でしか目を開けてなかったので、その恩恵をほとんど感じないが、森の中でも目を開いている人であれば、真っ暗闇からいきなり光に満ちた場所に出た場合、しばらくは視界が効かなくなると思うので、とても目に優しい仕様になっていると感心する。出入りするものはいないけど……


『いやー、久々に日の光を浴びると気持ちいいですねー……』


『ピィピィ』


『グルゥゥ』


『そういう感想は、肉体を持っているが故のものなんでしょうね』


『やはり、生物と精霊では感覚も違うのでしょうか?』


『ええ。実体化すればある程度は感じられますが、する必要もありませんから』


『確かにそうですね。さて……もう少し進めば街に着きますが、ゆっくり進んで夜になるのを待ちたいと思います。理由は目立ちたくないからです』


『確かに、フィアはともかくヴェルはかなり目立つでしょうね……』


『街中の住人が見たら大騒ぎになりそうですし、その前に門番に入れてもらえない可能性がありますので、夜になってからヴェルを背負って、壁を越えて中に入ろうと考えています』


『夜の間はともかく、日が昇ったら結局人間に見つかるでしょう?何処かに誰も来ない隠れ家でも持っているのですか?』


『隠れ家ではありませんが、家人以外の人の目に触れることのない場所に行くので、問題ありません』


メリルさんの屋敷に入りさえすれば、住人もプレイヤーも近づくことはないからね。見られたくない時は、あそこにいるのが一番なんだよね。




というわけで、日が完全に沈んで夜も更けたので、行動開始といこう。


空間認識を使っているので、何処に人がいるのか、どっちを向いているのかもバッチリわかるので、警備の目を搔い潜って壁を乗り越えるくらい造作もない。我ながら、とんでもないことを簡単にできるようになってしまった……もう普通には戻れないってことを、久々に実感したわ……


そんな悲しい現実を直視しながらも、人目を避けてメリルさんの屋敷付近まで到着した。よし、付近には誰もいないし、今のうちに行くか。


『それじゃ、あの門番さんに話しかけて中に入れてもらいます。フィアもヴェルも威嚇とかしないであげてね』


『ピィィッ』


『グルゥゥッ』


『随分大きい家だけど、あの家が人目に付かない場所なのですか?』


『余人が侵入できない場所という意味で、余計な人目に晒されることがない場所なんです』


などと会話しながらも、門番に向かって歩いて行く。目の前で隠密を解くと驚いてしまうだろうから、少し離れたところで解除してからだけど。


「こんばんは、お久しぶりです。メリルさんにカヅキが帰ってきたと伝えていただけますか?」


「カヅキ様っ?!お久しぶりです。お戻りになられたのですね。ところで……こちらの鳥はフィア様だと思うのですが、頭の上に見えるのは一体……」


見慣れぬ存在に動揺しながらも、他の者に目配せをして中へ伝令に走らせているのはさすがである。


「旅先で新しく従魔になった子です。この子もフィア同様、賢くて大人しいので安心してください」


「そうでしたか。迎えの者がくるまで少々お待ちください」


「カヅキ様、お帰りなさいませ。ご主人様がお待ちになられております。ご案内致しますので、こちらへどうぞ」


うーん……お待ちくださいと言った直後に、まるで最初からそこに居たかのように話を繋げられると、門番さんの「お待ちください」がバカみたいに思えるので、やめてあげてください。門番さんも気が緩んでいたわけではないだろうし、このメイドさんがすごいのだろうか?


「…………迎えの者が来たようですので、自分は警備に戻ります。それでは」


「取り次ぎ、ありがとうございました。警備、お気をつけて」


そう言って、メイドさんの方へ歩き出すと、メイドさんも歩き出して案内してくれる。そういえば、前もこうやって案内されたなー。最初に案内された時は、まさかいきなり狙われた挙句、その後の活動を左右する大事件に発展するとは思ってもみなかった……


2回目は……ああ、そうだ。ルリとフェルシアさんが来たんだった。あの時の決断が今に響いてるんだよなー……今でもあの決断が間違いだったとは思わない。誰かを犠牲にすれば、きっとそれは忘れられない傷になったはずだから。だが、その傷の代わりとはいえ、エルフの姫を永続支配することになったのはきつすぎる。


形式的には彼女ひとりだけに見えるが、その肩には一族全ての命が乗っているのだ。なにしろ彼女が私の支配下から逃れた時点で、一族が皆殺しにされるのだから……それは彼女の死にも適応されている。つまり、死別することで私の支配下から逃れたとしても、一族は皆殺しにされてしまうため、彼女には死ぬ自由すらないのだ。


永遠に生き、永遠に私に支配され続ける以外に一族の者が生き延びる術がないという、文字通りの生き地獄である。そんな生き地獄を強いられながらも、彼女たちは私に対して誰一人殺さなかったことに感謝した。私からすれば、感謝どころか恨みや憎しみを向けられてもおかしくはないと思うのだが……


そんなわけで、間違ってはいないが悔やんでもいる決断のせいで、切り離せなくなったエルフの姫をなんとかしようと奔走してるのが現状である。

誰も来ない森の奥に自分だけの直轄地を作り、そこの管理者として縛り付けることで、支配したまま切り離すのだ。自分以外の一族がフェルシアさんしかいないが、もう一つのエルフの郷だと思って、あそこで永遠に暮らしていればいい。


温泉自体は私が寛ぐためでもあるが、彼女たちにも開放するので、好きに暮らして居ればいい。仕えるつもりなんてなかった主など居ない方がいいだろう。主のいない直轄地を守りながら、死なない程度に自由に生きればいいと思う。


どうせ私は、温泉に浸かりたくなった時しか行かないだろうし……


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