第188話:不具合
その後、2日ほど経過してから運営からメールが届いた。
どんな内容かというと……
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Extra player カヅキ様へ
この度、カヅキ様より提案された”従魔のステータス表示に関する調査要望”ですが、こちらで状況を精査した結果、システム上の不具合であることが判明致しました。
原因と致しましては、カヅキ様の従魔が2体とも眷属になっていることに由来する不具合となります。
現段階の”Infinity Frontier Online”では、従魔システム自体はサービス開始時より既に実装済みではあるのですが、眷属システムについては未実装となっております。
眷属システムが未実装であるにも関わらず、プレイヤーであるカヅキ様の従魔が眷属となっていたために、システム側では従魔であって従魔ではないという矛盾を抱える存在になっていたようです。
そのため、従魔として登録した時点での初期値は表示されるものの、従魔ではないと判断されていたようです。この判断により、どれだけ戦闘したとしてもデータ上では従魔として経験を積んだことになっておらず、そのため実際には経験値を貯めてレベルアップしているにも関わらず、データ上では経験値自体が獲得されていないことにされていたために起きた不具合と判明致しました。
現在、予定を前倒しして眷属システムを実装するように動き出しているため、カヅキ様には大変申し訳ありませんが、今しばらくお待ちくださいますようお願い申し上げます。
また、この度の不具合により、長らくご不便をお掛けしたこと誠に申し訳ございません。
この件に関しましては、こちらのチェック不足であり、また指摘されるまで気付けなかった点も不備であると捉え、今後このようなことが起こらぬよう細心の注意をもって運営致します。
今回、ご迷惑を掛けたことに対するお詫びに関しましては、後日メールさせていただきます。
この度は、誠に申し訳ございませんでした。
Infinity Frontier Online 運営統括責任者
葛葉慎一郎
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という回答文というよりも、謝罪文が送られてきてびっくりした。
前にも思ったけど、企業のトップが畏まりすぎではなかろうか?まぁ多分だけど、”上の方”から何か言い含められているんだと思うが、それにしても大げさである。一体どれだけプレッシャー掛けられているというのか……
もしかして、私からのクレームや不具合報告とかが行くと、何らかのペナルティでもあるのだろうか?だとしたら、少し悪いことしたなぁ……
とはいえ、こちらもあのままだと何かと困るし、直るなら直してもらいたいしね。
それにしても……まさかとは思ったが、ほんとにシステム上の不具合だったとは……思い切ってメールを送った甲斐があったというものだ。送ってなかったら、ずっとレベル1表示のままになってるところだった……
眷属システムが実装されたら、その時点でこの問題は解消されたのかもしれないけど、予定ではかなり先になっていたような気がするので、私の場合、年単位で修正されないところだったわ……
まぁいいや、これでステータス表示の問題は近いうちに解決するだろう。
いやー、表示している内容が初期値で止まっているだけでよかったー……修正できない致命的な不具合とかじゃなくて、本当によかった……
ああ、そうだ。一応このことはウルにも伝えておこう。
『ウル。どうやら私の予想が当たったようです。ふたりのステータス表示がおかしいのは、やはり渡来人故のものだったようです』
『そうですか。それで、正常に見られるようにはなるのですか?』
『少し時間は掛かるようですが、きちんと直してくれるそうです』
『それは何より。これでフィアとヴェルの状態を、正しく把握することができるようになりますね』
『そうですね。まさか、レベルアップに必要な経験が足りないのではなく、ただ単に表示内容が初期状態のままだったなんて、思いもしませんでした……』
『それは気付けという方が、無理があるでしょう……』
『なにはともあれ、そのうちに直るらしいので、そちらの方は放っておいていいでしょう。あとは、ふたりをどれくらいまで鍛えるかですが……温泉周辺を単独で動き回っても心配しないでいいくらいだと、まだまだ先の話でしょうか?』
『今のフィアとヴェルでは無理ですね。この森を抜けることもできないでしょう。あの家周辺ともなれば、まだまだかなりの時間が掛かりますね』
『そうですか……では、先にエルフの従者を迎えに行って来てから、4人まとめて育成しながら温泉に向かう方がいいでしょうか?』
『ふむ……確かにその方がいいかもしれませんね。エルフがこの森でどれだけ戦えるかわかりませんが、今後のことを考えると、一緒に訓練させた方がいいでしょう』
『ということは、今後は真っ直ぐ南下することにして、街から北上する時にゆっくり進むことにしますね』
『ええ、それでいいと思いますよ』
『わかりました。では行きましょう』
今後の行動方針も決まったことだし、少しペースを上げますかねー。